日本語版サンフォード感染症治療ガイド-アップデート版

放線菌症  (2023/05/09 更新)
腹部放線菌症,頚部/顔面放線菌症 骨盤内放線菌症 肺放線菌症


臨床状況

  • 腹部:腹部手術後に腫瘤(±瘻孔)として発症,たとえば虫垂破裂後の後期合併症.
  • 頸部/顔面:顎放線菌症.放線菌症として最も多い病態で,歯や顎部の外傷後に腫瘤および瘻孔として発症.
  • 骨盤内:卵管卵巣膿瘍.子宮内避妊器具(IUD)の合併症ではIUDを除去する.
  • 肺:慢性病変であり,腫瘤,広汎な肺浸潤がみられ,肺がん,結核,市中感染肺炎に似ることがある.

病原体

  • Actinomyces israelii(もっとも多い)
  • Actinomyces meyeri
  • Actinomyces turicensus
  • Actinomyces europaeus

第一選択

  • ABPC 200mg/kg/日静注3~4回に分割・2~6週
  • PCG 1000万~2000万単位/日静注4~6時間ごとに分割・4~6週,その後Penicillin VK 2~4g/日経口
  • AMPC 2g経口1日2回・6~12カ月(コメント参照)

第二選択

  • DOXY 100mg静注†1日2回・2~6週,その後経口6~12カ月
  • CTRX 2g静注1日1回・2~6週,その後経口処方の1つを6~12カ月
  • CLDM 600~900mg静注8時間ごと・2~6週,その後300mg経口1日3回・6~12カ月
  • AMPC 2g経口1日2回・6~12カ月

(†:日本にない剤形)

コメント

  • 経口治療に先立つ静注治療2~6週の推奨は,古典的なものであり経験的.先行する静注治療の期間を短く(たとえば3日)しても,または静注治療を行わなくても,特に重症度の低い例では奏効したとの症例報告がある(Chest 128: 2211, 2005).治療期間が3カ月より短くても,病変が小さい場合には奏効することがある.
  • 注:MNZは活性なし.
  • 他の菌の同時感染がみられたら,それらとActinomycesをカバーする処方を選択する.
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2023/05/08