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日本語版サンフォード感染症治療ガイド-アップデート版
骨髄炎-化膿性脊椎炎
(
2026/05/19 更新
)
化膿性脊椎炎,硬膜下膿瘍,椎間板炎,円板炎
臨床状況
成人における血行性骨髄炎で最も多くみられる.
S. aureus
菌血症の合併症であり,また心内膜炎を合併することがある.
他の原因菌による菌血症に合併することもある:たとえば,尿路感染症からの
E. coli
菌血症.
腰背部痛(85~90%)と発熱(35~60%)が主な症状.患者は典型的に,脊椎後部打診による局所的な痛みを訴える.
MRI(最良の画像診断法)または椎骨CT+血液培養陽性(約50%)または生検標本(約80%陽性).
腰椎(約60%)>胸椎(約30%)>頸椎(約10%)
最も懸念されるのは,感染が硬膜外腔にまで進展し(症例の15~20%),対麻痺や四肢麻痺の原因となる脊髄圧迫のリスクが高まることである.
感覚障害,脱力感,神経根障害その他の神経学的障害の所見が症例の1/3にみられ,硬膜下膿瘍が示唆される.
重度の腰背部痛,神経根痛,および/または刺痛,麻痺,感覚欠損,失禁,局所運動失調などがあれば硬膜外膿瘍が疑われる.
病原体/診断
病原体
S. aureus
(~50%の患者での原因菌)
Streptococcus属
(A群,B群,viridansグループ)
好気性グラム陰性桿菌
M. tuberculosis
Brucella属
Candida属
診断
血行性骨髄炎は,通常単一菌感染である.隣接する感染巣,外傷,手術後に関連した可能性脊髄炎は複数菌のことがある.
安定した患者では,経験的治療を開始する前に診断のための培養を行う.
血液培養が陽性になるのは約60%である(
Eur J Clin Microbiol Infect Dis 39: 2065, 2020
;
N Engl J Med 362: 1022, 2010
).
S. aureus
,
S. lugdunensis
,Brucella属が陽性(あるいは流行地域からの患者で血清検査陽性)ならば,診断を確定するに十分であり,これ以上の診断作業は必要ない.
それ以外の細菌が血液培養で検出された場合は,CTガイド下の吸引あるいは組織生検が推奨される(
Clin Infect Dis 2024年5月5日
).
血液培養が陰性または複数菌感染の可能性がある場合には,CTガイド下の吸引あるいは組織生検が推奨される.
CTガイド下の吸引または外科的生検で診断がつく割合は血液培養よりも高く,それぞれ約70%,80%である.
ターゲット型またはメタゲノム型の次世代シーケンシングは,従来の培養法よりも優れた微生物検出感度を有する.
ある研究(
Sci Rep 15: 20926, 2025
)によると,mNGSの推定プール感度は0.81(95%信頼区間0.74~0.87),プール特異度は0.75(95%信頼区間0.48~0.91)であったのに対し,組織培養ではそれぞれ0.34(95%信頼区間0.27~0.43),0.93(95%信頼区間0.79-0.98)であった.
これらの方法は特に,増殖が遅い,または分離培養が困難な微生物の同定に有用であり,従来の培養とは異なり,抗菌薬曝露が先行してもその影響を受けにくい.まだ第一選択とはいえないが,培養陰性で感染の疑いが強い症例では分子診断検査を検討すべきである.
第一選択
グラム陽性菌と陰性菌の両方をカバーするための経験的治療:
VCM
15~20mg/kg静注8~12時間ごと(目標AUC
24
400~600μg・h/mL達成が望ましいが[
AUC-用量設定の原理と計算
を参照],そうでなければトラフ値15~20μg/mLをめざす)+(
CPFX
400mg静注12時間ごとまたは750mg経口12時間ごと,または
LVFX
750mg経口/静注24時間ごと,または
CTRX
2g静注24時間ごと,または
CFPM
2g静注8時間ごと)
第二選択
MRSAをカバーするためには
LZD
600mg経口/静注,または
DAP
10mg/kg
CTRXまたはCFPMに代えて
PIPC/TAZ
4.5g静注(4時間以上掛けて)8時間ごと
重症βラクタムアレルギー患者でグラム陰性菌をカバーするためには,
CPFX
400mg静注12時間ごと,または750mg経口12時間ごと,または
LVFX
750mg経口/静注24時間ごと,または
AZT
2g静注6時間ごと
経口治療:
N Engl J Med 380: 425, 2019
;
Antibiotics (Basel) 13: 4, 2023
を参照
治療期間/抗微生物薬正使用
治療期間
次の場合には,特定された病原体に対する特異的治療を8週以上行う:末期の腎障害,MRSA感染,排膿されていない傍脊椎膿瘍や腰筋膿瘍(いずれも再発のリスク因子:
Clin Infect Dis 62: 1262, 2016
),あるいは植込み型デバイスが予定されている患者(
Clin Infect Dis 60: 1330, 2015
).
低リスク患者では,6週と12週で予後は同等(
Lancet 385: 875, 2015
および
Clin Infect Dis 62: 1262, 2016
参照) .
抗微生物薬適正使用
培養および感受性検査または他の微生物学的検査の結果に基づき,特異的治療のための処方調整,適切なde-escalationを行う.
コメント
IDSA治療ガイドライン:
Clin Infect Dis 61: e26, 2015
.
グラム陽性菌に対し活性を有する薬物の浸透性:
J Clin Pharm Ther 38: 89, 2013
.
神経学的所見や脊髄圧迫の徴候のある硬膜下膿瘍,椎骨ハードウエア感染に対しては,外科的デブリドマンおよび減圧術:頸椎の場合は,手術閾値を下げる.
固定化のための器具の埋め込みが実質的に治療失敗率や再発を増加させることはないが(
Clin Infect Dis 60: 1330, 2015
;
N Am Spine Soc J 2021年10月8日
),8週以上の抗菌薬治療が推奨される(
Clin Infect Dis 60: 1330, 2015
).
傍椎骨膿瘍に対しては,可能ならばCTガイド下あるいは外科的ドレナージ.
最初の経皮的生検が陰性でも,約40%の症例で2回目の生検は陽性となる(
Eur J Clin Microbiol Infect Dis 33: 371, 2014
).
MRIによるフォローアップは軟部組織所見を評価するには有用だが,骨の変化を評価することはできない(
AJNR Am J Neuroradiol 28: 693, 2007
).
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2026/05/18