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日本語版サンフォード感染症治療ガイド-アップデート版
Chlamydia trachomatis
(
2021/11/30 更新
)
臨床状況
C. trachomatis
は血清型に応じて臨床症状が異なる:A,B,Ba,Cはトラコーマ,D~Kは尿路生殖器症状(たとえば尿道炎/子宮頸管炎),L1~L3は性病性リンパ肉芽腫症(LGV)を引き起こす.
C. trachomatis
尿路生殖器症状は,米国でもっとも報告の多い感染症である.
以下と関連する:
非淋菌性子宮頸管炎,尿道炎,骨盤内炎症性疾患,直腸炎を含む性感染症
性病性リンパ肉芽腫(LGV)
トラコーマ:慢性細菌性角結膜炎であり,全世界で感染性の失明原因としてもっとも多い.トラコーマは医療サービスが行き届かない貧困地域で流行している.
尿道および子宮頸管感染は通常無症候性.
年齢25歳未満で性生活のある女性,およびそれより高齢でもリスクのある女性では毎年のスクリーニングが推奨される(
N Engl J Med 376: 765, 2017
).男性同性愛者でもスクリーニングが推奨される.
検査が陽性で,AZMまたはDOXYでの治療を受けた場合,3カ月以内に再度のスクリーニングが必要.
スクリーニングで陽性の場合,診断または発症前60日以内に性的に関係をもったすべての対象者の検査が推奨される.
母親から感染した新生児では新生児眼炎や肺炎が起こることがある.
分類/診断
分類
グラム陰性細胞内寄生菌
診断
C. trachomatis
血清型D~Kの診断は,初尿または感染部位のスワブの核酸増幅検査(NAAT)による.
NAATは培養より感度が高く,培養は直接蛍光抗体検査よりも感度が高い.
NAATを使用する場合,腟内スワブ(患者あるいは医師による採取)または子宮頸管スワブと感度・特異度は同等.
初尿を用いてもよいが,感度は若干低い.
NAATでは,異なる血清型(たとえば,D-KとL1-L3)を区別できず,PCRによる遺伝子型決定が必要となる.
第一選択
下記の項目を参照.
2021年CDC性感染症ガイドライン:
MMWR Recomm Rep 70(RR-4): 1, 2021
.DOXY 100mg1日2回・7日が好ましい処方.
ほとんどの場合,
AZM
および
DOXY
が同様に有効.直腸感染患者では
AZM
1回は有効性が低い(
Clin Infect Dis 69: 1946, 2019
;
Clin Infect Dis 73: 824, 2021
).
尿道炎,子宮頸管炎:
Chlamydia
結膜炎-新生児,新生児眼炎
肺炎-新生児,生後1カ月未満
結膜炎-トラコーマ
性病性リンパ肉芽腫症
咽頭炎
(頻度および重要性は不明)
第二選択
妊婦:
AMPC
は
C. trachomatis
感染の妊婦の治療に用いることができるが,ペニシリン系抗菌薬への曝露により,微生物が潜伏性(代謝的に不活性な)状態に誘導されることが報告されているため(
J Infect Dis 201: S88, 2010
),
AMPC
は第二選択と考えられる.
コメント
検査と治療の推奨については,CDC性感染症のガイドライン(2015)参照:
MMWR Recomm Rep 70(RR-4): 1, 2021
.
DOXYとフルオロキノロン系薬は妊婦には推奨されない.フルオロキノロン系薬は通常有効だが高価である.
治療の容易さ,およびコンプライアンスのため,AZMの1回処方が推奨されているが,最近のランダム化比較試験ではDOXY(7日)に対するAZMの非劣性は示されなかった(
N Engl J Med 373: 2512, 2015
).
性感染症での治癒確認検査は,妊婦以外にはルーチンに推奨されない.注:治療後2~3週は,増殖しない(nonviable)菌の存在によりNAATの陽性が続くことがある.
3~12カ月ごとに再感染をモニターするための再検査を行うこと.
耐性はまれだが,臨床的失敗の報告がある.DOXYよりもAZMで治療失敗が多いことを示唆する研究もある(
F1000Prime Rep 6: 120, 2014
).
Chlamydia
による直腸炎についてはDOXYの方が有効であることがメタアナリシス(
J Antimicrob Chemother 70: 1290, 2015
)および男性同性愛者を対象としたRCT(
Clin Infect Dis 73: 824, 2021
)で示されている.
LGVはより長期の治療が必要となる(3週).
セックスパートナーの治療が推奨される(Expedited partner therapy[EPT]:[編集部注]パートナーを直接診断せずに患者を通じてパートナーに薬剤をわたすというやり方:CDCのサイト(
性感染症-EPT
)を参照).
乳児や小児では,
Chlamydia
感染があれば性的虐待を疑うこと:ただし出生時に感染した
C. trachomatis
が2~3歳まで鼻咽頭内,尿生殖器,直腸に残留することもある:
MMWR Recomm Rep 70(RR-4): 1, 2021
.
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