日本語版サンフォード感染症治療ガイド-アップデート版

アデノウイルス  (2023/2/7 更新)


臨床状況

  • 呼吸器感染症の原因ウイルスであり,小児および若年成人で致命的な肺炎を引き起こすこともある.
  • 出血性膀胱炎の原因となることが多い.
  • 臨床症状としては,発熱,肝酵素の上昇,白血球減少,血小板減少,下痢,肺炎,出血性膀胱炎などがあり,まれには髄膜脳炎もみられる.
  • HLA半合致ドナーからの同種造血幹細胞移植や非血縁者からの臍帯血移植,重度の移植片対宿主病(GVHD),重度のリンパ球減少,および/またはアレムツズマブ治療では,ウイルス血症をモニターする(週1~2回).免疫再構築までモニターを継続する.リスク因子が1つでもある患者でウイルス血症が認められた場合には,Cidofovirでの治療を行う.
  • 施設内での流行の報告がある(Am J Infect Control 35: S65, 2007).CDC/HICPACガイドラインは,院内感染予防のために,入院中・罹病期間中の接触および飛沫予防を推奨している.免疫不全患者ではウイルス排出が長期化するため,予防期間も延長する必要がある.

病原体

  • アデノウイルス

第一選択

  • 肺炎の重症例や造血幹細胞移植後:
  • Cidofovir 静注5mg/kg週1回・2週,その後2週間に1回+プロベネシド1.25g/m2をCidofovir静注の各3時間前,3時間後,9時間後に投与,または

第二選択

  • 選択肢は少ない,コメントを参照.

予防

  • アデノウイルス4型,7型だけに予防効果があり,移植患者および免疫不全患者でみられる株には予防効果はない.

コメント

  • Brincidofovir(CMX001 Chimerix)は,アデノウイルス血症を伴う造血幹細胞移植患者を対象とした第II相試験において,ウイルス学的活性と安全性が示された(Blood 129: 2033, 2017).
  • しかし,臨床試験は2019年5月に中止となった.
  • 一部の患者に対しては拡大アクセスがまだ利用可能:compassionateuserquest@chimerix.com.
  • リバビリンの活性については有効と無効とが報告されており,推奨されない
  • ビダラビンとガンシクロビルはin vitroではアデノウイルスに活性を示すが,臨床データはほとんどない.
  • Cidofovir膀胱内投与(5mg/kgを生食100mLに溶解し膀胱へ注入).
  • 新しいアデノウイルス「titi monkey adenovirus(TMAdV)」がサルから研究者さらにその家族へと感染した.PLoS Pathog 7: e1002155, 2011
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2023/02/02