日本語版サンフォード感染症治療ガイド-アップデート版

肺炎-小児,年齢>3カ月  (2025/01/21 更新)
臨床状況,第一選択,抗微生物薬適正使用に追加


臨床状況

  • 年齢>3カ月の乳児,小児における肺炎
  • 細菌性肺炎を想定した経験的治療.入院患者でも全体として細菌性よりウイルス性の方が多い:N Engl J Med 372: 835, 2015
  • 入院の場合は血液培養を行うこと:外来小児患者の血液培養で検出されることは非常に少ない.
  • 軽度から中等度であることが多い.
  • インフルエンザウイルス,RSV,ヒトメタニューモウイルス,パラインフルエンザウイルス,アデノウイルス,SARS-CoV-2を考慮に入れること.
  • 冬期の小児入院患者では全員にインフルエンザ検査が推奨される.
  • 感染症コントロールや治療が変更(抗菌薬不使用を含む)になった場合には,Multiplexウイルス検査が有用なこともある.

病原体

第一選択

外来患者:
  • 就学前の小児の市中肺炎(CAP)では,多くの臨床症状はウイルスによるため,ルーチンの抗菌薬治療は必要でない.
  • インフルエンザと診断された場合,オセルタミビルまたはバロキサビルがすべての年齢<5歳の小児およびリスクの高い状態の小児に推奨される.
入院患者
  • 非定型菌の感染が疑われるなら,AZM 10mg/kg(最高500mg/日)静注・1日,その後5mg/kg(最高250mg/日)を追加
  • 市中感染MRSAの懸念があれば,VCM 60~80mg/kg静注1日3~4回に分割(目標AUC24 400~600μg・h/mL達成が望ましいが[AUC-用量設定の原理と計算を参照],そうでなければトラフ値10~15μg/mLをめざす,ただしAUCの方が目標としては望ましい),またはCLDM 40mg/kg/日6~8時間ごとに分割を追加
  • MRSAに対する鼻腔PCR検査が陰性であれば,MRSA肺炎の可能性はきわめて低い.
  • 体重<15kg:30mgを2回に分割して5日
  • 15kg<体重≦23kg:45mgを2回に分割して5日
  • 23kg<体重≦40kg:60mgを2回に分割して5日
  • 体重>40kg:75mgを2回に分割して5日
  • 予防接種を完全に受けていて細菌感染が疑われる場合:ABPC 150~200mg/kg/日静注6時間ごとに分割
  • 予防接種が完全でなく,細菌感染が疑われる,あるいは生命に危険のある状態:CTX 150mg/kg/日静注8時間ごとに分割,またはCTRX 75~100mg/kg/日静注1日1回

第二選択

外来患者
  • AZM 10mg/kg経口1回(最大500mg),その後5mg/kg(最大250mg)経口・4日(実際のAMPCアレルギーあるいは非定型菌が疑われるまたは証明された場合)
  • AMPC/CVA 90mg/kg/日(AMPC成分として)
  • CAM 15mg/kg/日を2回に分割・7~14日
入院患者で予防接種が完全な場合
  • CTX 150mg/kg/日静注8時間ごとに分割
  • CTRX 75~100mg/kg/日静注1日1回

抗微生物薬適正使用

  • 治療期間:10~14日.臨床反応によって2~3日で経口治療に移行できることもある.
  • より短期の治療(5~7日)は,成人および小児外来患者では同様に有効なことが示された.(JAMA Pediatr 176: 253, 2022).
  • 入院小児患者におけるより短期の治療のデータは限られている.2011年ガイドラインはいまだに10~14日治療を推奨しているが,合併症のない肺炎であれば5~7日治療で十分である可能性がある.
  • MRSAに対する鼻腔PCRが陰性ならMRSA治療は中止してよい.
  • 5歳未満の小児ではウイルスが原因であることが多く,特にウイルスが検出された場合は抗菌薬は不要.
  • MRSAの場合はより長期の治療が必要となることがある.
  • 適切に排膿された膿胸では,解熱後7~10日,あるいは4~6週治療.

コメント

  • VCM:従来の用量45~60mg/kg/日は,満期産児および腎機能正常な年長の小児では目標AUCに到達しないことが多い.AUC24を用いて400μg/mL近くであれば,中枢神経系以外のほとんどの感染症には十分である(Clin Infect Dis 71: 1361, 2020).
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2025/01/20