日本語版サンフォード感染症治療ガイド-アップデート版

ヒトアナプラズマ症  (2023/09/05 更新)
ヒトアナプラズマ症(HGA)


臨床状況

  • Ehrlichia は偏性細胞内細菌であり,ヒト白血球に感染する.ダニによって伝播する.
  • 野外活動の後に,発熱を伴うインフルエンザ様症状が出現.発疹はないが白血球減少と血小板減少はよく見られる.
  • ヒトアナプラズマ症は,以前はヒト顆粒球性エールリヒア症として知られていた.
  • 米国(中西部より北部,北東部,西海岸)およびヨーロッパでみられるダニが媒介する全身性発熱症候群.CDCの統計マップを参照.
  • 4月から9月にかけてのダニ曝露歴.

病原体/診断

病原体
  • Anaplasma (Ehrlichia) phagocytophilum (ヒト顆粒球Ehrlichia)(マダニが媒介)
  • イヌでの変種が Ehrlichia ewingii
  • ウマでの変種が Ehrlichia equi
診断
  • 4年にわたる8,896例の受動的観察の報告がある(米国)(Am J Trop Med Hyg 93: 66, 2015).37%はPCRで確定診断され,残りは血清検査による.
  • 血液塗抹で桑実胚(好中球細胞質の細胞内細菌の集塊)がみられたのは,PCR陽性患者のわずか3%だった.
  • アナプラズマ症およびその他のダニ媒介性感染症の現在の診断法の総論:Clin Chem 66: 537, 2020. (画像多数)

第一選択

  • DOXY 100mg経口または静注†1日2回・7~14日,ライム病の合併が確認されたか疑われる場合は最低10日治療(コメント参照)

(†:日本にない剤形)

第二選択

  • TC 500mg経口1日4回・7~14日(小児や妊婦には投与しない)(安全性についてのDOXYと比較についてはコメント参照)
  • DOXYに対する重症のアレルギーのある患者,妊婦,あるいは軽症アナプラズマ症にはRFPが第二選択薬になることがある.
  • 用量:妊婦では RFP 10mg/kg1日2回(最大600mg1日2回)・5~7日,ただし単独投与では耐性発現が懸念される.

コメント

  • 小児患者に対するテトラサイクリン系薬の使用について,8歳未満の小児では,薬剤とその着色分解物質がエナメル質に沈着することにより,歯の永久的な変色が起こることが報告されていたため,従来は制限されていた.
  • DOXYは,他のテトラサイクリン系薬に比べカルシウムへの結合力が弱く,最近の比較データからは,8歳未満の小児で目に見える歯の変色やエナメル質形成不全を引き起こす可能性は低いことが示唆されている.
  • in vitroの研究によるかぎり,DOXY以外のはっきりとした他の選択肢はない.
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2023/09/04