日本語版サンフォード感染症治療ガイド-アップデート版

Corynebacterium diphtheriae  (2025/11/11 更新)


臨床状況

  • 症状
  • ワクチン接種率の高い環境ではまれ
  • 咽頭痛,頸部リンパ節腫脹,微熱,過去のジフテリア予防接種が不十分
  • 所見:紅斑から白色滲出液に進行し,その後癒着した灰色の偽膜となる
  • ジフテリア毒素で壊死した粘膜細胞によって偽膜が形成される
  • ジフテリア毒素
  • 鼻腔,咽頭,喉頭気管支に灰色の偽膜が付着する
  • 毒素は心筋炎も引き起こす(22%の患者)
  • 毒素は神経障害も引き起こす(軟口蓋,脳神経)
  • ウマジフテリア抗毒素をCDC(+1 404-639-2880)から入手.さらなる情報はCDCのジフテリアを参照
  • 非毒素産生ジフテリアによる皮膚潰瘍のデータについてはコメントを参照

診断

  • 咽頭および鼻腔の培養(特殊な培地が必要なため検査室に連絡)
  • PCR検査では,病原体および/またはジフテリア毒素を検出できる. CDCへ問い合わせ:電話 +1 404-639-1231

第一選択

治療は抗菌薬,抗毒素,患者の気道確保から成る
抗菌薬治療
  • ペニシリンに対する耐性が増大しているため,マクロライド系薬を第一選択とするのが望ましい(Genome Med 12: 107, 2020
  • マクロライド
  • AZM(静注/経口)
  • 小児:10~12mg/kg1日1回(最大500mg/日)
  • 成人:500mg静注/経口1日1回
  • EM:小児および成人
  • 40~50mg/kg/日(最大2g/日)静注/経口4回に分割(忍容性が低い)
  • 静注の場合は,1回60分以上かけて
  • ペニシリン:マクロライドが使用できず,in vitroでの感受性が確認されている場合にのみ使用する
  • 小児
  • 水性PCG10万~30万単位/kg/日静注6時間ごとに分割(最大100万単位/回),または
  • プロカインPCG5万単位/kg/日筋注1日1回(最大120万単位/日),または
  • Penicillin VK10~15mg/kg/回(最大500mg/回)経口1日4回
  • 成人
  • 水性PCG 2万5千単位/kg静注6時間ごと(最大100万単位/回),または
  • プロカインPCG 120万単位筋注1日1回
  • 患者にとって可能なら,Penicillin VK 500mg経口(食事なしで)1日4回に替えることも可能
ジフテリア抗毒素
  • 米国ではCDCから入手;電話で助言を求める:1-404-639-2889
  • 感受性検査は必要ない.症候性ジフテリアが疑われる,または明らかであれば,抗毒素を1回用量を投与
  • 抗毒素静注治療:用量は病期により異なる.
  • <48時間:2万~4万単位
  • 鼻咽頭の偽膜病変がある場合:4万~6万単位
  • >3日および牛頸(bull neck):8万~12万単位.60分以上かけて静注
濃厚接触者
  • 患者を特定し,培養を行い,濃厚接触者を管理すること.予防的な抗菌薬投与が必要となること場合もある.
  • 接触者をAZM 500mg経口1日1回・7~10日またはEM(上記用量)で治療
  • マクロライド系薬が入手できない場合,6歳未満ならプロカインPCG筋注60万単位,6歳以上なら120万単位
  • 気道からの菌の根絶を確認するために治療後1~2日で培養を行い,さらに治療終了の2週後に再度培養を行う.
  • 治療後,患者はジフテリア毒素ワクチン接種を受ける必要がある.

第二選択

  • 他の薬剤に関する臨床データなし

治療期間/抗微生物薬適正使用

治療期間
  • 通常は14日
抗微生物薬適正使用
  • ジフテリア菌は,in vitroでCAM,AZM,フルオロキノロン,CLDM,ST,VCM,LZDに感受性がある.マクロライドおよびペニシリンに耐性の株の場合は,VCMまたはLZDが合理的な第二選択である
  • 全βラクタムに耐性(カルバペネムに対する誘導耐性を含む)で致死的な毒素産生C. diphtheriaeが報告されている:Clin Infect Dis 73: e4531, 2021

コメント

  • AZMはEMよりも忍容性が高い(経口も静注も).EM静注は静脈炎に,経口は悪心・下痢に関連がある.
  • 気道を確実に確保すること.心電図および心筋酵素の検査を行う
  • 皮膚ジフテリア
  • 慢性的な皮膚表面の潰瘍
  • 汚れた偽膜の存在
  • 培養またはPCRで診断
  • 皮膚潰瘍を引き起こすCorynebacteria株は通常毒素非産生で,抗毒素は必要ない
  • 接触者の予防
  • 濃厚接触があれば,特定し,培養を行い,抗菌薬による予防を考慮する.
  • 最近のワクチン接種歴がない,または不明ならば,ワクチン接種する
  • 培養後:接触者治療: AZM 500mg経口1日1回・7~10日
  • 通常,治療開始から48時間後には病気の伝染性はなくなる
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2025/11/10