false
日本語版サンフォード感染症治療ガイド-アップデート版
膿胸-成人,小児>5歳
(
2024/03/19 更新
)
臨床状況
小児>5歳および成人の膿胸.
急性(通常肺炎に伴う)または亜急性(慢性).
血液,呼吸器検体または胸水培養,グラム染色が陰性ならば,亜急性として治療する
ドレナージ(排膿)の適応.
疫学的リスクがある場合は,結核または腫瘍も考慮に入れる.その症状は亜急性または慢性であり,ルーチンの培養は陰性となる.
病原体
急性
S. pneumoniae
Streptococcus 属(A群)
S. aureus
(
MSSA
および
MRSA
)
H. influenzae
亜急性/慢性
嫌気性
Streptococcus
属
S. milleri
群
Bacteroides 属
腸内細菌科
M. tuberculosis
第一選択
診断的胸腔穿刺を行う:膿胸にはカテーテルまたは胸腔チューブによるドレナージ(下記コメント参照).
処方の選択は,臨床症状および病原菌によって決定する.
急性
経験的治療:培養結果が得られていない
ABPC/SBT
:
成人3g静注6時間ごと,
小児 100~300mg/kg/日静注6時間ごとに分割
MRSA感染が疑われる,またはその可能性がある場合,
VCM
を追加:
成人15~20mg/kg静注8~12時間ごと(目標AUC
24
400~600μg・h/mL達成が望ましいが[AUC-用量設定の原理と計算を参照],そうでなければトラフ値15~20μg/mLをめざす)
小児60~80mg/kg/日・3~4回に分割
または
LZD
:
成人600mg静注12時間ごと
小児10mg/kg8時間ごと(12歳まで)
Pseudomonas
感染が疑われるか,その可能性がある場合(たとえば,院内感染)
PIPC/TAZ
:成人3.375g静注6時間ごと(または3.375g4時間静注8時間ごと),小児 300mg/kg/日静注6時間ごと
MRSA感染が疑われる,またはその可能性がある場合,
VCM
または
LZD
を上記と同様
S. pneumoniae
または
Streptococcus
属(A群)
CTRX
:
成人2g静注24時間ごと
小児75~100mg/kg静注24時間ごと
または
CTX
(使用可能なら)
成人2g静注8時間ごと
小児200mg/kg/日6~8時間ごとに分割
S. aureus
MSSA:
Nafcillin
または
Oxacillin
:成人2g静注4時間ごと,小児37mg/kg静注6時間ごと
MRSA:VCMまたはLZDを上記と同様
H. influenzae
CTRX
:
成人2g静注24時間ごと
小児50mg/kg静注24時間ごと
亜急性/慢性
CTRX
成人2g静注24時間ごと
小児50mg/kg静注24時間ごと
+
MNZ
成人500mg静注6~8時間ごと
小児30mg/kg/日6~8時間ごとに分割
第二選択
Cefoxitin
:成人2g静注6~8時間ごと,小児80~160mg/kg/日・静注6時間ごとに分割
IPM/CS
:成人0.5g静注6時間ごと,小児15~25mg/kg/日(最大2g/日)静注6時間ごとに分割
PIPC/TAZ
:成人3.375g静注6時間ごと(または3.375gを4時間かけて静注8時間ごと),小児300mg/kg静注6時間ごとに分割
抗微生物薬適正使用
治療期間は十分に確立していないが,4~6週が一般的.
ドレナージが確立して患者が治療に反応すれば,経口治療へステップダウンが可能.病原菌によって選択は異なるが,AMPC,AMPC/CVA,MFLX,LZDなどが選択肢となる.
培養陰性,または培養で口内細菌叢(たとえば,
S. milleri
のような微好気性の
Streptococcus
属)が陽性ならば,嫌気性菌を培養で分離することは難しいにもかかわらず存在する可能性があるため,嫌気性菌をカバーする薬剤を選択する.
コメント
組織プラスミノーゲンアクチベータ(t-PA)10mg+DNase 5mgを胸腔チューブを通じて胸腔内へ1日2回注入を3日続けたところ,排膿が促進され,手術回数と入院日数が減少した:どちらの薬剤も単独使用では効果がなかった(
N Engl J Med 365: 518, 2011
).
しかし,小児では,DNaseでのt-PA注入による予後改善はみられなかった(
JAMA Pediatr 174: 332, 2020
).
難治性胸水貯留に対する胸腔内フィブリン溶解薬投与については賛否両論ある:
Chest 145: 14, 2014
.
一般的コメントと文献については,
膿胸-概説
参照.
文献:
StatPearls 2022年1月,2022年8月8日
.
ライフサイエンス出版株式会社 © 2011-2024 Life Science Publishing
↑ page top
2024/03/18