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日本語版サンフォード感染症治療ガイド-アップデート版
アデノウイルス
(
2024/11/26 更新
)
臨床状況
幹細胞移植患者および固形臓器移植患者での病原菌としてもっとも多い
肺臓炎,腸炎,出血性膀胱炎,播種性病変など広い範囲の臨床症状を呈する
臨床症状としては,発熱,肝酵素の上昇,白血球減少,血小板減少,下痢,肺炎,出血性膀胱炎などがあり,まれには髄膜脳炎もみられる.
HLA半合致ドナーからの同種造血幹細胞移植や非血縁者からの臍帯血移植,重度の移植片対宿主病(GVHD),重度のリンパ球減少,および/またはアレムツズマブ治療では,ウイルス血症をモニターする(週1~2回).免疫再構築までモニターを継続する.リスク因子が1つでもある患者でウイルス血症が認められた場合には,Cidofovirでの治療を行う.
施設内での流行の報告がある.CDC/HICPACガイドラインは,院内感染予防のために,入院中・罹病期間中の接触および飛沫予防を推奨している.免疫不全患者ではウイルス排出が長期化するため,予防期間も延長する必要がある.
病原体
アデノウイルス
第一選択
肺炎の重症例や造血幹細胞移植後:
Cidofovir
静注5mg/kg週1回・2週,その後2週間に1回+プロベネシド1.25g/m
2
をCidofovir静注の各3時間前,3時間後,9時間後に投与,または
Cidofovir
1mg/kg静注週3回
第二選択
選択肢は少ない,コメントを参照.
予防
ワクチンの適応,使用可能な製剤,用量,曝露前予防に関するワクチンの特徴については,
アデノウイルス,ワクチン
を参照.
アデノウイルス4型,7型だけに予防効果があり,移植患者および免疫不全患者でみられる株には予防効果はない.
コメント
治療の最初の最も重要な構成要素は免疫抑制を抑えること(可能ならば)および支持治療である
Brincidofovir(CMX001 Chimerix)は,アデノウイルス血症を伴う造血幹細胞移植患者を対象とした第II相試験において,ウイルス学的活性と安全性が示された(
Blood 129: 2033, 2017
).
しかし,臨床試験は2019年5月に中止となった.
一部の患者に対しては拡大アクセスがまだ利用可能:compassionateuserquest@chimerix.com.
リバビリン
の活性については有効と無効とが報告されており,推奨されない
ビダラビンと
ガンシクロビル
はin vitroではアデノウイルスに活性を示すが,臨床データはほとんどない.
アデノウイルス特異的T細胞(Cytovir)注入治療が開発中だが,まだ臨床試験の一部として研究施設での使用に限るべきである(
Cytotherapy 18: 1209, 2016;Cytotherapy 20: 830, 2018
).
アデノウイルスによる出血性膀胱炎:
Cidofovir膀胱内投与(5mg/kgを生食100mLに溶解し膀胱へ注入).
ガイドライン閲覧可能(
Clin Transplant 33: e13527, 2019
;
Curr Res Transl Med 72: 103461, 2024
)
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2024/11/25