日本語版サンフォード感染症治療ガイド-アップデート版

Brucella   (2025/10/28 更新)


臨床状況/診断

臨床状況
  • ヒトのブルセラ症のほとんどは,Brucella melitensisおよびB. abortusの2種によるもの.ブルセラ症はマルタ熱,地中海熱,波状熱とも呼ばれることがある.
  • 人獣共通感染
  • 羊,山羊,牛,その他の哺乳類(たとえばラクダ,ブタ,イヌ)が保有宿主.
  • 感染は,低温殺菌されていない乳製品(ソフトチーズを含む)の摂取,感染した動物/動物組織,血/分泌物への直接の接触によって起こる.
  • ブルセラ症は非特異的な発熱症候群として発症し,しばしば潜行性発症,寝汗,疲労,食欲不振を伴うことがあり,また骨/関節感染や他の部位の局所感染(たとえば,生殖器泌尿器),まれには心内膜炎を伴うこともある.
  • 臨床症状
  • 多彩な症状:熱性疾患,食欲不振,筋肉痛,疲労,体重減少
  • 髄膜炎または心内膜炎はまれ.
  • 身体のどの組織にも感染する.
  • 発熱は90%
  • 悪臭を伴う発汗があれば,だいたいはこの疾患だが,まれである.
  • 治療後の再発率は10%.
  • 臨床検査所見:軽症肝炎,白血球減少および相対的なリンパ球増加.
  • 一般的な治療方針
  • 再発リスクを軽減するために併用治療が好ましい.
  • 長期治療が必要となることが多い.

病原体/診断

病原体
  • Brucella abortus(ウシ)
  • Brucella melitensis(ヤギ)
  • Brucella suis(ブタ)
  • Brucella canis(イヌ)
  • Brucella ovis(ヒツジ)
診断
  • 血清学的検査,血液または骨髄培養,リアルタイムPCRまたは利用可能であれば16S RNA遺伝子診断.
  • 関節液では成長しないことがある
  • 増殖の遅い球桿菌:プレートと血液培養ボトルを保持する
  • 職業的曝露のリスクがあるため,検査施設にブルセラ症の可能性を伝えること
  • 血清学検査は有用でありうる;力価上昇を示す必要があることがある.
  • 迅速血清学検査での陽性はすべて,特異的凝集反応によるBrucella属の確認が必要となる.
  • プロゾーン現象によって偽陰性となることがある.
  • 利用可能で正規のものであれば,NAAT(PCR)および16S rRNA遺伝子診断が感度・特異度とももっとも高い.
  • 微生物の遊離DNA(例:Karius)の役割は不明だが,事例報告がある

第一選択

  • 成人および年齢>8歳の小児の非局所性疾患
  • DOXY 100mg経口1日2回/2.2~4.4mg/kg/日(最大20mg/日)2回に分割(小児)・6週+GM 5mg/kg静注1日1回・7日
  • DOXYRFP 600~900mg経口1日1回・6週
  • 年齢<8歳の小児の非局所性疾患
  • ST 5mg/kg(トリメトプリム成分)経口12時間ごと・6週)+RFP 15~20mg/kg(最大900mg/日)経口1~2回に分割
  • 米国小児科学会は現在では,DOXYは年齢または投与期間に関わりなく小児への投与が可能であるとしており(RedBook),それゆえ上記の処方が使用可能となった
  • 脊椎炎/仙腸骨炎/関節炎
成人:
  • DOXY 100mg経口1日2回最低12週+RFP 600~900mg経口1日1回最低12週+GM 5mg/kg筋注/静注1日1回・最初の7~14日
  • CPFX 750mg経口1日2回+RFP 600~900mg経口1日1回:どちらも最低3ヵ月
小児,年齢≧8歳:
  • DOXY 2.2~4.4mg/kg/日(最大200mg/日)2回に分割・12週以上+RFP 15~20mg/kg/日(最大900mg/日)経口1日1回・最低12週+GM 5mg/kg静注/筋注1日1回・最初の7~14日
小児,年齢<8歳:
  • ST 10mg/kg/日(トリメトプリム成分)(最大320mg/日),スルファメトキサゾール50mg/kg/日(最大1.6mg/日)2回に分割・12週以上+RFP 15~20mg/kg/日(最大900mg/日)経口1日1回・12週以上+GM 5mg/kg静注/筋注1日1回・最初の7~14日,
  • 米国小児科学会は現在では,DOXYは年齢または投与期間に関わりなく小児への投与が可能であるとしており(RedBook),それゆえ上記の処方が使用可能となった
  • 妊婦(妊娠<36週):
  • ST 5mg/kg(トリメトプリム成分)経口1日2回+RFP 600~900mg経口24時間ごと)・4週
  • 妊娠≧36週なら,出産までRFP単独治療
  • 神経ブルセラ症:
  • DOXY 100mg静注†/経口1日2回+RFP 600~900mg経口1日1回+CTRX 2g静注12時間ごと.脳脊髄液が正常になるまで続ける.
  • 心内膜炎:
  • ほとんどの場合手術が必要,それに加えて抗菌薬治療を行う.GM 5mg/kg静注1日1回2~4週+RFPDOXYSTを併用・6週~6ヵ月
  • 検査施設での曝露後の曝露後予防.データが乏しく,処方は忍容性の低いことが多い:
  • DOXY 100mg経口1日2回+RFP 600mg経口1日1回・3週
  • B. abortus株RB51(RFPに耐性):DOXY単独・3週
  • DOXYに不耐あるいは妊婦の場合は,ST-DS経口1日2回±RFP 600mg経口1日1回・3週

(†:日本にない剤形)

第二選択

  • 非局所性疾患であり,かつGMを避ける必要のある場合:CPFX 500mg経口1日2回+(DOXYまたはRFP)・6週

治療期間

  • 上記処方参照

コメント

  • 【米国の事情】被曝露者の抗体検査は州の検査施設またはCDCを通じて2,4,6,24週に行う.注:B. abortus株RB51の抗体反応は乏しい.
  • ブルセラ症は多くの州で報告義務のある疾患であり,CDCではバイオテロリズムの可能性のある病原体として掲載されている.
ライフサイエンス出版株式会社 © 2011-2025 Life Science Publishing↑ page top
2025/10/28