日本語版サンフォード感染症治療ガイド-アップデート版

髄膜炎菌,ACWYワクチン  (2024/02/20 更新)


ワクチン接種の適応

標準コース(ルーチン)(ACWY)
以前にMen ACWY多糖ワクチン(非結合型)の接種を受けている人は,ワクチン未接種とみなすべきであり,MenveoまたはMenquadfi初回接種を現行のスケジュール(下記)で受けなければならない.
  • 11~12歳の青少年全員
  • 生後≧12ヵ月のHIV感染者,機能的または解剖学的無脾(鎌状赤血球症を含む),補体成分欠損,エクリズマブ/ラブリズマブ使用者
  • リスクのある検査施設職員
  • 流行時期でリスクのある個人
  • 寮に住んでいる第1学年の学生で,ワクチン未接種または接種不十分
  • 軍隊入隊者
海外渡航(ACWY)
  • アフリカ髄膜炎ベルトを含む髄膜炎菌疾患が多発または蔓延している国への渡航時(主に12月~6月がリスクだが医療従事者は通年)
  • ハッジまたはウムラのためにサウジアラビアに渡航する巡礼者は,入国10日前までに5年以内のワクチン接種が義務付けられている.
  • 急速に多発してきている地域または現在蔓延している国への渡航.
用量とスケジュール
  • ≧2歳の小児
  • 適応となるのは,免疫健常者でも海外渡航する場合,リスクのある検査施設職員,解剖学的または機能的無脾(鎌状赤血球症を含む),持続的補体成分欠損,エクリズマブ/ラブリズマブ使用者,またはHIV感染者
商品名
(製造元)
ワクチン
(タイプ,CDC略語)
年齢
用量,
経路
初回接種
スケジュール
第1回
追加接種
その後の
追加接種
標準
コース
短縮
コース
Menveo1(グラクソ・スミスクライン)
髄膜炎菌オリゴ糖ジフテリアCRM197結合型(MenACWV-CRM)
≧2歳
0.5mL
筋注
1回接種(無脾,補体欠損,HIV感染者および免疫不全では,8週あけて2回)
なし
リスクが長期化している場合(海外渡航2または免疫不全)は,第1回接種の5年後に1回(年齢<7歳なら,第1回の3年後)
リスクが長期化している場合(海外渡航または免疫不全)は,第1回追加接種の5年後に1回追加接種,その後5年ごとに1回(年齢<7歳なら,最終追加接種の3年後)
メンクアッドフィ
(サノフィ Pasteur)
髄膜炎菌多糖破傷風トキソイド結合型(MenACWY-TT)




年齢13歳以上:何らかの髄膜炎菌結合型ワクチン(A,C,W,Y型)の以前の接種から3年以上
年齢13歳以上:何らかの髄膜炎菌結合型ワクチン(A,C,W,Y型)の以前の接種から3年以上
Penbraya(ファイザー)
髄膜炎菌A,B,C,W,Y群ワクチン(Men ABCWY-TT/MenB-FGbp)
健常者:16~23歳(通常コース)
MenBハイリスク:10歳以上の人
0.5mL
筋注
対象となる人は,MenACWYおよびMenBワクチン3の代替として,Penbraya1回接種を受けてもよい
なし
髄膜炎菌B群ワクチン参照
  1. Menveo:<10歳では1バイアル(全液体)製剤は使用してはならない.2バイアル(凍結乾燥と液体)製剤を使用すること
  2. 髄膜炎菌疾患の蔓延国または多発地域(アフリカ髄膜炎ベルトの諸国,またはハッジ期間中の渡航を含む)への渡航
  3. 2つのワクチンが同じ診療日に接種されるかもしれず,かつ患者がPenbrayaを希望する場合のみ.MenB含有ワクチンが10歳未満に適応外接種を推奨されることはまれである

2022年,Menactraが完全に生産中止となり,サノフィから供給される唯一の四価ワクチンとしてメンクアッドフィが完全に取って代わった.Menveo(グラクソ・スミスクライン)は生後2ヵ月~55歳に承認されているが,それ以上の高齢者にも適応外処方されることがある.


