日本語版サンフォード感染症治療ガイド-アップデート版

Streptococcus pyogenes,β溶血性,A, B, C, F, G群Streptococcus  (2024/01/09 更新)
β溶血性,S. pyogenes,A, B, C, F, G群Streptococcus


臨床状況

  • 組織または血液培養でのStreptococcus pyogenes(A群Streptococcus)の同定,または咽頭炎患者での迅速Streptococcus検査陽性.
  • 組織または血液培養でのその他のβ溶血性Streptococcus属陽性.
  • 咽頭炎,一般的に「蜂窩織炎」とよばれる多様な皮膚感染(たとえば,丹毒,膿痂疹,壊死性筋膜炎),菌血症,毒素性ショック症候群を引き起こす.他のβ溶血性Streptococcusも同様の感染症を起こす.
  • 感染後に発症する自己免疫疾患として,急性リウマチ熱と急性糸球体腎炎がある.

分類

  • β溶血性Streptococcusには次のグループが含まれる
  • A群(S. pyogenes
  • B群(S. agalactiae
  • C群(S. equi
  • F,G群(S. dysgalactiae

第一選択

A群 Streptococcus 咽頭炎に対して
  • 成人:
  • CEX 500mg経口1日2回・10日
  • AZM 500mg経口・第1日目,その後250mg経口1日1回・第2~5日目
  • CLDM 300mg経口1日3回・10日
  • Penicillin VK 500mg経口1日2回・10日
  • 小児:
  • 体重<27kg:注射の痛みを軽減するために,DBECPCGとProcaine Penicillin Gを併用する:(DBECPCG 90万単位+Procaine Penicillin G 30万単位)筋注・1回
  • Penicillin VKの代わりにAMPC懸濁液50mg/kg/日1日2回に分割を用いることもある.AMPC懸濁液はより飲みやすく,吸収も良いため,効果もより大きいと考えられる.
  • CEX 25~50mg/kg/日経口2等分して10日
  • AZM 12mg/kg経口1日1回・5日
  • CLDM(体重<70kg)7mg/kg/回経口1日3回・10日
  • その他の検討事項
  • 他の新世代セファロスポリン系薬も有効で,おそらく交差過敏症のリスクは少ない.興味深いことに,FDAはCFDNとCPDXの5日治療を承認している.
  • 注:サルファ剤(STを含む),DOXYおよび他のテトラサイクリン系薬,フルオロキノロン系薬は,耐性率が高く,in vitroで感受性のある株でも咽頭からの除菌に失敗する確率が高いため,使用しない.
  • 一部に耐性あり.地域におけるアンチバイオグラムをチェックすること.
  • コンプライアンスが問題なら,PCG筋注を用いてもよい
  • ペニシリンアレルギーによる皮疹(IgE関連アレルギーではない)の既往があれば,セファロスポリン系薬を用いてもよい
  • ペニシリン系に対するIgE関連アレルギー反応の既往があれば,セファロスポリン系薬またはカルバペネム系薬を用いる
丹毒(蜂窩織炎)に対して
  • VCM 15mg/kg静注12時間ごと,またはLZD 600mg静注/経口1日2回
  • 地域での耐性がなければCLDM 600mg静注8時間ごと(A群Streptococcusでは耐性はまれ)
  • PCG 200万~400万単位静注4~6時間ごと無熱となるまで,その後Penicillin VK 500mg経口1日4回食前および就寝時
  • 皮膚発疹として発症するペニシリンアレルギーの既往がある場合:CTRX 1g静注24時間ごと,またはCEZ 1g静注8時間ごと
  • 重症ペニシリンアレルギーの既往がある場合,セファロスポリンまたはカルバペネムアレルギーがIgE媒介アナフィラキシーとして発症する
  • 初回200mg静注(60分以上かけて),その後100mg(30分以上かけて)24時間ごと
  • 第1日100mg(30分以上かけて)1日2回,その後100mg静注(30分以上かけて)24時間ごと
  • 第1,2日450mg経口24時間ごと,その後300mg経口24時間ごと
  • 耐性および/または臨床的失敗があるため,古いテトラサイクリン系薬は使用しないこと.
菌血症に対して
  • CLDM 600~900mg静注8時間ごと+PCG 400万単位静注4時間ごと(コメント参照)
  • A群Streptococcus CLDM 耐性は非常にまれである.したがって,毒素性ショック症候群のエビデンスがなく,in vitroでの耐性がない場合には,CLDM単剤はペニシリンアレルギーのある患者における選択肢の1つ.
  • フルオロキノロン系薬,サルファ剤(STを含む),DOXY(あるいは他のテトラサイクリン系薬)は,耐性率が高く臨床的に無効の報告があるため,使用しないこと.
毒素性ショック症候群に対して
  • CLDM 600~900mg静注8時間ごと+PCG 400万単位静注4時間ごと
  • PCG+CLDMに代えて CTRX 2g静注24時間ごとを使用してもよい.
  • CLDMが選択肢とならない場合には,LZD 600mg静注/経口1日2回をPCGと併用してもよい.
  • IVIG 初日1g/kg,その後0.5g/kg・2日目および3日目を追加することもある.
  • フルオロキノロン系薬,サルファ剤(STを含む),DOXY(あるいは他のテトラサイクリン系薬)は耐性率が高く,臨床的に無効の報告があるため,使用しないこと.

第二選択

  • 臨床的な症候群およびβラクタム抗菌薬に対するアレルギーの有無に応じて,上述の処方が第二選択となる

抗微生物薬適正使用

  • 菌血症,TSS:フルオロキノロン系薬,サルファ剤(STを含む),DOXY(または他のテトラサイクリン系薬)は,耐性率が高く臨床的に無効の報告があるため使用しないこと.

コメント

  • ST 2または4錠1日2回は,内科的な合併症(たとえば糖尿病)のない外来患者の単純性蜂巣炎には有効である可能性がある(N Engl J Med 372: 1093, 2015).
  • フルオロキノロン系薬は単純性皮膚・軟部組織感染には有効である可能性があるが,咽頭炎や侵襲性感染に用いないこと.
  • A群以外のStreptococcus属(B,C,F,G群)の感受性はA群と同様であり,これらの菌による感染症の治療も同様である.
  • CLDMは,抗菌効果が菌量(inoculum)や菌の増殖段階に影響されないことから,ペニシリンよりも優れているようである.
  • 標準的なin vitroの検査法では,CLDM耐性は臨床分離株の<1%.
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2024/01/08