日本語版サンフォード感染症治療ガイド-アップデート版

膿胸-成人,小児>5歳  (2025/11/04 更新)


臨床状況

  • 小児>5歳および成人の膿胸.
  • 急性(通常肺炎に伴う)または亜急性(慢性).
  • 血液,呼吸器検体または胸水培養,グラム染色が陰性ならば,亜急性として治療する
  • ドレナージ(排膿)の適応.
  • 疫学的リスクがある場合は,結核または腫瘍も考慮に入れる.その症状は亜急性または慢性であり,ルーチンの培養は陰性となる.

病原体

  • 急性
  • 亜急性/慢性
  • S. milleri
  • 口腔グラム陰性嫌気性菌

第一選択

  • 診断的胸腔穿刺を行う:膿胸にはカテーテルまたは胸腔チューブによるドレナージ(下記コメント参照).
  • 処方の選択は,臨床症状および病原菌によって決定する.
臨床状況
成人
小児
急性,経験的治療,培養結果が得られていない
ABPC/SBT 3g静注6時間ごと
ABPC/SBT 100~300mg/kg/日静注6時間ごとに分割
急性,MRSAの疑い,または可能性あり
VCM 15~20mg/kg静注8~12時間ごとを追加(目標AUC24 400~600μg・h/mL達成が望ましいが[AUC-用量設定の原理と計算を参照],そうでなければトラフ値15~20μg/mLを目標とする)またはLZD600mg静注12時間ごと
VCM 60~80mg/kg/日3~4回に分割を追加,またはLZD 10mg/kg/8時間ごと(12歳まで)
急性,Pseudomonas感染(たとえば,院内)の疑い,または可能性あり
PIPC/TAZ 4.5g静注(4時間以上かけて)8時間ごと
PIPC/TAZ 300mg/kg/日静注6時間ごとに分割
S. pneumoniaeまたはStreptococcus属(A群)
CTRX 2g静注24時間ごと,またはCTX 2g静注8時間ごと
CTRX 75~100mg/kg静注24時間ごと,またはCTX 200mg/kg/日6~8時間ごとに分割
S. aureus
MSSA:NafcillinまたはOxacillin 2g静注4時間ごと
MRSA:VCMまたはLZD上記と同様
MSSA:NafcillinまたはOxacillin 37mg/kg静注6時間ごと
MRSA:VCMまたはLZD上記と同様
H. influenzae
CTRX 2g静注24時間ごと
CTRX 50mg/kg静注24時間ごと
亜急性または慢性
CTRX 2g静注24時間ごと+MNZ 500mg静注6~8時間ごと
CTRX 50mg/kg静注24時間ごと+MNZ 30mg/kg/日6~8時間に分割

第二選択

  • Cefoxitin:2g静注6~8時間ごと(成人);80~160mg/kg/日・静注6時間ごとに分割(小児)
  • IPM/CS:0.5g静注6時間ごと(成人);15~25mg/kg/日(最大2g/日)静注6時間ごとに分割(小児)
  • PIPC/TAZ:4.5g静注(4時間以上かけて)8時間ごと(成人);300mg/kg/日静注6時間ごとに分割(小児)

治療期間/抗微生物薬適正使用

治療期間
  • 十分明確に定義されていないが,通常4~6週
抗微生物薬適正使用
  • ドレナージが確立して患者が治療に反応すれば,経口治療へステップダウンが可能.病原菌によって選択は異なるが,AMPC,AMPC/CVA,CLDM,MFLX,LZDなどが選択肢となる.
  • 培養陰性,または培養で口内細菌叢(たとえば,S. milleriのような微好気性のStreptococcus属)が陽性ならば,嫌気性菌を培養で分離することは難しいにもかかわらず存在する可能性があるため,嫌気性菌をカバーする薬剤を選択する.

コメント

  • 組織プラスミノーゲンアクチベータ(t-PA)10mg+DNase 5mgを胸腔チューブを通じて胸腔内へ1日2回注入を3日続けたところ,排膿が促進され,手術回数と入院日数が減少した:どちらの薬剤も単独使用では効果がなかった(N Engl J Med 365: 518, 2011).
  • 難治性胸水貯留に対する胸腔内フィブリン溶解薬投与については賛否両論ある:Chest 145: 14, 2014
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2025/11/04