日本語版サンフォード感染症治療ガイド-アップデート版

咽頭炎・扁桃炎  (2025/01/21 更新)
咽頭炎・扁桃炎:滲出性またはびまん性紅斑,経験的治療


臨床状況/診断

臨床状況
  • 従来はS. pyogenesの検出と,検出された場合はその治療に焦点があった
  • S. pyogenesが急性咽頭炎の病原菌であるのは,小児では15~35%,成人では5~15%である.
  • S. pyogenesはもっとも多い病原菌であるため,存在する場合は特異的治療の開始のために速やかにその存在を確認する必要がある.迅速検出法が使用できなくても,臨床症状から疑われる場合は,以下の理由から経験的治療の開始が合理的である:
  • ■症状の軽減,化膿性合併症の予防,伝播の抑制,Streptococcus属(A群:GAS)の感染がある場合はその除去とそれによる急性リウマチ熱(ARF)の予防
  • ●ARFは現在でも世界中の多くの地域で,特に小児において問題となっている.
  • ●影響力の大きな研究において,DBECPCGでのGAS治療により,ARFの発症率は2.8%から0.2%に低下することが示された.これは咽頭培養でのGASの消失と関連していた(Clin Infect Dis 19: 1110, 1994).ARFに関する総説を参照:Lancet 366: 155, 2005
診断
  • 焦点はA群Streptococcusの検出
  • 患者に鼻炎,嗄声あるいは咳があればウイルス性が考えられ,GASの検査は不要.
  • ポイントオブケア(POC)迅速Streptococcus抗原検査による検出
  • ■特異度≧95%,感度70~90%
  • ●成人で迅速検査陰性:GASが病原体であることは少なく,成人でのARFの発症率も非常に低いことから,迅速検査が陰性の場合に咽頭培養が必要となることはまれである.
  • ●小児で迅速検査陰性:GASが病原体であることが多くARFの発症率も高いことから,迅速検査が陰性の場合に咽頭培養を行うことは理にかなっている.
  • 核酸増幅検査(NAAT)による検出:マルティプルCLIA(臨床試験室改善法)-waived POC PCR検査がFDAに承認され,利用可能となった:
    J Infect Dis 230: S182, 2024
  • ■Liat SystemのCobas Strep A検査およびAlere i strep A検査
  • ■検査所要時間 15分.
  • ■抗原検出より高価だが,迅速Streptococcus検査が陰性でも確認のための培養は不要.
  • ■NAAT利用の増加が予想されるが,さらなる比較試験が必要.直接的比較では,NAATは抗原検出より感度が高く,抗菌薬治療の適正化により大きな影響を与える可能性がある(J Clin Micro 56: e01310, 2018).
  • ■注意:NAATは生きていないA群S. pyogenesのDNAも検出する。こうしたDNAは感染後2~6週検出される.

  • GASに対する治療を行わなかった場合に起こりうる合併症:
  • 急性リウマチ熱,Streptococcus感染後の反応性関節炎,扁桃周囲膿瘍,咽頭後膿瘍,化膿性静脈炎.
  • CおよびG群Streptococcusも咽頭炎を引き起こすが,ARFは非常にまれである.
  • 7歳未満の小児で,Streptococcus感染後に糸球体腎炎が起こることがある.化膿性咽頭炎がありSreptococcus迅速抗原検査陰性の小児では,GAS感染がないことおよび他の病原体を確認するため,迅速NAATまたは咽頭培養を行うのが理にかなっている.
  • 文献

病原体

  • ウイルス:
  • 咽頭炎が性感染症の主要な徴候となりうる:たとえば
  • N. gonorrhoeae
  • HIV
  • インフルエンザ,SARS-CoV-2を含む呼吸器ウイルス

第一選択

  • 経験的またはS. pyogenesに対する特異的治療
  • 小児
  • Penicillin V 体重<27kgなら250mg経口1日2回または3回,>27kgなら500mg経口1日2回・10日(効果が高く, スペクトラムが狭く,薬剤性発疹の頻度が低いため,第一選択薬である)
  • AMPC 50mg/kg経口1日1回(最大1000~1200mgまで)・10日(懸濁液を用いる必要がある場合にはAMPC懸濁液が推奨される;AMPC懸濁液はPenicillin Vより味がよいため)
  • コンプライアンスが得られそうにないなら,DBECPCG 2.5万単位/kg筋注(最大120万単位)・1回
  • 成人
  • Penicillin V(500mg経口12時間ごと,または250mg経口6時間ごと)・10日
  • AMPC 500mg経口8~12時間ごと・10日,または徐放錠†775mg経口24時間ごと・10日
  • AMPC/CVA 875/125mg経口12時間ごと・10日
  • コンプライアンスが得られそうにないなら,DBECPCG 120万単位筋注・1回
  • ペニシリンに対するIgE媒介即時型過敏反応があり,βラクタム薬を避ける必要がある場合
  • CLDM 300mg経口8時間ごと・10日
  • AZM 500mg経口1日1回・5日,またはCAM 250mg経口1日2回・10日(GAS耐性株検出率は地域により異なるため,耐性株に注意すること)
  • ●A群S. pyogenesの耐性増大に注意すること
  • ●2020年時点では,30%の株がEM耐性,30%がCLDM耐性
  • 扁桃摘出術の考慮およびガイドラインについては,下記コメント参照
  • 鎮痛:アセトアミノフェン,イブプロフェン.ライ症候群発症の危険があるため,小児ではアスピリンは避ける.

