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日本語版サンフォード感染症治療ガイド-アップデート版
骨髄炎-血行性
(
2025/01/14 更新
)
血行性骨髄炎,経験的治療
臨床状況
血行性骨髄炎に対する経験的治療.患者の年齢に応じて適切な抗菌薬を選択する.培養結果に従って速やかに特異的治療に切り替える.
小児では長管骨の骨髄炎が多い.成人では化膿性脊椎炎が病変部位として最も多い.他の骨が罹患することは少ない.
血液から病原体が検出される可能性がなければ,骨培養が重要.
重症またはMRIで膿瘍が認められる小児患者では感染源コントロールが重要
患者に臨床的症状がなく,診断検査が予定されている場合には,抗菌薬治療を検査後にまで延期してもよい.
化膿性脊椎炎
も参照.
病原体
新生児~4カ月未満:
S. aureus
,
B群Streptococcus
,腸内グラム陰性桿菌.
4カ月~成人:
S. aureus
,
A群Streptococcus
.腸内グラム陰性桿菌はまれ.
発展途上国や鎌状赤血球症患者では
Salmonella属
が考えられる
小児<4歳では
Kingella kingae
による感染が増加している.
第一選択
経験的処方:培養結果が得られたら,すぐに特異的治療に切り替えること
VCM
+(
CTX
または
CTRX
または
CAZ
または
CFPM
).
小児:
Salmonella
の疑いがないなら,
VCM
または
CEZ
.MRSAを想定した経験的治療は,施設で検出される病原菌に従って行う.
原因菌が特定された場合の特異的治療の期間
化膿性脊椎炎では6週(IDSA治療ガイドライン:
Clin Infect Dis 61: e26, 2015
),ただし,次の場合は8週以上:末期の腎障害,MRSA感染,排膿されていない脊椎傍膿瘍や腰筋膿瘍(いずれも再発のリスク因子:
Clin Infect Dis 62: 1262, 2016
),あるいは植込み型デバイスが予定されている患者(
Clin Infect Dis 60: 1330, 2015
).
低リスク患者では,6週と12週で予後は同等(
Lancet 385: 875, 2015
および
Clin Infect Dis 62: 1262, 2016
参照) .
小児では4~6週で十分であり,早期に高用量経口治療に切り替えても効果は同等と考えられる(
JAMA Pediatr 169: 120, 2015
;
Orthop Clin North Am 48: 199, 2017
).
合併症のないMSSAによる血行性骨髄炎で早期に治療に反応した場合には3~4週で十分である(
J Pediatric Infect Dis Soc 10: 801, 2021
).
第二選択
重度のアレルギーまたは毒性がある場合:
VCMの代わりに,
LZD
▼
または
CLDM
(十分な感受性がある地域なら)または
DAP
▼
.
第3世代セファロスポリンの代わりに,
CPFX
または
LVFX
(どちらも小児では避ける)または
AZT
(ほとんどのβラクタム薬アレルギーの患者で).
地域によっては,主要なグラム陰性桿菌において広域スペクトラムセファロスポリンやフルオロキノロンに対する耐性率が高いため,それらの菌をカバーする経験的処方としてカルバペネム系が必要となることがある.
(▼:FDA未承認)
抗微生物薬適正使用
培養と感受性検査結果に基づいてde-escalationを行い,個々の患者に応じた治療を行う.
患者が安定したら,活性があり生物学的利用能の高い薬剤での経口治療に切り替え可能(
N Engl J Med 380: 425, 2019
;
J Pediatric Infect Dis Soc 10: 801, 2021
).
コメント
グラム陽性菌に対する活性がある新薬の骨組織への移行に関する総説:
J Clin Pharm Ther 38: 89, 2013
.
治療に対する反応を評価するためにCRPの変化に注目することをガイドラインは推奨している.
第一選択薬の中では,CTXやCTRXは
P. aeruginosa
の可能性が少ないと考えられるときにのみ使用する.
細菌培養が陰性なら,病原として
M. tuberculosis
または真菌を疑う.
小児における急性血行性骨髄炎ガイドライン改訂版:
J Pediatric Infect Dis Soc 10: 801, 2021
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2025/01/14