日本語版サンフォード感染症治療ガイド-アップデート版

骨髄炎-脊椎インプラント  (2024/07/02 更新)
骨髄炎,脊椎インプラント


臨床状況

  • 脊椎インプラント関連の骨髄炎
  • 早期発症:インプラント埋め込みから30日以内
  • 晩期発症:インプラント埋め込み後>30日
  • S. aureusおよびコアグラーゼ陰性Staphylococcusによる感染が多い.

病原体

  • 早期発症でもっとも多くみられる病原体
  • 晩期発症でもっとも多くみられる病原体

第一選択

  • 早期発症:培養し,感受性試験結果に基づいて治療(デブリドマン,ハードウェア温存および下記のように3ヵ月コースの治療で成功率は約90%).
  • 晩期発症,デブリドマンしハードウェアを除去する場合:下記と同じ薬剤を用いる.ハードウエア除去後は計6~8週治療する.安定のために体外の支持具が必要となる場合もある.
  • 晩期発症,ハードウェアを温存する場合:下記と同じ薬剤を用い,骨が融合してハードウェアが除去できるようになるまで経口の抑制治療を続けることを考慮.
MSSA/MSSE
[(Nafcillin 2g静注4時間ごとまたはOxacillin 2g静注4時間ごと)+RFP 300mg経口1日2回]または(CEZ 2g静注8時間ごと+RFP 300mg経口1日2回)・2週,その後[(CPFX 750mg経口1日2回またはLVFX 750mg経口24時間ごと)+RFP 300mg経口1日2回]・10週.

分離株がフルオロキノロン系とRFPにin vitroで感受性があることを確認(コメント参照)
MRSA/MRSE
VCM 15~20mg/kg静注8~12時間ごと(目標AUC24 400~600μg・h/mL達成が望ましいが[AUC-用量設定の原理と計算を参照],そうでなければトラフ値15~20μg/mLをめざす)+RFP 300mg経口1日2回)・2週,その後[(CPFX 750mg経口1日2回またはLVFX 750mg経口24時間ごと)+RFP 300mg経口1日2回]・10週.

分離株がフルオロキノロン系とRFPにin vitroで感受性があることを確認(コメント参照)
Streptococcus属(A,B,C,D群,viridansその他)
PCG 2000万単位持続静注24時間ごとまたは6回に分割,またはCTRX 2g静注24時間ごと・2週,その後AMPC 2g経口1日2回・10週
Enterococcus
ペニシリン感受性:ABPC 12g静注,またはPCG 2000万単位持続静注24時間ごとまたは6回に分割・2週,その後AMPC 2g経口1日2回・10週
Propionibacterium acnes
PCG 2000万単位持続静注または6回に分割,またはCTRX 2g静注24時間ごと,その後AMPC 2g経口1日2回・10週
グラム陰性腸内桿菌
Ertapenem 1g静注24時間ごと,または他のβラクタム薬(たとえばCTRX 2g静注24時間ごとまたはCFPM 2g静注12時間ごと,感受性に基づいて)・2週,その後CPFX 750mg経口1日2回またはLVFX 750mg経口24時間ごと・10週
P. aeruginosa(コメント参照)
CFPM 2g静注12時間ごとまたはMEPM 1g静注8時間ごと)+TOB 5.1mg/kg静注1日1回・2週,その後CPFX 750mg経口1日2回またはLVFX 750mg経口24時間ごと・10週

第二選択

  • 抗菌薬感受性検査の結果に基づく.
  • in vitro活性に基づいて,経口での生物学的利用能が良好な経口薬を第二選択として選ぶ.

抗微生物薬適正使用

  • 経験的治療は避ける:抗菌薬治療の開始前に培養結果を得ること.

コメント

  • P. acnesを確実に検出するためには,ブラインドサブカルチャーを含め14日まで培養が必要となることもある.
  • 抑制治療後にハードウェアを除去する場合,術中培養を適切に得るため,手術の少なくとも2週間前に抗菌薬を中断する必要がある.術中培養が陽性の場合,6~8週再治療を行う.
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2024/07/01