Cidofovir (2024/10/01 更新)
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Contents
1. 用法および用量
1. 使用
2. 成人用量
3. 小児用量
4. 腎障害時の用量調整
5. 肝障害時の用量調整
2. 副作用/妊娠時のリスク
3. 抗微生物スペクトラム
4. 薬理学
5. 酵素・トランスポーター媒介相互作用
6. 主要な薬物相互作用
7. コメント
1. 用法および用量
1. 使用
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Cidofovirはサイトメガロウイルス(CMV)の治療に使用される.FDAの適応はHIV患者のCMV網膜炎のみ.しかし,JCウイルスによる疾患(進行性多巣性白質脳症:PML)や,他のヘルペスウイルス感染(アシクロビル耐性単純ヘルペス感染症,難治性の水痘・帯状疱疹ウイルス感染症)の治療でも有効な結果が得られている.天然痘治療の選択薬でもある(ただしこの適応については臨床的データはない).
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Cidofovir静注に際しては,毎回投与前の適切な時間に生理食塩水の静注補液とプロベネシド経口を行わなければならない:Cidofovir投与3時間前に2g経口,さらに投与終了後2時間と8時間に1g.プロベネシド(強力なOAT阻害薬)は近位尿細管細胞によるCidofovir取り込みを抑制し,腎毒性を軽減する.
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毎回投与前に腎機能(血清クレアチニン値と尿タンパク)を評価すること(詳細については添付文書参照).
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クレアチニン>1.5 mg/dL,CrCl≦55 mL/分または尿タンパク≧100 mg/dLなら禁忌.
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警告(Black Box warnings):2回未満投与後でも腎障害が起こる可能性がある.
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Cidofovir局所製剤の適応外使用についてはコメント参照.
2. 成人用量
通常用量
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5mg/kg静注週1回・2週,その後隔週
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3. 小児用量
用量(生後>28日)
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導入期 5mg/kg静注週1回 抑制治療 3mg/kg静注週1回 (どちらも補液+プロベネシドを併用)
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最大/日
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4. 腎障害時の用量調整
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導入期
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維持期
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半減期(時間)(腎機能正常)
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2.6
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2.6
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半減期(時間)(ESRD)
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データなし
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データなし
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用量(腎機能正常)
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5mg/kg静注週1回・2週
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5mg/kg静注週1回・2週
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CrClまたはeGFR
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CrCl>55:5mg/kg静注週1回・2週 CrCl<55:禁忌
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CrCl>55:5mg/kg静注週1回・2週 CrCl<55:禁忌
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血液透析
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禁忌
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禁忌
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CAPD
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禁忌
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禁忌
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CRRT
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禁忌
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禁忌
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SLED
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データなし
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データなし
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5. 肝障害時の用量調整
2. 副作用/妊娠時のリスク
副作用
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腎毒性.用量依存性に近位尿細管傷害(Fanconi様症候群):タンパク尿,尿糖,重炭酸尿,リン酸塩尿,多尿(腎性尿崩症の報告Lancet 350: 413, 1997),アシドーシス,クレアチニン上昇.
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対処法は,生理食塩水の前投与,プロベネシド,治療間隔の延長であるが,腎毒性は高いままである.
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他の毒性:悪心69%,発熱58%,脱毛27%,筋肉痛16%,プロベネシド過敏症16%,好中球減少症29%.虹彩炎,ブドウ膜炎の報告あり.眼圧低下も報告されている.
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警告(Black Box warnings):2回未満の投与後でも腎障害が起こる可能性がある.腎毒性のある薬剤を服用している患者では禁忌.白血球減少をモニターすること.
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動物実験では発がん性,催奇形性あり.精子数減少,妊娠率低下を引き起こす.
妊娠時のリスク
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FDAリスク区分(旧):C
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授乳中の使用:使用を避ける
3. 抗微生物スペクトラム
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サイトメガロウイルス(CMV)
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ヘルペスウイルス(HSV,VZV)
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天然痘ウイルス(臨床データなし)
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JCウイルス(データは少ない)
4. 薬理学
PK/PD指標
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データなし
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剤形
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注射剤
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食事に関する推奨(経口薬)1
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食事に関わらずプロベネシドを服用
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経口吸収率(%)
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Tmax(時間)
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1.1
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最高血清濃度2(μg/mL)
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19.6 (5mg/kg静注 SD)
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最高尿中濃度(μg/mL)
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データなし
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蛋白結合(%)
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<6
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分布容積7(Vd)
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0.41 L/kg (Vss)
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平均血清半減期4(T1/2, 時間)
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2.6
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排泄
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腎
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胆汁移行性5(%)
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データなし
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脳脊髄液/血液6(%)
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検出不能
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治療が可能になるだけの脳脊髄移行性7
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なし
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AUC8(μg・時間/mL)
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40.8(5mg/kg静注,0~inf)
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注記のない場合は成人用経口製剤
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SD:単回投与後,SS:複数回投与後の定常状態
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V/F:(Vd)÷(経口生物学的利用能),Vss:定常状態におけるVd,Vss/F:(定常状態におけるVd)÷(経口生物学的利用能)
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CrCl>80 mL/分と想定
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(胆汁中の最高濃度)÷(血清中の最高濃度)×100
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炎症時における脳脊髄液濃度
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薬剤投与量と微生物の感受性に基づく判定.脳脊髄液濃度は理想ではMICの10倍以上必要
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AUC:血漿中濃度-時間曲線下面積 area under the drug concentration-time curve.0~inf=AUC0-inf,0~x時間=AUC0-x
5. 酵素・トランスポーター媒介相互作用
CY450の基質
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トランスポーターの基質
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OAT1,OAT3
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CYP450の阻害
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トランスポーターの阻害
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CYP450誘導
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トランスポーターの誘導
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血清中薬物濃度への影響
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血清中薬物濃度への影響は,当該抗微生物薬により影響を受ける併用薬の血清中濃度である.↑:上昇,↓:低下
6. 主要な薬物相互作用
7. コメント
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推奨投与量,頻度,投与速度を超えてはならない.
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治療中に腎機能の変化があった場合は減量または中止.血清クレアチニン0.3~0.4mg/dL上昇時は,Cidofovirを5mg/kgから3mg/kgに減量.血清クレアチニンが投与前より0.5mg/dL以上上昇した場合やタンパク尿3+に悪化した場合は,Cidofovirを中止(タンパク尿2+では注意深く観察し,中止を考慮する).
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Cidofovir局所製剤(Int J Pharm Compd 10: 324, 2006).
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単純ヘルペスウイルス,伝染性軟属腫,ヒトパピローマウイルス(HPV)によるさまざまなウイルス性皮膚感染症治療に有効との多くの症例報告がある.
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重度の足底いぼについては,N Engl J Med 377: 267, 2017参照.
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FDA未承認.製薬会社に製剤を依頼する必要がある
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