日本語版サンフォード感染症治療ガイド-アップデート版

Capnocytophaga   (2021/6/29 更新)


臨床状況

  • Capnocytophaga canimorsusは,イヌ咬傷を受けた患者での劇症敗血症の原因である.
  • 最も大きなリスク:解剖学的または機能的無脾,大量飲酒,または肝硬変
  • Capnocytophaga属の診断は,通常血液培養での分離による(増殖が遅く,14日かかることもある)
  • 細長いグラム陰性桿菌(末梢血またはバフィコート染色でみられることがある)
  • ネコまたはイヌの咬傷後に菌血症ショックおよび/または髄膜炎を引き起こすことがある.
  • Capnocytophaga属は,ヒトの正常な口腔菌叢に存在するか,イヌやネコの口腔菌叢に存在するかに基づき分けられる.
  • C. canimorsusC. cynodegmiC. stomtisはイヌおよびネコの口腔菌叢に存在
  • その他の6種は,健康なヒトの正常口腔菌叢に存在
  • C. canimorsusは,無脾患者でイヌまたはネコ咬傷後に分離される主要な病原体となる
  • 無脾患者でイヌ咬傷後に敗血症性ショックの臨床症状を示した場合は,緊急の経験的治療が適応となる.
  • 死亡率は30~50%
  • 回復しても,DICや,四肢遠位部,耳垂,鼻尖などに末梢性の対称性壊疽をきたすことがある.
  • 経験的治療において考慮すべき点:
  • C. canimorsus分離株は
  • AZT以外のすべてのβラクタム薬(ペニシリン,セファロスポリン,カルバペネム)に感性
  • CLDMに感性
  • STに対する感受性は一定しない
  • 分離株の50%以上がフルオロキノロンに耐性
  • 無脾患者で培養結果が判明するまでは,莢膜保有細菌(たとえばS. pneumoniaeH. influenzaeN. meningiditis)による菌血症の可能性を考慮して経験的治療を行う.
  • 個々の疾患,症候群を参照

分類

  • 通性グラム陰性桿菌
  • Capnocytophaga canimorsus(従来はDF-2と表記されていた)

第一選択

  • 培養,洗浄,創傷に対するデブリドマン
  • 破傷風/狂犬病予防接種の必要性を評価すること.
  • イヌ咬傷を受けた無脾患者で敗血症の所見がない場合には,以下の処方による予防的治療を3~5日行う:
  • AMPC/CVA 875/125mg錠,1錠経口1日2回,または1000/62.5mg錠2錠経口1日2回,または
  • CLDM 300mg経口1日4回
  • 敗血症性ショック,脾摘患者:
  • 経験的治療C. canimorsusに対する活性が予想され,さらにS. pneumoniaeNeisseria属,Haemophilus属,おそらくS. aureusに対しても活性のある薬剤が必要になる).
  • PIPC/TAZ 4.5g静注1回,その4時間後から3.375g4時間以上かけて静注を開始し,8時間ごとに繰り返す
  • MRSAのリスク因子となる病歴(たとえば違法薬物使用)がある場合には,VCMを追加
  • イヌ/ネコ唾液中の嫌気性菌に対する活性のため,CLDM 600~900mg静注8時間ごと,またはMNZ 500mg静注8時間ごとを追加することもある
  • IPM/CS 500mg静注6時間ごと
  • MEPM 1g静注8時間ごと
  •  CLDM 900mg静注8時間ごと,またはMNZ 500mg静注8時間ごとを追加することもある
  • 培養,感受性検査結果が得られた後のC. canimorsusに対する特異的治療
  • PIPC/TAZ 4.5g静注1回,その4時間後から3.375g4時間以上かけて静注を開始し,8時間ごとに繰り返す
  • IPM/CS 500mg静注6時間ごと
  • MEPM 1g静注8時間ごと
  • 重症βラクタムアレルギーの場合:CLDM 600mg静注8時間ごと

第二選択

  • βラクタマーゼ陽性でin vitro感受性検査結果が得られている場合
  • CLDM 900mg静注8時間ごと
  • in vitroで感受性ならば,CTRX 2g静注1日1回その他の広域セファロスポリン系薬を使用してよい

抗微生物薬適正使用

  • 無脾,アルコール依存症などの高リスク患者では,AMPC/CVAまたはCLDMによる抗菌薬予防投与をイヌ咬傷後5日間行うのが理にかなっている.
  • canimorsus種以外のCapnocytophagaにおいてβラクタマーゼ産生株が増加しているため,in vitroでの感受性が確認されなければペニシリン系薬およびセファロスポリン系薬は使用しないこと(Int J Antimicrob Agents 29: 367, 2007

コメント

  • アミノグリコシド系薬およびSTに対する感受性は予測できない.およそ50%の分離株はフルオロキノロン系薬に耐性.事実上すべての分離株はAZTに耐性.
  • 【日本の情報】
    検査方法その他,技術的な内容の相談:国立感染症研究所(03-5285-1111)
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2021/06/22