日本語版サンフォード感染症治療ガイド-アップデート版

髄膜炎-シャントまたはカテーテル関連  (2023/03/07 更新)
髄膜炎:髄液シャントなどの医療機器関連


臨床状況

  • 培養結果が明らかになるまでの経験的治療
  • 医療機器関連の髄膜炎.
  • 感染した脳室-腹腔(心房)シャント,腰椎カテーテル,外部脳室ドレーン,オンマヤリザーバー,その他脳脊髄液ドレナージ機器に起因する脳室炎/髄膜炎.
  • 所見および症状:新たな頭痛,精神状態の変化,発熱,シャント部位の圧痛/紅斑
  • 臨床検査所見:血液培養陽性だが感染源が明らかでない.髄液細胞増加を伴う脳脊髄液の異常,糖低下/高蛋白(ただし脳脊髄液が正常な場合もある).脳脊髄液培養陽性がゴールドスタンダード
  • 臨床状況から感染が疑われるが培養が陰性の場合は,遅育性の微生物(たとえば,Propionibacterium acnes)を同定するために10日培養を続ける
  • 感染は器具設置後1カ月以内に起こることが多い.
  • 再感染もまれではない

病原体

  • グラム陰性桿菌
  • ジフテロイド

第一選択

  • 経験的治療:VCM 15~20mg/kg静注8~12時間ごと(目標AUC24 400~600μg・h/mL達成が望ましいが[AUC-用量設定の原理と計算を参照],そうでなければトラフ値15~20μg/mLをめざす)+(CFPM 2g静注8時間ごとまたはCAZ 2g静注8時間ごと)
  • 特異的治療についてはコメント参照

第二選択

  • VCM(第一選択と同様)+MEPM 2g静注8時間ごとを3時間かけて静注
  • 重症βラクタムアレルギー:VCM+(CPFX 400mg静注8時間ごと,またはAZT 2g静注6時間ごと)

抗微生物薬適正使用

  • 病原体と感受性試験結果に基づいて狭域抗菌薬を選択する(特異的治療についてはコメント参照).

コメント

  • 2段階シャント抜去は,シャントに依存する患者ではもっとも良い選択肢である(Clin Infect Dis 64: 989, 2017).
   
特異的治療
病原体
第一選択薬
Staphylococcus, Methicillin 感受性
NafcillinまたはOxacillin
Staphylococcus, Methicillin 耐性
VCM
Cutibacterium(旧名 Propionibacteriumacnes
PCG
S. pneumoniae
 ペニシリンのMIC≦0.06μg/mL
PCGまたはCTRX
 ペニシリンのMIC≧0.12μg/mL,CTRX MIC<1μg/mL
CTRXまたはCTX
 ペニシリンのMIC≧0.12μg/mL,CTRX MIC≧1μg/mL
VCMCTRXまたはCTX
腸内細菌科
CTRXまたはCTXまたはCFPM
腸内細菌科 ESBL産生
MEPM
P. aeruginosa
CFPMまたはMEPM
Candida
L-AMB

  • 通常の治療
  • 可能な限り感染した器具を除去し,必要なら外部脳室ドレーンを設置
  • 外部ドレーンから採取した脳脊髄液の培養を,陰性となるまで繰り返す
  • 治療期間:脳脊髄液培養結果が最後に陽性になったときから10~14日(P. acnes,コアグラーゼ陰性Staphylococcus,ジフテロイド感染患者,または脳脊髄液異常所見がほとんどない患者では,より短期間)
  • シャント再建
  • コアグラーゼ陰性Staphylococcus,ジフテロイド,P. acnes
  • ・脳脊髄液異常所見なし:脳脊髄液培養が48時間陰性なら,外部ドレーン設置から3日後
  • ・脳脊髄液異常所見あり:最後の脳脊髄液培養陽性から7~10日後
  • S. aureusまたはグラム陰性菌:最後の脳脊髄液培養陽性から10日後
  • シャント除去が不可能,または全身治療で培養陰性にならなかった場合は,脳室内投与を検討.
  • 脳室内投与抗菌薬の用量は以下のとおり(スリット状脳室では低用量,正常サイズの脳室では中等用量,脳室拡大例では高用量)
  • GM :4~8mg:成人,1~2mg幼児,小児
  • ドレナージ量に基づく投与回数
  • <50mL/24時間:3日に1回
  • 50~100mL/24時間:2日に1回
  • 100~150mL/24時間:1日に1回
  • 150~200mL/24時間:VCMを5mg,GMを1mg増量
  • 200~250mL/24時間:VCMを5mg,GMを1mg増量
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2023/03/09