  • <2歳の小児
  • 適応となるのは,免疫健常者でも海外渡航する場合,リスクのある検査施設職員,解剖学的または機能的無脾(鎌状赤血球症を含む),持続的補体成分欠損,エクリズマブ/ラブリズマブ使用者,またはHIV感染者
商品名
(製造元)
開始1の年齢
用量,経路
初回接種スケジュール
追加接種
標準コース
短縮コース
Menveo(グラクソ・スミスクライン)
2ヵ月
0.5mL
4回接種:生後2,4,6,12ヵ月で1回ずつ
少なくとも4週あけて3回接種し,生後12~18ヵ月に第4回接種

3~6ヵ月
生後3~6ヵ月で第1回:3~4回でコース終了(2回[適応があれば3回]を前回接種の≧8週以後,生後≧7ヵ月で1回接種するまでに接種し,その後12週以上あけて生後12ヵ月以後で1回接種

7~23ヵ月
2回接種,少なくとも12週あけて(第2回は生後12ヵ月以後に接種)
2回接種.少なくとも4週あけて(第2回を生後<12ヵ月で接種したなら,生後≧12ヵ月で初回接種スケジュールに従って追加接種1回)
  1. メンクアッドフィは現在2歳以下には承認されていない.

  • 標準コース(ルーチン),11~18歳の青少年
商品名
(製造元)
開始の年齢
用量,経路
初回接種スケジュール
第1回
追加接種
その後の
追加接種
標準コース
短縮コース
Menveoまたはメンクアッドフィ
11~12歳1
0.5mL筋注
1回接種

16歳で1回
なし
13~15歳
16~18歳で1回(前回接種から少なくとも8週後)
16~21歳2
なし
Penbraya
(ファイザー)
10~25歳(FDAが承認している年齢)
0.5mL筋注
対象となる人は,MenACWYおよびMenBワクチン3の代替として,Penbraya1回接種を受けてもよい
髄膜炎菌B群ワクチン参照
  
  1. 髄膜炎菌疾患が蔓延している国への渡航のために1回接種を受けた健常な小児:推奨される青少年のスケジュールに従い,MenACWVを11~12歳で第1回,16歳で第2回接種を受ける
  2. ルーチンのワクチン接種は,11~18歳にのみ推奨されているが,19~21歳で16歳の誕生日以後に1回も接種を受けていない場合,特に大学1年で寮に入ってるならワクチン接種(1回)を受けてもよい.
  3. 2つのワクチンが同じ診療日に接種されるかもしれず,かつ患者がPenbrayaを希望する場合のみ.ほとんどの場合,Penbraya使用は16~18歳のMenACWY#2によるものであり,MenB含有ワクチン接種を選択する.

有効性,予防効果持続期間/
選択,互換性

有効性,予防期間
  • 補体阻害薬を投与されている人は,Men ACWVワクチン接種後に抗体保有されても,高リスクのままである.
  • メナクトラ,Menveo接種後に免疫性は不十分なレベルまで減衰し,血清型C,W,Yに対するワクチン効果(VE)は3年で61%に,血清型Aに対するVEは5年で38%に低下する.
  • ≧56歳の成人の中で,メンクアッドフィワクチン接種後1ヵ月での反応率は,血清型A(89~94%),C(75~90%),W(77~80%),Y(81~92%).
  • 4~9年以前にメナクトラまたはMenveoでの初回接種を行っていた年齢≧15歳で,メンクアッドフィ追加接種を行うと,1ヵ月後には99%以上で全血清型に対する十分な抗体力価が達成された.
選択,互換性
  • 10~55歳では,すべてのACWYワクチンで引きおこされる免疫反応は同等である.
  • メンクアッドフィは2歳以上の全年齢に承認されている.
  • Menveo(グラクソ・スミスクライン)は生後2ヵ月~55歳に承認されているが,それ以上の高齢者にも適応外処方されることがある.
  • MenABCWY(Penbraya)は,MenBとMenACWYのそれぞれの初回接種が同一日に行われる可能性がある場合に選択肢となる