(†:日本にない剤形)

第二選択

  • 小児
  • CEX 500mg経口1日2回・10日(望ましい第二選択)または(望ましくない)
  • CLDM 30mg/kg/日経口8時間ごとに分割・10日,または
  • マクロライド系薬(AZMまたはCAM),ただしCLDMおよびマクロライド双方に対する実質的な耐性が増加している
  • AZM 12mg/kg経口1日1回・5日
  • CAM 15mg/kg/日経口1日2回に分割・10日
  • ■2020年時点での耐性
  • ●EM耐性30%
  • ●CLDM耐性30%
  • 成人
  • CEX 500mg経口1日2回・10日
  • 経口セファロスポリン系薬・4~6日:IgE媒介の即時型ペニシリンアレルギーのない患者
  • ペニシリンへの即時型アレルギー反応がある場合:
  • CLDM 300mg経口1日3回・10日
  • AZM 500mg経口1日1回・5日
  • ■2020年時点では30%の株がCLDMおよびマクロライド系薬の双方に耐性

抗微生物薬適正使用

  • ほとんどの薬剤で,FDAは10日間ペニシリン治療を承認している.データでは,セファロスポリン系薬が処方された場合には,より短期間の治療が支持されている(Clin Microbiol Infect 29: 150, 2023).
  • ペニシリン系薬は咽頭炎治療薬としては最もスペクトラムが狭い.
  • 第1世代セファロスポリン系薬,たとえばCEXはスペクトラムがもっとも狭く,通常は最も経済的な選択肢である.
  • CDTR,CXM-AX,CPDX-PR,CFDN,CFIX,Cefprozilのようなスペクトラムの広い経口セファロスポリン系薬は,活性があり使用が承認されているものもあるが,第1世代セファロスポリンを上回る有用性はなく,一般的には咽頭炎・扁桃炎に対する最適な選択肢ではない.
  • 耐性率が高いためテトラサイクリン系薬,ST,フルオロキノロン系薬は推奨されない

コメント

  • 長期化する,あるいは再燃する感染をどうするか?
  • 治癒確認の培養や抗原検査はルーチンには必要ない.
  • 実際に臨床的にも培養からも治療失敗が確認される場合,どのような原因が考えられるか:
  • ■背景にあるウイルス性咽頭炎による長期化,検出されたStreptococcus属の定着
  • ■患者のアドヒアランス不良
  • Streptococcusによる新たな感染
  • ■ペニシリンによる治療では,βラクタマーゼ産生口内常在菌がペニシリンを加水分解するという説がある(J Antimicrob Chemother 24: 227, 1989).AMPC/CVAの有用性が示唆される.
  • Fusobacterium necrophorumはin vitroでペニシリン,セファロスポリン,CLDMに感受性だが,EM,AZM,CAMに耐性.
  • 注: S. pyogenesに対するテトラサイクリン系およびSTの臨床的有効性については疑問がある.STについての文献:J Clin Microbiol 50: 4067, 2012
  • Streptococcus咽頭炎の合併症に関するまとめ:
  • 急性リウマチ熱,Streptococcus感染後の糸球体腎炎(年齢<7歳の小児),
  • レンサ球菌(A群Streptococcus)性小児自己免疫性精神神経疾患(PANDAS)
  • 扁桃周囲膿瘍
  • 内頸静脈の血栓性静脈炎(Lemierre症候群)
  • 咽頭炎の原因がS. pyogenesではなく伝染性単核球症の場合は,発疹の発症率が高い.
  • CLDM:経口懸濁液は味が良くない.
  • C. difficile腸炎のリスク.
  • 再発性扁桃炎に対する扁桃摘出術?
  • 以下の条件であれば,手術は行わず慎重な経過観察が推奨される:
  • ■前年に再発<7回
  • ■過去2年で<5回/年の再発
  • ■過去3年で<3回/年の再発
  • ■再発は次を満たす必要がある:発熱>38.5℃,扁桃滲出液,リンパ節腫大,A群溶血性Streptococcusの検出
  • 以下の条件であれば,変更して手術を考慮:
  • ■複数の抗菌薬に対するアレルギーまたは不耐
  • ■PFAPA症候群の再発
  • ●周期熱
  • ●アフタ性口内炎
  • ●咽頭炎
  • ●リンパ節炎
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2025/01/20