日本語版サンフォード感染症治療ガイド-アップデート版

髄膜炎-頭部外傷後,脳神経手術後  (2024/08/27 更新)
外傷あるいは脳神経手術後患者で細菌性髄膜炎が疑われる場合の経験的治療


臨床状況

  • 頭部外傷後,脳神経手術(たとえば,脳室造瘻術,腰椎ドレーン,脳室腹腔シャント,オンマヤリザーバー)後.発熱および意識レベル低下.

病原体

  • 通性好気性のグラム陰性桿菌が含まれる.

第一選択

  • VCM 15~20mg/kg静注8~12時間ごと(目標AUC24 400~600μg・h/mL達成が望ましいが[AUC-用量設定の原理と計算を参照],そうでなければトラフ値15~20μg/mLをめざす)+(CFPM 2g静注8時間ごとまたはCAZ 2g静注8時間ごと)
  • MRSAが除外されればVCMを中止し,培養結果に基づいて第一選択処方を変更する.
  • 耐性グラム陰性桿菌で静注βラクタム薬に反応しない場合は,脳室内投与が必要となることがある-コメント参照.
  • 再発性髄膜炎の場合:VCM 上記と同様+(CTRX 2g静注12時間ごと,またはCTX 2g静注4時間ごと[入手できる場合])+デキサメタゾン0.15mg/kg静注6時間ごと・2~4日

第二選択

  • MEPM 2g(4時間以上かけて)静注8時間ごとに繰り返す+VCM 同上
  • 脳脊髄液ドレナージによる薬剤喪失がある患者/ない患者での母集団薬物動態解析からの用量.脳脊髄液ドレナージが150mL/日以下の場合,上記処方は最も目標濃度達成確率が高い(Antimicrob Agents Chemother 60: 6619, 2016).
  • 重症ペニシリン/セファロスポリンアレルギーの場合:グラム陰性菌感染の可能性があれば,MEPMをAZT 2g静注6~8時間ごと,またはCPFX 400mg静注8~12時間ごとに代える.

コメント

  • S. pneumoniaeに対してVCM単独は最良の選択ではない.S. pneumoniaeの感受性が確認されればCTRXまたはCTXに変更する.
  • 薬剤耐性腸内細菌またはP. aeruginosaによる髄膜炎なら,付加的な側脳室または髄腔内治療を検討する.
  • 脳室内投与には必ず防腐剤フリーの薬剤を使用し,初回投与後1時間はカテーテルをクランプ/閉鎖すること.
  • VCM 10~20mg
  • AMK 30mg
  • GM 4~8mg
  • TOB 5~20mg
  • コリスチン(Colistimethateナトリウム塩)10mg1日1回または5mg12時間ごと
  • ポリミキシンB 5mg
  • 予防についての注:Chlorhexidineを脳室造瘻術の出口部の皮膚に塗布したところ,髄膜脳室炎の発症率が低下した(Clin Infect Dis 62: 404, 2016).
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2024/08/26