毒性

禁忌
  • 以前のワクチン接種に対する,またはワクチン含有成分に対する重症アレルギー反応(アナフィラキシーなど)
  • MenACWY-DおよびMenACWY-CRMのみ:いずれかのジフテリア毒素またはCRM197を含有するワクチンに対する重症アレルギー反応.
    MenACWY-TTのみ:破傷風毒素含有ワクチンに対する重症アレルギー反応
警告
  • 定義:一般にワクチン接種は延期すべきだが,副反応のリスクよりもワクチンによる予防の有用性が上回る場合には適応となることがある.
  • 中等症または重症急性疾患
  • MenACWY-CRMのみ:早産で生後9ヵ月以下
副作用
  • ワクチン接種後の局所または全身症状のほとんどは軽度または中等度
  • まれに,増強された局所反応(アルサス反応)がみられるが,これは肩から肘にかけての痛みを伴う腫脹で,破傷風トキソイドまたはジフテリアトキソイド含有ワクチン接種後2~8時間に起こる.
薬物相互作用
  • 生産中止となったメナクトラは,他のワクチン(肺炎球菌ワクチンを含む)とのいくつかの薬物相互作用があったが,これはMenoveoまたはメンクアッドフィには当てはまらない(Vaccine 2023: 41, 1153).
  • 髄膜炎菌ワクチンは,どの抗体含有製剤とも同時(または前後のどの時点でも)接種可能である.

特に注意が必要な対象

妊婦,授乳
  • 胎児に対するリスクについてはエビデンスがない.
  • いずれのワクチン接種も授乳の禁忌ではなく,母親にも乳児にもリスクを及ぼさない.
免疫不全/HIV
  • HIV感染者全例で,生後2ヵ月から始めて,ルーチンの2回接種コース(8週間隔),その後5年ごと(7歳未満なら3年ごと)の追加接種.
  • MenBはHIV感染者には推奨されない.
  • FDAは2023年6月に全年齢の免疫不全者に対するMenquadfi(Meneoではない)の3年ごとの追加接種を承認した.この接種間隔についてのACIPガイドラインの推奨はまだない.
  • 血液幹細胞移植後は,患者の年齢あるいは他の医学的要因からまだ適応があればワクチンを再接種する.
  • 2種のワクチンはすべて,疾患または薬剤によて免疫不全である患者に接種することができるが,ワクチンに対する反応は不十分であり,こうした人たちでは抗体力価が速やかに低下する.
  • 一価MenBワクチンの適応があり,髄膜炎菌B群感染のリスクが高い10歳超の小児は,MenACWYとMenBワクチン接種を分離するための代替としてPenbraya初回接種1回を受けてもよい.髄膜炎菌B群感染高リスクの場合の,その後の処方については髄膜炎菌B群ワクチン参照.

血清検査

  • いかなる状況でも適応とならない.
  • 力価は標準検査施設から入手でき,陽性の場合には,予防の適応でない.

コメント

  • オーストラリア,カナダ,ヨーロッパ,英国ではNimenrix(MenACWY-TT,ファイザー)が入手可能だが,米国では入手できない.
  • PenbrayaはNimenrixとTrumenbaの合剤である
  • Menveoは米国のIslamic Serviceよりハラルの認証を受けており,NimerixはヨーロッパのHalal Food Councilからハラルの認証を受けている.
  • Penbraya以外の追加的MenABCWY 5価ワクチンの開発が進んでいる.
  • 1価Men C結合型ワクチンは,米国外の多くの国々(ヨーロッパ,カナダを含む)で,地域の疫学に基づく乳児に対してルーチンとなっている.こうした国々で生まれた子供には地域のガイドラインに従ってワクチン接種が行われる.
  • CDC ACIPは,実際にワクチン接種を行う医療従事者がアクセスすることの多いFDA添付文書と比べて,より広い(適応外使用)こともより狭いこともある.
  • 情報源
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2024/02/19