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日本語版サンフォード感染症治療ガイド-アップデート版
アデノウイルス
(
2023/2/7 更新
)
臨床状況
呼吸器感染症の原因ウイルスであり,小児および若年成人で致命的な肺炎を引き起こすこともある.
アデノウイルス14型は,他の点では健康な若年成人における重症肺炎と関連(
MMWR Morb Mortal Wkly Rep 56: 1181, 2007
).
移植患者での死亡率が高い(60%)(
Clin Infect Dis 43: 331, 2006
).
出血性膀胱炎の原因となることが多い.
臨床症状としては,発熱,肝酵素の上昇,白血球減少,血小板減少,下痢,肺炎,出血性膀胱炎などがあり,まれには髄膜脳炎もみられる.
HLA半合致ドナーからの同種造血幹細胞移植や非血縁者からの臍帯血移植,重度の移植片対宿主病(GVHD),重度のリンパ球減少,および/またはアレムツズマブ治療では,ウイルス血症をモニターする(週1~2回).免疫再構築までモニターを継続する.リスク因子が1つでもある患者でウイルス血症が認められた場合には,Cidofovirでの治療を行う.
施設内での流行の報告がある(
Am J Infect Control 35: S65, 2007
).CDC/HICPACガイドラインは,院内感染予防のために,入院中・罹病期間中の接触および飛沫予防を推奨している.免疫不全患者ではウイルス排出が長期化するため,予防期間も延長する必要がある.
病原体
アデノウイルス
第一選択
肺炎の重症例や造血幹細胞移植後:
Cidofovir
静注5mg/kg週1回・2週,その後2週間に1回+プロベネシド1.25g/m
2
をCidofovir静注の各3時間前,3時間後,9時間後に投与,または
Cidofovir
1mg/kg静注週3回
第二選択
選択肢は少ない,コメントを参照.
予防
ワクチンの適応,使用可能な製剤,用量,曝露前予防に関するワクチンの特徴については,
アデノウイルス,ワクチン
を参照.
アデノウイルス4型,7型だけに予防効果があり,移植患者および免疫不全患者でみられる株には予防効果はない.
コメント
Brincidofovir(CMX001 Chimerix)は,アデノウイルス血症を伴う造血幹細胞移植患者を対象とした第II相試験において,ウイルス学的活性と安全性が示された(
Blood 129: 2033, 2017
).
しかし,臨床試験は2019年5月に中止となった.
一部の患者に対しては拡大アクセスがまだ利用可能:compassionateuserquest@chimerix.com.
リバビリン
の活性については有効と無効とが報告されており,推奨されない
ビダラビンと
ガンシクロビル
はin vitroではアデノウイルスに活性を示すが,臨床データはほとんどない.
アデノウイルス特異的T細胞(Cytovir)注入治療が開発中だが,まだ臨床試験の一部として研究施設での使用に限るべきである(
Cytotherapy 18: 1209, 2016;Cytotherapy 20: 830, 2018
).
アデノウイルスによる出血性膀胱炎については,
Clin Infect Dis 40: 199, 2005
;
Transplantation 81: 1398, 2006
を参照.
Cidofovir膀胱内投与(5mg/kgを生食100mLに溶解し膀胱へ注入).
Cidofovir治療は,免疫抑制の小児8例中3例(
Clin Infect Dis 38: 45, 2004
),造血幹細胞移植を受けた小児10例中8例(
Clin Infect Dis 41: 1812, 2005
)で成功であった.ウイルス量の減少からCidofovirへの反応が予測される.
新しいアデノウイルス「titi monkey adenovirus(TMAdV)」がサルから研究者さらにその家族へと感染した.
PLoS Pathog 7: e1002155, 2011
.
ガイドライン閲覧可能(
Clin Transplant 33: e13527, 2019
)
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2023/02/02