日本語版サンフォード感染症治療ガイド-アップデート版

Fusobacterium necrophorum   (2023/09/19 更新)


臨床状況

個々の疾患/臨床状況へのリンク
  • F. necrophorum治療の基礎は,最近のわずかな表現型感受性検査と小規模臨床観察症例シリーズに基づく
  • 表現型in vitro感受性検査が行われないことがあるため,臨床反応がキーになる.
  • 耐性遺伝子を検出するための全ゲノム配列決定を行え,また行うのはごくわずかな施設である.
  • 初期の報告では20%の株でペニシリナーゼ産生が認められた;βラクタマーゼはAMPC/CVAのクラブラン酸およびPIPC/TAZのタゾバクタムで阻害される.
  • Fusobacteriumはすべてマクロライド系抗菌薬に耐性.
  • Fusobacteriumはすべてカルバペネム系薬に感受性.
  • F.necrophrumの一部の株はMNZにin vitroで耐性であるという報告がある

分類

  • グラム陰性桿菌,嫌気性菌

第一選択

  • 外科的ドレナージとデブリドマンが必要となることが多い.
  • MNZ 500mg静注/経口8時間ごと+CTRX 2g静注1日1回
  • PIPC/TAZ 3.375g30分以上かけて静注,その4時間後から3.375g4時間以上かけて静注を開始し8時間ごとに反復

第二選択

  • IPM/CS 500mg静注6時間ごと,またはMEPM 0.5~1g静注8時間ごと
  • CLDM 600~900mg静注8時間ごと

コメント

  • Fusobacterium属は口腔内,消化管,女性性器・尿路の常在菌叢の一部.
  • 歯周膿瘍や扁桃周囲膿瘍,および他の口腔・咽頭感染からの敗血症で検出される(他の口腔内細菌とともに検出されることが多い).
  • 菌血症や転移性膿瘍を伴う敗血症性頸動脈血栓(Lemmierre症候群)を引き起こすことが非常に多い(通常は扁桃周囲膿瘍の合併症として)(Lancet Infect Dis 12: 808, 2012).
  • アミノグリコシド系に耐性.
  • 咽頭炎,扁桃炎:F. necrophorumの感染はA群Streptococcusの2倍だったとする研究がある.臨床的にはStreptococcusによる咽頭炎と類似(Ann Intern Med 162: 241, 2015).
  • PCRで検出できるが,現在のところ市販のキットはない.
  • A群Streptococcus と同様に無症候の保菌者がいる.
  • βラクタム薬に対する重症IgE媒介アナフィラキシー患者の治療:MNZまたはCLDM;どちらの薬剤もin vitroでの耐性は非常にまれ(Anaerobe 80: 102717, 2023).
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2023/09/19