false
日本語版サンフォード感染症治療ガイド-アップデート版
バベシア症
(
2024/11/26 更新
)
臨床状況
ダニによる媒介や輸血による感染.先天性の感染も報告されている.総説:
N Engl J Med 366: 2397, 2012
.
B. microti
の中間宿主は通常マダニ(
Ixodes scapularis
). 宿主は白アシネズミ(およびその他).
ダニ媒介性疾患-概説
参照.
B. microti
は輸血の安全性に関連しており,200を越える輸血による感染の報告がある(
Transfusion 59: 2908, 2019
).
2019年から,FDAは15の高リスクの州に対して,赤血球製剤の
Babesia
検査を要求している.
ライム病とヒト顆粒球アナプラスマ症の中間宿主(ダニ)および宿主は
,Babesia microti
と共通である.
ダニ媒介の多くの症例は米国では中部大西洋地域,北東部および中西部の北方.新しい種による散発的な
Babesia
感染症例が,米国のさまざまな地域で確認されている.
寄生虫
Babesia
は宿主の赤血球に感染する.症状は溶血によるもの.
無症候の感染は通常は治療する必要はない.
患者は高齢男性がほとんどで,6月~8月に多い:全死亡率1.6%.
バベシア症は,無脾患者および免疫不全患者では致命的となりうる,
Clin Infect Dis 46: 370, 2008
を参照.重症化のリスク因子:年齢60歳以上,リツキシマブ使用,血小板減少症,10%を超える寄生虫血症.
バベシア症に対する適切な治療を行っても症状が重く持続する場合は,
ライム病
や
ヒト顆粒球アナプラスマ症
などの複合感染を考える.
診療ガイドライン:
Clin Infect Dis 72: 185, 2021
診断/病原体
診断
末梢血染色スメアの検査
可能ならばPCRによる検出
現在では血清学的検査は推奨されない.過去の感染については適応となることがある.
注:
B.microti
に対する分子検査および血清学的検査では他の病原体/種を検出できない.
病原体
Babesia microti
(米国)
Babesia duncani
(米国西部)
Babesia divergens
(感染はほとんどすべてヨーロッパにおけるもの:
Pathogens 12: 323, 2023
)
Babesia motasi
(韓国,中国)
第一選択
脾臓のある健常者での無症候性疾患では,治療は不要
成人の軽症/中等度(外来患者.寄生虫血症<4%)
(
アトバコン
750mg経口12時間ごと+
AZM
500mg経口1日目,その後250mg/日経口)合計7~10日.
急性重症疾患(入院)成人:
アトバコン
750mg経口12時間ごと+
AZM
500~1000mg静注24時間ごとを症状軽減まで,その後経口step-down治療
Step-down治療でフォロー:
アトバコン
750mg経口12時間ごと+
AZM
250~500(免疫不全なら500~1000)mg経口24時間ごと,全7~10日治療を完了させる
重度の免疫不全患者:
連続6週,重症例での処方を行い,最後の2週で確実に血液塗抹陰性とする
重度免疫不全患者治療に関する総説:
Curr Opin Infect Dis 37: 327, 2024
.
寄生虫血症>10%の患者または寄生虫血症が中等度~高度で,重症溶血性貧血または呼吸器・腎・肝臓の障害がある場合には交換輸血を考慮する.
小児用量:
アトバコン
20mg/kg/回経口;
AZM
10mg/kg静注/経口・上記成人のスケジュール/経路で,ただし軽症/中等症では1回目投与後は5mg/kg経口.
成人用量を超えないこと.
アトバコン/AZMが推奨されているが,重症バベシア症治療でのこの処方の臨床試験はない.
第二選択
妊婦,およびアトバコン+AZM開始後に寄生虫血症および症状が軽減しなかった場合には,
CLDM
+
Quinine
が好ましい
軽症/中等症:
CLDM
600mg経口8時間ごと+
Quinine sulfate
542mg塩基(650mg塩と同等)経口6~8時間ごと・7~10日
急性重症入院患者:
CLDM
600mg静注6時間ごと+
Quinine sulfate
542mg塩基経口6~8時間ごと・症状軽減まで,その後経口step-down治療に切り替え
Step-down治療でフォロー:
CLDM
600mg経口8時間ごと+
Quinine sulfate
542mg塩基経口6~8時間ごとで全7~10日の治療を完了させる
小児用量:
CLDM
7~10mg/kg経口8時間ごと;
Quinine sulfate
6mg塩基/kg(8mg塩/kgと同等)上記成人のスケジュール/経路.成人用量を超えないこと.
治療失敗または再燃の場合には以下の併用を考慮する
アトバコン+AZM+CLDM
アトバコン+CLDM
アトバコン・プログアニル+AZM
アトバコン+AZM+CLDM+Quinine.AZMは500~1000mgを使用
コメント
免疫正常患者では急性症状がある間だけ,免疫不全患者では血液塗抹が陰性となるまで血液塗抹をモニターする.
抗菌薬による予防はできない.
Tafenoquineの有効性に関する動物のin vivoデータ:
J Infect Dis 220: 442, 2019
.
Tafenoquine6週治療後に,1例の重度免疫不全患者で再発がみられた(
Pathogens 11: 1051, 2022
).
重症入院患者でのTafenoquine+アトバコン+AZMとアトバコン+AZM 10日治療の比較試験が進行中(
J Infect Dis 229: 1599, 2024
).
免疫不全患者での再発後のTafenoquine週1回維持治療(
Clin Infect Dis 73: 130, 2024
).
包括的総説:
Infect Dis Clin North Am 36: 655, 2022
.
B.motasi
のヒト感染例は現在までのところ少数しかない.
末梢血スメアで病原体が肉眼で見える7つの熱帯感染症:アフリカ/アメリカトリパノソーマ症,バベシア症,バルトネラ症,フィラリア症,マラリア,回帰熱
.
ライフサイエンス出版株式会社 © 2011-2024 Life Science Publishing
↑ page top
2024/11/25