日本語版サンフォード感染症治療ガイド-アップデート版

副鼻腔炎,鼻副鼻腔炎,慢性  (2024/04/23 更新)
慢性鼻副鼻腔炎,成人


臨床状況

  • 定義:成人の慢性鼻副鼻腔炎は,医学的管理にもかかわらず12週以上持続する副鼻腔および鼻腔の炎症性疾患であり,複雑で十分には解明されていない.
  • 発症機序は十分に解明されていない.関与する因子:アレルゲン,宿主の免疫不全,閉塞(鼻腔ポリープを伴うことも伴わないこともある),まれに感染
  • 症状:前部または後部副鼻腔からの粘液膿性の排膿,鼻閉感(ポリープまたは粘膜浮腫による),顔面痛,嗅覚の低下.内視鏡またはCTによる副鼻腔の粘膜浮腫の直接的なエビデンスがある.
  • 包括的なアップデート鼻副鼻腔炎と鼻ポリープに関する欧州のポジションペーパー 2020(Rhinology 58: 1, 2020).
  • 以下のガイダンスでは,治療における抗菌薬の役割のみに焦点をあてる.治療の他の側面については上記の一般的文献を参照のこと.
  • ポリープ
  • 副鼻腔洗浄
  • グルココルチコイド
  • ロイコトリエン
  • 抗菌薬が有用な場合
  • 慢性副鼻腔炎の急性細菌性増悪(ABECRS)
  • 上歯根尖周囲膿瘍から上顎洞への接触性伝播(上顎洞炎の10~12%)

診断/病原体

診断
  • 慢性鼻副鼻腔炎急性増悪(ABECRS)の治療のために:
  • 経験的治療を行うとともに,あるいはそれに先立って,その後の特異的治療の参考とするため直接鼻腔培養を行う.
  • S. aureusに対しては鼻腔スワブPCRを行ってもよい.
病原体
  • 好気性菌と嫌気性菌の混合
  • ABECRS患者の直接鼻腔培養から一般に検出される病原菌

第一選択

  • 通常は経口治療で十分
  • 経験的治療としてAMPC/CVA 875mg経口1日2回
  • PCRによりMRSAが検出されたら:AMPC/CVAを継続しDOXY 100mg経口1日2回を追加してもよい
  • DOXYを使用する場合には,患者に重症光線過敏症のリスクについて注意を与えておくこと.
  • 数年前に,DOXYの細胞壁郷税阻害作用がβラクタム薬の標的である細胞壁の合成を低下させるのではないかという理論的な関心がもたれたが,臨床との関連性については論議がある.
  • その他の可能な特異的処方は,培養結果に基づく.
  • 免疫不全があり,P. aeruginosaの懸念があれば:LVFX 750mg経口1日1回+MNZ 500mg経口1日3回
  • 治療期間は通常7~10日だが,臨床反応をみて調整する.指針となる臨床試験はない.

第二選択

  • 経験的治療としてMFLX 400mg経口1日1回
  • MRSAが検出された場合:ST 800/160mg経口1日2回+MNZ 500mg経口1日3回による特異的治療を行う
  • MRSAが検出されなかった場合:
  • 経口セファロスポリン系薬(CFDNCXM-AXCPDX-PR)+MNZ 500mg経口1日3回による経験的治療を行うことができる.

コメント

  • 免疫不全(好中球減少症,糖尿病[ケトアシドーシス],HIV).病因:P. aeruginosa,真菌(ムコール),その他.
  • 局所治療は有用性がない
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2024/04/22