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日本語版サンフォード感染症治療ガイド-アップデート版
無脾,菌血症,予防
(
2023/2/14 更新
)
脾摘後感染予防,鎌状赤血球症
臨床状況
脾摘または機能的無脾での感染予防,たとえば菌血症:
脾臓機能不全を伴う鎌状赤血球症
脾摘術前後
イヌ咬傷後の
Capnocytophaga
属による菌血症/ショック(
ショック-脾摘後
参照)
肺炎球菌ワクチン,Hibワクチン,髄膜炎菌4価ワクチン,および2種類ある血清型B髄膜炎菌ワクチンの1つを,適切な時期に確実に接種する.
参照:
CDC予防接種スケジュール
.
肺炎球菌ワクチン:
成人では新しい20価結合型肺炎球菌ワクチン(PCV20)を用いる.
・最初のワクチン接種ならまずPCV20を接種し,その後8週またはそれ以降に23価肺炎球菌多糖体ワクチン(PPV23)を接種する.5年後にPPV23を繰り返す.
・以前にPPV23接種歴があるがPCV20は接種していない場合,少なくとも1年あけてPCV20を接種する.初回のPPV23接種後,2回目のPPV23を接種する.
・2回のPPV23接種歴があるがPCV20は接種していない場合,直近のPPV23から少なくとも1年以降にPCV20を接種する.
PCV13接種歴があるがPPV23を接種していない場合,PPV23から少なくとも8週以降にPCV20を接種し,5年後にPPV23を繰り返す.
文献:
Clin Infect Dis 73: e1489, 2021
.
年齢ごとのワクチン接種の詳細については,ACIPスケジュールを参照.
成人:
米国における成人ワクチン接種スケジュールの推奨
小児:
米国における年齢0~18歳の小児に対するワクチン接種スケジュールの推奨
血清型B髄膜炎菌感染に対する2種類のワクチンが使用できる (商品名:Trumenba, Bexsero):
MMWR Morb Mortal Wkly Rep 66:509, 2017
.
2つのワクチンは互いに代用可能ではなく,1シリーズの全接種を同一のワクチンで行う必要がある.
2回目のMenBワクチンの接種では,いずれの場合も前回の接種から少なくとも4週間あける.
他のワクチンと同時に接種してもよいが,接種部位を変えること.
それに加えて,鎌状赤血球症,サラセミアなどによる無脾小児では,少なくとも5歳までは抗菌薬の予防投与を毎日行う:
N Engl J Med 376: 1561, 2017
.
毎日予防していても,感受性のある病原体による敗血症が起こることがある.
無脾症患者のケアの総説:
N Engl J Med 371: 349, 2014
;
Chest 150: 1394, 2016
;鎌状赤血球症に関する総説:
N Engl J Med 376: 1561, 2017
.
病原体
考えられる病原体
S. pneumoniae
(90%)
N. meningitidis
H. influenzae
b型
その他
腸内細菌科
S. aureus
Capnocytophaga canimorsus
(イヌ咬傷後)
Bordetella holmesii
(
Lancet Infect Dis 14: 510, 2014
)
P. aeruginosa
(まれ)
致死的な
マラリア
,重度の
バベシア症
の危険率も上昇.
第一選択
抗菌薬による予防
5歳までの小児
AMPC
20mg/kg/日,または
Penicillin VK
125mg 1日2回
5歳以上の小児
Penicillin VK
250mg 1日2回を脾摘後少なくとも1年間
予防を最低3年間,または少なくとも18歳まで行うことを推奨する専門家もいる.
全年齢
ワクチンを適切に施行,および
毎日の予防を行っていない場合:発熱があれば,医療機関を受診するまで
AMPC/CVA
の自己投与.
鎌状赤血球症
5歳までの小児:
Penicillin VK
125mg経口1日2回
5歳以上の小児:
Penicillin VK
250mg経口1日2回,または
AMPC
20mg/kg/日
第二選択
発熱時の自己治療の第二選択
ペニシリンアレルギーだがセファロスポリン系にはアレルギーがない患者には,
CXM-AX
を使用できる.
その他としては,βラクタムアレルギー患者の一部でrespiratory フルオロキノロンを考慮できる.
ペニシリンアレルギー:
ST
または
CAM
が選択肢だが,耐性
S. pneumoniae
が増大している地域があり,特にペニシリン耐性菌の間で耐性が多い.
イヌ咬傷後(
C. canimorsus
):
ショック-脾摘後
参照
予防
無脾患者に,肺炎球菌ワクチン(PCV20;Prevnar 20),インフルエンザ菌(b型)(1回接種のみ),および4価髄膜炎菌ワクチン(2回接種)と血清型B髄膜炎菌ワクチンを推奨された接種間隔で確実に接種.
理想的には,初回は待期的脾摘術に先駆けて接種する.さもなくば術後ただちに.
文献:
Clin Infect Dis 73: e1498, 2021
.
ワクチンの適応,使用可能な製剤,用量,曝露前予防に関するワクチンの特徴については,
肺炎球菌ワクチン-成人
,
髄膜炎菌ACWYワクチン
,
髄膜炎菌Bワクチン
を参照.
抗菌薬による予防については上記参照.
コメント
鎌状赤血球症:2カ月までに予防を開始.少なくとも5歳まで継続.中止時期は個々で異なる.
S. pneumoniae
,
H. influenzae
b型,インフルエンザ,
N. meninditidis
に対する年齢にあったワクチンを接種(
Clin Infect Dis 58: 309, 2014
).
感染症治療時にはペニシリン非感受性
S. pneumoniae
の可能性を考える.
無脾状態は重症感染のリスクであると同時に血栓,肺高血圧症のリスクでもある:
Chest 150: 1394, 2016
.
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2023/02/09