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日本語版サンフォード感染症治療ガイド-アップデート版
Neisseria gonorrhoeae
(
2023/03/14 更新
)
臨床状況
性感染症
尿道,子宮頸部,血液,咽頭,関節液の培養,あるいは尿,尿道または子宮頸部分泌物の核酸増幅検査(NAAT)による病原体の分離.
グルコース分解能はあるがマルトース分解能がないことで
N. meningitidis
と区別される.
淋疾-概説
からの各項目も参照.2020年のCDCガイドライン(
MMWR 69: 1911, 2020
)または2021年のCDC性感染症ガイドライン(
MMWR Recomm Rep 70: 1, 2021
),ヨーロッパのガイドライン(
Int J STD & AIDS 2020
)参照.
フルオロキノロン系薬は推奨されない.経口セファロスポリン系薬は一般に効果が低い.
耐性が増加している
:2015年のCDCの推奨は有効な薬剤2剤(CTRX+AZM)であったが,AZM耐性が増加したのに対し,CTRX耐性パターンは変化していないことから,2020年の推奨ではCTRX 500mg筋注††に改訂された.
2018年の
CDC 性感染症サーベイランス報告
を参照
(††:米国では処方される)
分類
グラム陰性双球菌
第一選択
N. gonorrhoeae
による尿道,子宮頸部,直腸,咽頭の感染:
CTRX
500mg筋注††1回
体重≧150kg(300Ib)なら
CTRX
1g筋注††1回
ヨーロッパでは:
CTRX
1g筋注††1回+
AZM
2g経口
播種性感染,結膜感染,心内膜炎に対しては高用量
CTRX
(1g)が推奨されている
Chlamydia
感染が除外できない,または
C. trachomatis
重複感染の場合には,
DOXY
100mg経口1日2回・7日の経験的治療が推奨される
(††:米国では処方される)
第二選択
N. gonorrhoeae
による合併症のない尿道炎,子宮頸管炎,直腸感染(以下のそれぞれの処方については,治療1週後に治癒の検査が推奨される):
AZM
2g経口1回+
GM
240mg筋注1回
CTRX筋注が使えない場合は
CFIX
800mg経口,ただし,この処方は咽頭感染に対しては効果が低い
注:AZM 2g経口1回処方,SPCM 2g筋注1回は,現在では推奨されない
Chlamydia
感染が除外できない場合には,
DOXY
100mg経口1日2回・7日の経験的治療が推奨される
可能ならば,性的パートナーにも
CFIX
800mg経口±
DOXY
100mg経口1日2回・7日の治療を行う
ヨーロッパでの推奨(
Int J STD & AIDS 2020
)
第一選択:
CTRX
1g筋注††1回+
AZM
2g経口1回
第二選択:
CTRX
1g筋注††1回(NAATで
Chlamydia
が除外できなければ,
DOXY
100mg1日2回・7日が推奨される)
SPCM
2g筋注1回+
AZM
2g経口1回
治療失敗:
CTRX
1g筋注††1回+
AZM
2g経口1回
GM
240mg筋注1回+
AZM
2g経口1回
重症セファロスポリンアレルギー患者で推奨される代替処方
AZM
2g経口1回+
GM
240mg筋注1回
AZM
2g経口1回+
Gemifloxacin
320mg1回
(††:米国では処方される)
抗微生物薬適正使用
耐性
N. gonorrhoeae
の増加は不可避である(
Clin Infect Dis 67: 1294, 2018
).
多剤耐性が増加しており,CTRXとAZMのどちらにも耐性の菌が報告されている.CTRX耐性かつAZM高度耐性の多剤耐性の例で,Ertapenemが奏効したという英国からの報告がある(
Euro Surveill 23: 1800323, 2018
).
耐性の選択と拡大を抑制するために,国内および海外のガイドラインが策定されている(
Nat Rev Urol 14: 139, 2017
).
淋疾に対する併用治療は1985年以来推奨されてきたが,マクロライドの微生物叢に対する影響が大きく,他のマクロライドに対する耐性菌が出現してきたことから,2020年の米国の推奨ではAZMとCTRXの併用は推奨されていない(
MMWR 69: 1911, 2020
).
コメント
高用量 AZM(2g)は,消化器副作用が多く,高価で,耐性病原菌増大の懸念がある.
高リスク患者(たとえば,男性同性愛者[MSM])では多くの部位の検査を行うこと(直腸,尿道,咽頭).
SPCMは米国外で入手可能.咽頭感染には有効でない.
咽頭感染は通常無症候であり,除菌が難しい.
N. gonorrhoeae
咽頭感染に経口セファロスポリンを使用しないこと.
治癒確認検査は尿生殖器感染や直腸感染では必要ないが,咽頭感染では推奨される.
CTRXが入手できない場合,米国のガイドラインはCFIX 800mg経口1回を推奨しているが,ヨーロッパのガイドラインではCFIX 400mg経口1回+AZMを推奨し,治療1週後に治癒確認検査(NAATまたは培養)を行う必要があるとしている.
注:2020年米国CDCガイドライン(
MMWR 69: 1911, 2020
)と2020年ヨーロッパのガイドライン(
Int J STD & AIDS 2020
)は,ほぼ同様だが完全に一致しているわけではない.
ヨーロッパのガイドラインは治癒確認を推奨しているが米国ガイドラインは推奨していない(淋菌性咽頭炎を例外として).
ヨーロッパのガイドラインは,依然として
Chlamydia
に対するCTRX+AZM 2g1回(またはDOXY)を推奨.
ヨーロッパのガイドラインはCTRX 1g筋注を推奨.
2020/2021年改定CDCガイドラインに寄与したエビデンスのサマリー:
Clin Inf Dis 74: S95, 2022
.
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2023/03/13