日本語版サンフォード感染症治療ガイド-アップデート版 |
COVID-19, 入院患者治療 (2024/07/23 更新) |
COVID-19の管理
重症度 |
指標 |
無症候性 |
症状なし |
軽症 |
発熱,咳,喉の痛み,悪心/嘔吐,下痢,味覚または嗅覚喪失があるが呼吸困難はない.酸素飽和度正常で胸部X線上も正常 |
中等症 |
軽症症状+下気道感染の所見(検査および/または画像),室温での酸素飽和度≧94% |
重症 |
中等症症状だが酸素飽和度<94%,PaO2/FiO2<300mmHg,呼吸数>30/分,肺浸潤>50% |
重篤 |
重症症状だが挿管されていて呼吸不全,敗血症性ショック,および/または多臓器不全 |
治療
状況, 重症度, 重症化リスク |
治療 |
コメント |
入院, 軽症 (下気道疾患なし), 重症化高リスク |
レムデシビル(用量は下記参照),または 予防的抗凝固療法(下記参照) |
デキサメタゾンは推奨されない |
入院, 中等症 (下気道疾患の所見あり)だが酸素吸入の必要なし. 重症化高リスク |
レムデシビル 予防的抗凝固療法(下記参照) |
デキサメタゾンは推奨されない |
入院, 重症 (酸素飽和度<94%, および/またはPaO2/FiO2<300)で酸素吸入が必要 |
レムデシビル+デキサメタゾン±トシリズマブ バリシチニブ:入院患者で,人工呼吸器やECMO未使用で,重症・重篤な場合;入院後72時間以内に投与するのが理想的. 治療的抗凝固療法:妊娠していない患者でDダイマー>ULN,出血リスクが高くなく,高流量酸素吸入やICUレベルの治療を必要としない場合(詳細は下記抗凝固療法参照). 全員に:予防的抗凝固療法(詳細は下記抗凝固療法参照). |
デキサメタゾン投与が受けられない患者では,第二選択としてバリシチニブ(+レムデシビル)を用いる.トシリズマブの使用については推奨処方の注を参照. |
入院, 重篤- 機械的人工呼吸 またはECMOが必要 |
デキサメタゾン±レムデシビル±トシリズマブ 人工呼吸またはECMO使用開始後2日以内の患者では,標準的処方にVilobelimabを追加できる 予防的抗凝固療法(下記参照) |
レムデシビルの有用性は証明されていないが,一部の専門家は推奨している ICU入室の最初の24時間ではIL-6受容体阻害薬を考慮(レムデシビルおよびデキサメタゾンとは併用可能だが,バリシチニブとの併用は推奨されない) デキサメタゾンを投与できない患者では,バリシチニブを考慮する.トシリズマブの使用については,下記「推奨される処方,用量」を参照. |
種類 |
薬剤 |
用量/期間 |
適応 |
コメント |
抗ウイルス |
レムデシビル |
成人(体重>40kg):初回200mg静注・1日目,その後維持用量100mg静注1日1回,各回30~120分かけて投与 小児(体重3.5~40kg):初回5mg/kg 1日目,その後維持用量2.5mg/kg 期間:人工呼吸/ECMO使用がなければ5日.5日で臨床的改善がみられなければ10日まで延長.機械的人工呼吸/ECMO使用患者では10日 |
重症の入院患者.中等症および重篤患者でも考慮する. 軽症,中等症でも3日コースとして使用可能 |
|
抗炎症 |
デキサメタゾン |
酸素吸入または機械的人工呼吸患者で6mg1日1回静注または経口・10日 |
重症および重篤な入院患者 |
酸素吸入を受けていない患者には推奨されない RECOVERY試験(N Engl J Med 384: 693, 2021)では28日死亡率が低下.重篤な患者に関するメタアナリシス)(JAMA 324: 1330, 2020)では,デキサメタゾンで28日生存率が上昇した. |
抗炎症 (IL-6阻害薬) |
トシリズマブ |
8mg/kg,実際の体重で最大800mgを1回静注,改善がみられなければ12~24時間後に2回目投与 |
重症または重篤な入院患者.RECOVERY試験の登録基準はCRP≧75mg/Lで定義された全身性炎症反応を含む |
早期(つまり入院48時間以内またはICU入室後<24時間)の投与で効果は最大. 特にコルチコステロイドとの併用時に感染リスク増大の可能性.細菌,真菌および他の日和見感染による二次感染を臨床的にモニターすること. |
抗炎症 (JAK阻害薬) |
バリシチニブ |
4mg経口1日1回(14日まで)+レムデシビル200mg1日目,その後100mg静注1日1回10日まで±デキサメタゾン |
入院患者で,重症または重篤だが機械的人工呼吸またはECMOを使用していない場合,理想的には入院後72時間以内に投与する. |
コルチコステロイドが使用できないまれな状況で,レムデシビルとの併用で用いてよい.また,IL-6阻害薬の代わりにコルチコステロイドと併用することもあるが,IL-6阻害薬とは併用しないこと. |
抗炎症 (JAK阻害薬) |
トファシチニブ |
10mg経口12時間ごと(14日まで)+レムデシビル200mg1日目,その後100mg静注1日1回・10日まで+デキサメタゾン |
入院患者で,重症または重篤だが機械的人工呼吸またはECMOを使用していない場合,理想的には入院後72時間以内に投与する. |
バリシチニブの代わりに使用可.理想的には,IL-6阻害薬の代わりにデキサメタゾンとの併用で用いるが,IL-6阻害薬とは併用しないこと. |
抗炎症 (抗補体(C5a)) |
ビロベリマブ |
800mg静注(最大6回投与),第1,2,4,8,15,22日 |
入院患者で重症,機械的人工呼吸またはECMO使用開始後48時間以内 |
標準的治療(SOC)との併用でSOC+プラセボより死亡率を低下させたという臨床試験が2つある |
時期 |
検査依頼の順序 |
入院時 |
・血算および分画,トロポニン,肝機能検査,生化学検査Chem10,CPK ・フェリチン,CRP,LDH,Dダイマー,PT/PTT/フィブリノゲン ・リスク層別化のため(患者が臨床的に悪化したら繰り返す) LDH(上昇したら毎日繰り返す) トロポニン 治療前心電図 ・ウイルス血清学(最近チェックしていなければ) HIV HCV抗体 HBs抗体,HBc抗体およびHBs抗原 ・臨床的に適応の場合: 血液培養2セット,喀痰培養,培養を反映する検尿, 尿中Streptococcus/Legionella抗原 妊娠可能な女性ではβHCG |
推奨される毎日の検査 (安定するまで) |
・血算および分画(特に総リンパ球数) ・全代謝検査 ・CPK ・入院1週目にCRP.1週を過ぎると炎症マーカーは解釈が困難 |
推奨される1日おきの検査 (上昇するか患者がICUに入室したら毎日) |
・PT/PTT/フィブリノゲン ・Dダイマー |
放射線検査 |
入院時にポータブル胸部X線.評価に基づき,二次細菌感染,肺塞栓などの懸念がある場合にはさらなる画像検査を行う. |
抗微生物薬適正使用
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