日本語版サンフォード感染症治療ガイド-アップデート版

淋菌性咽頭炎  (2022/10/4 更新)
淋菌性咽頭炎の治療


臨床状況

  • 咽頭以外の部位(例えば尿道,子宮頸管,直腸)にN.gonorrhoeae感染がある患者では,咽頭検体の核酸増幅検査(NAAT)が推奨される.
  • 通常は無症候性.

病原体/診断

診断
  • NAATは,口腔や咽頭内の他のNeisseria属のため偽陽性になることがあるが,CDCは現在でもNAATを診断検査の選択肢としている.
  • N. gonorrhoeae培養がもっとも信頼できるが,NAATはスクリーニング検査として利用できる.
  • N. gonorrhoeaeによる咽頭炎(または直腸炎)が疑われる場合には,尿のNAATは用いないこと.それぞれの部位に特異的な検査が必要.
病原体

第一選択

  • CTRX 500mg筋注††1回
  • 欧州のガイドライン:CTRX 1g筋注+AZM 2g経口(コメント参照)
  • 咽頭からのN. gonorrhoeae除菌は難しいため,治療14日後に咽頭NAATによる治癒確認(test of cure)を繰り返すことが推奨される.

(††:米国では処方される)

第二選択

  • 咽頭感染は治療が非常に困難.CTRXにアレルギーなら,反応を徹底的に調べること.
  • 重大なアレルギー反応(たとえば,Stevnes-Johnson)がある場合には,至適処方を決定するために専門医へのコンサルトを行うこと.
  • 第二選択処方を用いた場合には,治癒確認(test of cure)を行う必要がある.

抗微生物薬適正使用

  • 抗菌薬耐性出現は現在進行中の問題であり,CTRXに対する耐性や,AZMに対する高度耐性が報告されている(Nat Rev Urol 14: 139, 2017).
  • 耐性のため,フルオロキノロン系薬は使用しないこと.

コメント

  • 2020年改訂のCDC淋疾治療ガイドライン(MMWR Morb Mortal Wkly Rep 69: 1911, 2020),および2021年のCDC性感染症ガイドライン(MMWR Recomm Rep 70: 1, 2021)では,淋疾およびC. Trachomatisに対するルーチンの併用治療を推奨していない.治療はNAAT結果に基づいて行うこと.
  • 欧州の淋疾治療ガイドライン(IUSTI 2020)は,重複感染の治療,高用量CTRX 1g+AZM 2gおよび治癒確認を全例で推奨している.
  • 咽頭炎では,SPCM,CFIX,CPDX-PR,CXM-AXは無効.
  • 超多剤耐性菌に対しては,少数例でErtapenem 1g筋注・3日が使用されている(IUSTI 2020).
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2022/09/29