日本語版サンフォード感染症治療ガイド-アップデート版

肺炎-小児,年齢>3カ月  (2023/12/12 更新)
年齢>3カ月の乳児,小児における肺炎,市中肺炎


臨床状況

  • 年齢>3カ月の乳児,小児における肺炎
  • 細菌性肺炎を想定した経験的治療.原因微生物は多様であり,ウイルス性の場合も多いが大半は細菌性.
  • 入院の場合は血液培養を行うこと:外来で検出されることは非常に少ない.
  • 軽度から中等度であることが多い.
  • 同時にインフルエンザウイルス,RSV,ヒトメタニューモウイルス,パラインフルエンザウイルス,アデノウイルス,SARS-CoV-2を考慮に入れること.
  • 冬期の小児入院患者では全員にインフルエンザ検査が推奨される.
  • 感染症コントロールや治療が変更になった場合には,Multiplexウイルス検査が有用なこともある.

病原体

第一選択

外来患者:
  • 就学前の小児の市中肺炎(CAP)では,多くの臨床症状はウイルスによるため,ルーチンの抗菌薬治療は必要でない.
  • 細菌感染が疑われる場合:
  • AZM 10mg/kg経口1回(最高500mg),その後5mg/kg(最高250mg)経口・4日
入院患者
  • 予防接種を完全に受けていて細菌感染が疑われる場合:AMPC 150~200mg/kg/日静注6時間ごとに分割
  • 予防接種が完全でなく,細菌感染が疑われる,あるいは生命に危険のある状態:CTX 150mg/kg/日静注8時間ごとに分割,またはCTRX 75~100mg/kg/日静注1日1回
  • 非定型菌の感染が疑われるなら,AZM 初日10mg/kg(最高500mg/日)静注・1日,その後5mg/kg(最高250mg/日)を追加
  • 市中感染MRSAの懸念があれば,VCM 60~80mg/kg静注1日3~4回に分割(目標AUC24 400~600μg・h/mL達成が望ましいが[AUC-用量設定の原理と計算を参照],そうでなければトラフ値10~15μg/mLをめざす,ただしAUCの方が目標としては望ましい),またはCLDM 40mg/kg/日6~8時間ごとに分割を追加
  • MRSAに対する鼻腔PCR検査が陰性であれば,MRSA肺炎の可能性はきわめて低い.
  • 中等度~重症CAPでインフルエンザウイルス感染の疑いがある場合:

第二選択

外来患者
  • AMPC/CVA 90mg/kg/日(AMPC成分として)
  • CAM 15mg/kg/日を2回に分割・7~14日
入院患者で予防接種が完全な場合
  • CTX 150mg/kg/日静注8時間ごとに分割
  • CTRX 75~100mg/kg/日静注1日1回

抗微生物薬適正使用

  • 治療期間:10~14日.臨床反応によって2~3日で経口治療に移行できることもある.
  • より短期の治療(5~7日)は,成人では同様に有効なことが示された.短期治療の小児でのデータはない.
  • 5歳未満の小児ではウイルスが原因であることが多く,特にウイルスが検出された場合は抗菌薬は不要.
  • MRSAの場合はより長期の治療が必要となることがある.
  • 適切に排膿された膿胸では,解熱後7~10日,あるいは4~6週治療.

コメント

  • VCM:従来の用量40~60mg/kg/日は,満期産児および腎機能正常な年長の小児では目標AUCに到達しないことが多い.AUC24を用いて400μg/mL近くであれば,中枢神経系以外のほとんどの感染症には十分である(Clin Infect Dis 2020年9月12日).
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2023/12/11