日本語版サンフォード感染症治療ガイド-アップデート版

髄膜炎菌B群,ワクチン  (2024/02/20 更新)


ワクチン接種の適応

標準コース(ルーチン)
  • 年齢≧10歳で,以下のような高リスクな人
  • 解剖学的または機能的無脾(鎌状赤血球症を含む)
  • 持続的補体成分欠損
  • 補体阻害薬使用(エクリズマブ,ラブリズマブ)
  • MenBのリスクが非常に高いため,多くの専門臨床医はこの対象の<10歳の小児にワクチン接種を行うだろう.
  • 危険性のある検査施設での職務
  • 流行地に赴任した医療従事者
  • 臨床的共同意思決定に基づけば,16~23歳(16~18歳が望ましい)で(ルーチンではなく)用いても良い.
  • 公衆衛生機関が定めた流行の期間中
  • 米国外の>40の国々で,MenBワクチンはルーチンあるいは任意で乳児/小児に接種されている.
  • 5歳未満の小児での4CMenBのワクチン効果(VE)は,全血清型の髄膜炎菌による侵襲性疾患に対して76%であり,血清型B単独に対しては71%だった(N Engl J Med 288: 437, 2023).
  • ファイザーのMenABCWY(Penbraya)ワクチンは,MenACWYとMenBの両方が同一の診療日に適応となる場合に使用することができる.
海外渡航
  • 別の適応がないかぎり,ルーチンには推奨されない.
  • MenBワクチンのみを接種しているが,さらにMen ACWYワクチン接種が必要な乳児/小児で,今後アフリカへの渡航,ハッジのためにサウジアラビアへの渡航の予定がある場合.
  • その地の乳児/小児にMedBルーチン接種が行われている一部の国々への長期滞在をする乳児/小児.
用量とスケジュール
  健常者
  • ワクチン接種を希望する健常者
商品名(製造元)
Bexsero(グラクソ・スミスクライン)
Trumenba(Wyeth;ファイザー)
Penbraya(ファイザー)
ワクチン(タイプ,CDC略語)
髄膜炎菌B群組み替えタンパク成分,吸着(MenB-4C)
髄膜炎菌B群組み替えlp2086 a5およびlp2086 b01タンパク成分抗原(MenB-FHbp)
髄膜炎菌A,B,C,Y,W群ワクチン(MenABCWY-TT/MenB-FHbp)
年齢
健常者16~23歳(標準コース)

MenB高リスク:10歳未満(下記の表参照)
健常者16~23歳(標準コース)

MenB高リスク:10歳未満(下記の表参照))
健常者16~23歳(標準コース)

MenB高リスク:10歳未満(下記の表参照)
用量,経路
0.5mL筋注(液体)
0.5mL筋注(液体)
0.5mL筋注(希釈が必要)
初回接種スケジュール-標準コース16~26歳(16~18歳が望ましい)
2回接種:0,1ヵ月
2回接種:0,6ヵ月1

対象となる人は,MenACWYとMenBワクチンの接種を分離するための代替としてPenbraya1回接種を受けてもよい2
2回接種:0,6ヵ月

対象となる人は,MenACWYとMenBワクチンの接種の初回接種を分離するための代替としてPenbraya1回接種を受けてもよい
2.この場合,MenBの第2回接種にはTrumebaを使用する.
初回接種スケジュール-短縮コース
なし
なし
なし
第1回追加接種
MenBリスクが増大している場合のみ(下記参照)
MenBリスクが増大している場合のみ(下記参照)
MenBリスクが増大している場合のみ
その後の追加接種
  
  
  1. <6ヵ月で2回目を接種した場合は,第2回接種の≧4ヵ月後に第3回接種を行う(たとえば,0,4,8ヵ月に1回ずつ合計3回接種).
  2. 2つのワクチンが同じ診療日に接種されるかもしれず,かつ患者がPenbrayaを希望する場合のみ.ほとんどの場合,Penbraya使用は16~18歳のMenACWY#2によるものであり,MenB含有ワクチン接種を選択する.

  • 症例多発中その他の高リスク状況にある健常者(上記適応を参照)
商品名(製造元)
Bexsero(グラクソ・スミスクライン)
Trumenba(Wyeth;ファイザー)
Penbraya(ファイザー)
年齢
≧10歳(<10歳または≧26歳:症例多発などの抗リスクの場合は適応外使用),
≧10歳(<10歳または≧26歳:症例多発などの抗リスクの場合は適応外使用),
≧10歳
用量,経路
0.5mL筋注(液体)
0.5mL筋注(液体)
0.5mL筋注(希釈を必要とする)
初回接種スケジュール-標準コース
2回:0,1ヵ月
3回:0,1~2,6ヵ月1
対象となる人で,MenB高リスクの場合は,MenACWYとMenBワクチンの接種の初回接種を分離するための代替としてPenbraya1回接種を受けてもよい2,3
初回接種スケジュール-短縮コース
なし
なし
.nasi
第1回追加接種
1回:初回連続接種2完了後≧1年
1回:初回連続接種2完了後≧1年
Penbrayaを追加接種として使用してはならない5
その後の追加接種
リスクが持続している場合,2~3年ごとに1回
リスクが持続している場合,2~3年ごとに1回
Penbrayaを追加接種として使用してはならない5
  1. その他のMenB高リスク者に,第1回接種後少なくとも6ヵ月で第2回を接種した場合には,第3回接種が必要となる.
  2. 2つのワクチンが同じ診療日に接種されるかもしれず,かつ患者がPenbrayaを希望する場合のみ
  3. 高リスクの>10歳の小児または成人で,MenACWYおよびMenBワクチンの両方またはどちらかをPenbraya接種後<6ヵ月に追加接種することを推奨されている場合は,Penbrayaの最小接種間隔が6ヵ月であるため,MenACWYとTrumenbaを別々に接種しなければならない.Penbrayaからワクチン接種を開始したばあいには,その後のMenB予防のためのワクチン接種はPenbrayaかTrumenbaでなければならない.
  4. 現在流行中なら,公衆衛生機関の職員は6ヵ月間隔を考慮する.
  5. 髄膜炎菌感染リスクが増大している人では,まれにPenbrayaが,追加的なMenACWYおよびMenB追加接種として使用されることがある.それは2つのワクチンがたまたま同一診療日に接種されうる場合であり,直近のPenbraya接種から少なくとも6ヵ月間隔を置いてである.

