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日本語版サンフォード感染症治療ガイド-アップデート版
脳膿瘍-細菌性
(
2025/10/21 更新
)
脳膿瘍,原発性または隣接する感染巣からの病変
臨床状況
細菌性脳膿瘍の経験的治療のための推奨.
膿瘍が小さいか脳の生命維持に関わる部分での場合以外は,外科的ドレナージが推奨される(コメント参照).
発熱(ただし50%以内),頭痛,精神状態の変化,神経学的巣症状または症候,けいれん.
隣接する嫌気性部位の感染が存在することがある,たとえば歯性膿瘍,副鼻腔炎,乳様突起炎.
遠隔部位からの菌血症による播種.
S. anginosis
グループはとくに膿瘍を作りやすい.
総説:
N Engl J Med 371: 447, 2014
.
病原体
Streptococcus
属(60~70%)
Bacteroides
属(20~40%)
腸内細菌科(25~33%)
S. aureus
(10~15%)(通常,外傷後,脳神経手術後あるいは菌血症患者).
S. anginosis
グループ(旧名
S. milleri
).文献(
Clin Infect Dis 78: 544, 2024
)
Nocardia
属菌(免疫不全患者)
Listeria monocytogenes
第一選択
(
CTRX
2g静注12時間ごと,または
CTX
2g静注4時間ごと,または
CFPM
2g静注8時間ごと)+(
MNZ
500mg静注6~8時間ごと)
S. aureus
が疑われる場合(たとえば外傷後,脳神経手術後,血行性拡大の疑い,MRSAリスク因子)は,MRSAをカバーするために
VCM
15~20mg/kg静注8~12時間ごと
(目標AUC
24
400~600
μ
g・h/mL達成が望ましいが[
AUC-用量設定の原理と計算
を参照],そうでなければトラフ値15~20
μ
g/mLをめざす)
を,培養結果が得られるまで追加.
第二選択
MEPM
2g静注8時間ごと
S. aureus
の可能性がある場合には,
VCM
上記と同様,または
LZD
600mg静注/経口12時間ごとを処方に追加する.
MRSA対処のためにVCMを
LZD
600mg経口/静注12時間ごとに替えてもよい.
治療期間/抗微生物薬適正使用
治療期間
治療期間は通常6~8週.脳炎のみ,または排膿された膿瘍の場合はより短期に,排膿されていないまたは被包性の膿瘍,多発性または小房性膿瘍,免疫不全患者の膿瘍ではより長期に治療する.
抗微生物薬適正使用
可能ならば,血液または膿瘍の好気性,嫌気性培養で分離された病原体の抗菌薬感受性検査結果に基づき,de-escalationを行い,個々の患者に応じた処方とすること.
隣接する感染巣(たとえば,口腔内,歯原性,副鼻腔,乳様突起)からの感染で,膿瘍の培養が行われていない,あるいは抗菌薬治療が先行して行われていたため培養結果の信頼性が低いと考えられる場合には,嫌気性菌をカバーした経験的治療を継続する.
コメント
可能なかぎり培養を行う.理想的には,患者が安定していて数時間以内に処置が可能な場合には,抗菌薬治療を開始する前に行うこと.
CTで脳炎が示唆される,あるいは膿瘍が<2.5cmで患者が神経学的に安定かつ意識がある場合は,原因菌が血液その他の培養によって同定されれば手術なしの薬物治療が奏効することがある.そのような場合は抗菌薬治療を開始し観察する.そうでなければ,原因菌同定や治療(膿瘍が大きい場合)のために吸引が必要であろう.
経口治療の役割は明確になっておらず,現在進行中のランダム化試験の主題になっている(
ClinicalTraials.gov NCT04140903
)
脳膿瘍はまれにLemierre症候群の合併症として起こることがある(
Lancet Infect Dis 12: 808, 2012
).
移植患者には,VRCZおよびSTを追加する.
臨床状況に応じて,中枢神経系結核やトキソプラスマ症(たとえば,免疫不全患者,AIDS患者),アメーバ性肉芽腫性脳炎などを考慮する.
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2025/10/20