日本語版サンフォード感染症治療ガイド-アップデート版

化膿性(敗血症性)血栓性頸静脈炎またはLemierre症候群  (2023/11/21 更新)
内頸静脈血栓性静脈炎,後発性敗血症,壊死桿菌症


臨床状況

  • 内頸静脈の化膿性血栓性静脈炎は一般にLemierreまたはLemierre症候群と呼ばれる.
  • 健康な成人の咽頭感染(ウイルスまたは細菌による)の間,またはその後に症状が発現する
  • 血液培養でFusobacterium necrophorum陽性となる
  • 化膿性肺塞栓および/または他の部位への血行性播種,たとえば,化膿性関節炎,骨髄炎,肝膿瘍,脳膿瘍を合併することがある
  • 他のまれな病原細菌を下にあげた

病原体

第一選択

  • F. necrophorumを想定して経験的治療を行う:分離された菌に基づいた特異的治療を組み立てる
  • 治療は外科的ドレナージ/デブリドマンと抗菌薬治療の組み合わせ
  • F. necrophorumは,ペニシリナーゼを産生するため,PCGに耐性
  • 推奨される経験的治療
  • MNZ 500mg静注/経口8時間ごと+CTRX 2g静注1日1回
  • PIPC/TAZ 4.5g4時間以上かけて静注8時間ごと
  • IPM/CS 500mg静注6時間ごと,または他のカルバペネム系薬
  • 培養結果により,より標的をしぼった治療が可能になる.注:F. necrophorumのin vitro感受性検査はルーチンにはできない.
  • 化膿が内頸静脈ライン感染によるもので咽頭炎の合併がなければ,MRSAの治療のためVCM 15~20mg/kg静注8~12時間ごと(目標AUC24 400~600μg・h/mL達成が望ましいが[AUC-用量設定の原理と計算を参照],そうでなければトラフ値15~20μg/mLをめざす)

第二選択

  • CLDM 600~900mg静注8時間ごとは F. necrophorumに活性あり

抗微生物薬適正使用

  • 場所および/または壊死により,多くの場合3~6週間の治療を要する.Fusobacteriumが耐性のため,マクロライド系薬およびフルオロキノロン系薬は避ける.

コメント

  • Fusobacteriumはβラクタマーゼ産生のため,PIPC/TAZが推奨される
  • 抗菌薬処方は口腔レンサ球菌に対する活性も含まなければならない.
  • その他の文献
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2023/11/20