日本語版サンフォード感染症治療ガイド-アップデート版

Brucella   (2023/11/21 更新)


臨床状況/診断

臨床状況
  • ヒトのブルセラ症のほとんどは,Brucella melitensisおよびB. abortusの2種によるもの.ブルセラ症はマルタ熱,地中海熱,波状熱とも呼ばれることがある.
  • 人獣共通感染
  • 羊,山羊,牛,その他の哺乳類(たとえばラクダ)が保有宿主.
  • 感染は,低温殺菌されていない乳製品の摂取,感染した動物/動物組織,血/分泌物への直接の接触によって起こる.
  • ブルセラ症は非特異的な発熱症候群として発症することもあり,また骨/関節感染や他の部位の局所感染(たとえば,生殖器泌尿器),まれには心内膜炎に伴うこともある.
  • 臨床症状
  • 多彩な症状:熱性疾患,骨関節病変(20~30%,特に仙腸骨炎),まれに髄膜炎または心内膜炎.
  • 身体のどの組織にも感染する.
  • 発熱は90%
  • 悪臭を伴う発汗があれば,だいたいはこの疾患だが,まれである.
  • 治療後の再発率は10%.
  • 臨床検査所見:軽症肝炎,白血球減少および相対的なリンパ球増加.
  • 一般的な治療方針
  • 再発リスクを軽減するために併用治療が好ましい.
  • 長期治療が必要となることが多い.
   
診断
  • 血清学的検査,骨髄培養,リアルタイムPCRまたは利用可能であれば16S RNA遺伝子診断.
  • 検査施設にブルセラ症の可能性を伝え,職業的曝露のリスクを低下させる.
  • 血清学検査は,発展途上国では依然として有用である.
  • 迅速血清学検査での陽性はすべて,特異的凝集反応によるBrucella属の確認が必要となる.
  • プロゾーン現象によって偽陰性となることがある.
  • 利用可能で正規のものであれば,NAAT(PCR)および16S rRNA遺伝子診断が感度・特異度とももっとも高い.

分類

  • 小形グラム陰性好気性球桿菌,増殖は遅い
  • Brucella melitensis
  • Brucella abortus
  • Brucella suis
  • Brucella canis
  • その他のBrucella属でも疾患を引き起こすことがある.

第一選択

  • 成人および年齢>8歳の小児の非局所性疾患
  • DOXY 100mg経口1日2回・6週+GM 5mg/kg静注1日1回・7日
  • DOXY 100mg経口1日2回・6週+RFP 600~900mg経口1日1回・6週
  • 年齢<8歳の小児の非局所性疾患
  • ST 5mg/kg(トリメトプリム成分)経口12時間ごと・6週)+RFP 15~20mg/kg(最大900mg/日)経口1~2回に分轄
  • 脊椎炎/仙腸骨炎/関節炎
成人:
  • DOXY 100mg経口1日2回最低12週+RFP 600~900mg経口1日1回最低12週+GM 5mg/kg筋注/静注1日1回・最初の7~14日
  • CLDM 750mg経口1日2回+RFP 600~900mg経口1日1回:どちらも最低3ヵ月
小児,年齢≧8歳:
  • DOXY 4.4mg/kg/日(最大200mg/日)2回に分轄・12週以上+RFP 15~20mg/kg/日(最大900mg/日)経口1日1回・最低12週+GM 5mg/kg静注/筋注1日1回・最初の7~14日
小児,年齢<8歳:
  • ST 10mg/kg/日(トリメトプリム成分)(最大320mg/日),スルファメトキサゾール50mg/kg/日(最大1.6mg/日)2回に分轄・12週以上+RFP 15~20mg/kg/日(最大900mg/日)経口1日1回・12週以上+GM 5mg/kg静注/筋注1日1回・最初の7~14日,
  • 妊婦(妊娠<36週):
  • ST 5mg/kg(トリメトプリム成分)経口1日2回+RFP 600~900mg経口24時間ごと)・4週
  • 妊娠≧36週なら,出産までRFP単独治療
  • 神経ブルセラ症:
  • DOXY 100mg静注†/経口1日2回+RFP 600~900mg経口1日1回+CTRX 2g静注12時間ごと.脳脊髄液が正常になるまで続ける.
  • 心内膜炎:
  • ほとんどの場合手術が必要,それに加えて抗菌薬治療を行う.GM 5mg/kg静注1日1回+RFPDOXYSTを併用・6週~6ヵ月
  • 検査施設での曝露後の曝露後予防.データが乏しく,処方は忍容性の低いことが多い:
  • DOXY 100mg経口1日2回+RFP 600mng経口1日1回・3週
  • B. abortus株RB51(RFPに耐性):DOXY単独・3週
  • DOXYに不耐あるいは妊婦の場合は,ST-DS経口1日2回±RFP 600mg経口1日1回・3週

(†:日本にない剤形)

第二選択

  • 非局所性疾患であり,かつGMを避ける必要のある場合:CPFX 500mg経口1日2回+(DOXYまたはRFP)・6週

コメント

  • 【米国の事情】被曝露者の抗体検査は州の検査施設またはCDCを通じて2,4,6,24週に行う.注:B. abortus株RB51の抗体反応は乏しい.
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2023/11/20