有効性,予防効果持続期間/選択,互換性

有効性,予防効果持続期間
  • Bexseroによる免疫性は,乳児へのワクチン接種後2年間で5~25%低下し,Trumenbaの免疫性は,青少年および若年成人へのワクチン接種後の1年で大幅に低下するが,その後は4年まで安定して維持される.
  • 集団免疫のエビデンスはあるが,B群髄膜炎菌保菌率低下のエビデンスはない.
  • Penbrayaの2回接種による,全5抗原に対する抗体保有率は>90%だが,4年間でかなり減弱してしまう.
選択,互換性
  • BexseroとTrumenbaでは違いが大きく,互換可能ではない.連続接種もその後の追加接種もすべて,同一製剤で開始し,同一製剤で完了させなければならない.
  • 前回接種の製品が使用できない,あるいは特定できない場合は,初回コースを利用可能な製品で再スタートさせる.
  • PenbrayaはTrumenba(MenB)とNimrenix(MenACWY;米国では入手できない)の合剤である.
  • ワクチン接種をPenbrayaで開始した場合には,その後のMenB予防のためのワクチンはPenbrayaまたはTrumenbaでなければならない.

毒性

禁忌
  • 以前の接種での,あるいはワクチン成分へのアナフィラキシー反応.
  • Penbrayaのみ:破傷風毒素含有ワクチンに対する重症アレルギー反応.
警告
  • 定義:一般にワクチン接種は延期すべきだが,副反応のリスクよりもワクチンによる予防の有用性が上回る場合には適応となることがある.
  • 中等症または重症急性患者(発熱の有無にかかわらず).
  • MenB-4C(Bexsero)のみ:ラテックス過敏症
副作用
  • 米国各地,カナダ・ケベック,英国で>10,000人を対象としたいくつかの大規模Bexeri接種プログラムでは,重症副事象は認められなかった
  • Trumenbaワクチンでは約2%で重症副事象が報告された.
  • Bexseroの副事象に関する発売後市場調査では,注射部位での水疱形成,失神,アレルギー反応(アナフィラキシー,発疹,眼球腫脹など)がみられた.
  • Penbraya:副作用は≧15%,第1回接種および第2回接種での副作用はそれぞれ以下のとおり:
  • 注射部位の痛み(89%,84%),疲労(52%,48%),頭痛(47%,40%),筋肉痛(26%,23%),注射部位の発赤(26%,23%),注射部位の腫脹(25%,24%),関節痛(20%,18%),悪寒(20%,16%)
薬物相互作用
  • MenBワクチンはMenACWYワクチンと同時接種可能だが,実際に行う場合は異なる注射部位を用いること.
  • 4歳未満の小児では,発熱リスクを抑えるために,Bexsero接種は他のワクチン(MenACWYを含む)の接種から最低3日後以降に行うことを考慮する.

特別な注意が必要な対象

妊婦,授乳
  • 妊娠は禁忌ではないが,リスクが増大しワクチン接種の有用性が可能なリスクを上回ることがなければ,MenBは出産後まで延期する.
  • MenBは授乳の禁忌ではない.
免疫不全/HIV
  • 免疫不全者への接種は可能だが,ワクチンに対する反応は最適とはいえず,そうした人では抗体力価も急激に低下することがある.
  • 補体阻害薬を使用している人は,MenBワクチン接種後も依然として侵襲性髄膜炎菌疾患のリスクが高い.
  • HIVは,MenACWYワクチンの場合とは異なり,MenBの適応ではない.
  • 血液幹細胞移植後は,患者の年齢あるいは他の医学的要因からまだ適応があるならワクチンを再接種する.

血清検査

  • いかなる状況でも適応にはならない.

コメント

  • 追加的MenABCWY五価ワクチンは現在開発が進んでいる.
  • Pfizerの候補ワクチン(Trumenba/Nimenrixの組み合わせ)が,2024年にもFDAの承認,ACIPの推奨をうけるだろう。
  • CDC ACIPの推奨は,実際にワクチン接種を行う医療従事者がアクセスすることの多いFDA添付文書と比べて,より広い(適応外使用)こともより狭いこともある.
  • 情報源
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2024/02/19