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日本語版サンフォード感染症治療ガイド-アップデート版
憩室炎,直腸周囲膿瘍
(
2021/7/20 更新
)
憩室炎,直腸周囲膿瘍
臨床状況
憩室炎または直腸周囲膿瘍は重症度に基づいて3段階の病態に分けられる
外来患者:軽症憩室炎,または排膿された直腸周囲膿瘍
入院患者:軽症~中等症,虫垂周囲の限局性腹膜炎または膿瘍
入院/重症患者:汎発性腹膜炎のために重症で生命の危険がある.菌血症,敗血症性ショックを伴うこともある
治療全般について(
JAMA 318: 291, 2017
;
N Engl J Med 379: 1635, 2018
).
腹膜炎-続発性
も参照.
病原体
腸内細菌科:たとえば,
E. coli
,
Klebsiella
属,他の好気性グラム陰性桿菌
Bacteroides
属および他の嫌気性菌
Enterococcus
属:
E. faecalis
がもっとも多い;
E. faecium
P. aeruginosa
は少ない:3~15%
腸内
Candida
属の役割は明らかでない.
第一選択
外来患者:軽症憩室炎または排膿された直腸周囲膿瘍
AMPC/CVA
875/125mg経口1日2回
βラクタム系薬に対しアレルギーまたは不耐の場合:[(
ST
DS†経口1日2回,または
CPFX
750mg経口1日2回または
LVFX
750mg経口24時間ごと)+
MNZ
500mg経口6時間ごと].
益と害の比較:
Ann Intern Med 174: 737, 2021
治療期間は臨床反応により異なる.通常は7~10日.血清プロカルシトニン(PCT)濃度に応じて治療期間を調整できる.PCT濃度<0.5ng/mLとなるまで治療する.
入院患者:軽症~中等症
外科へのコンサルテーションが望ましい
PIPC/TAZ
初回4.5g30分以上かけて静注,その4時間後から3.375g4時間以上かけて静注を開始,8時間ごとに繰り返す
Ertapenem
1g静注24時間ごと
MFLX
400mg静注†24時間ごと(
Bacteroides
属の耐性が増大している可能性がある)
重症で生命の危険がある
外科へのコンサルテーション
MEPM
1g静注8時間ごと
IPM/CS
500mg~1g静注6時間ごと
DRPM
500mg8時間ごと(1時間かけて静注)
(†:日本にない剤形)
第二選択
外来患者:軽症憩室炎または排膿された直腸周囲膿瘍
MFLX
400mg経口24時間ごと
治療期間は臨床反応により異なる.通常は7~10日
入院患者:軽症~中等症
(
CPFX
400mg静注12時間ごとまたは
LVFX
750mg静注24時間ごと)+
MNZ
500mg静注6時間ごとまたは1g静注12時間ごと
MFLX
400mg静注†24時間ごと
CFPM
2g静注12時間ごと+
MNZ
1g静注12時間ごと
AMPC/CVA
1000/200mg静注†8時間ごと
重症で生命の危険がある
ABPC
2g静注6時間ごと+
MNZ
500mg静注6時間ごと+(
CPFX
400mg静注12時間ごとまたは
LVFX
750mg静注24時間ごと)
CAZ/Avibactam
2.5g 2時間かけて静注,8時間ごと+
MNZ
500mg1時間かけて静注8時間ごと.CrCl30~50mL/分では効果が低下するというエビデンスがある(
Clin Infect Dis 62: 1380, 2016
).
CTLZ/TAZ
1.5g1時間かけて静注8時間ごと+
MNZ
500mg静注8時間ごと.CrCl30~50mL/分では効果が低下するというエビデンスがある(
Clin Infect Dis 60: 1462, 2015
).
ABPC
2g静注6時間ごと+
MNZ
500mg静注6時間ごと+(
AMK
または
GM
または
TOB
).アミノグリコシド系の毒性のためほとんど用いられない.
重度のペニシリン/セファロスポリンアレルギーの場合:
AZT
1g静注8時間ごとまたは2g静注6時間ごと+
MNZ
500mg静注6時間ごとまたは1g静注12時間ごと
(
CPFX
400mg静注12時間ごとまたは
LVFX
750mg静注24時間ごと)+
MNZ
1g静注12時間ごと
(†:日本にない剤形)
抗微生物薬適正使用
腸内常在菌叢による憩室炎/腹膜炎に対する経験的治療の一般原則
好気性グラム陰性桿菌および嫌気性グラム陰性桿菌の両方に対する活性が予想できる薬剤を含む処方を選択する.
好気性グラム陰性桿菌のみに活性がある薬剤:
アミノグリコシド系
第2,3,4世代セファロスポリン系
AZT
抗緑膿菌作用をもつペニシリン系:たとえば,PIPC(TAZなし)
CPFXおよびLVFX
嫌気性グラム陰性桿菌のみに活性がある薬剤(
Antimicrob Agents Chemother 56: 1247, 2012
):
MNZ
CTLZ/TAZおよびCAZ/Avibactamは,嫌気性菌に対する活性が不十分なためMNZと併用すること.
耐性増加のため嫌気性菌に対する治療として推奨されない薬剤:
CefoxitinおよびCefotetan(
Clin Infect Dis 59: 698, 2014
)
ABPC/SBTおよびCLDM(
Clin Infect Dis 50: 133, 2010
)
好気性グラム陰性桿菌と嫌気性グラム陰性桿菌の両方に活性のある薬剤:
PIPC/TAZ
カルバペネム系:MEMP,IPM/CS,DRPM
MFLX:重症例での経験が乏しい.軽症腹膜炎に対してなら使用しうる.
それぞれの細菌の耐性や治療選択に関するさらなる議論については,
グラム陰性桿菌,薬剤耐性-概説
を参照
不明な点,疑問のある点:
MRSAに対する経験的治療は必要か?必要性は不明.
Enterococcus
属に対する経験的治療は必要か?通常は必要ない.心臓弁膜症のため心内膜炎のリスクが高い患者は例外の可能性がある.
Candida
属に対する経験的治療を行うのはどのような場合か?
腹腔または血液から
Candida
属が純粋培養された場合
抗菌薬治療に反応がない患者で,血清β-D-グルカンなどの真菌バイオマーカーが陽性の場合
急性の壊死性膵炎がある場合
コメント
プロスペクティブなプラセボ対照ランダム化試験では,複雑性憩室炎,虫垂炎,その他「糞便性」腹膜炎を呈する疾患患者において,先制的(経験的)抗真菌薬治療の有用性は認められなかった(
Clin Infect Dis 61: 1671, 2015
).
注:Ticarcillin/Clavulanateは現在では入手できない
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2021/07/20