日本語版サンフォード感染症治療ガイド-アップデート版

肺炎球菌,ワクチン,成人  (2025/01/21 更新)
肺炎球菌ワクチン,年齢18歳以上


ワクチンの適応/
用量とスケジュール

はじめに
  • 50歳以上のPCV未接種の人全員にPCV20またはPCV21の単独接種1回,あるいはPCV15コース・1年後にPPSV23接種が現在推奨されている.
  • 年齢50~64歳の32~54%は既にリスクに基づくワクチン接種の適応となっていると推計される.
  • PCV21(Capvaxive:メルク)はFDA承認を受け,現在使用可能.
  • PCV21はPCV20に含まれていない11の血清型を含むが,PCV20に含まれる10の血清型を含んでいない.
  • PCV21は,年齢65歳以上で侵襲性肺炎球菌感染症(IPD)の85%の原因となる血清型をカバーするのに対し,PCV20は54%である.
  • しかし,ACIPは公式にはPCV20はPCV21と同等としている;最終的評価はMMWR誌上に発表される予定
  • PCV13は現在米国では使用されておらず,CDCのすべてのスケジュールから削除されている.
  • 過去にPCV13コースを一部だけ接種または完全に接種した人でのPCV20またはPCV21への移行は,数年間は混乱するだろう.
  • PCV21の小児での使用は承認されていない
  •  渡航前の十分なワクチン接種を評価するための概要:
  • 生後2~23ヵ月の小児は,PCV15またはPCV20を接種しなければならない.
  • キャッチアップワクチン接種:生後24~59ヵ月の健康な小児で,PCVワクチン接種未完了の場合,および生後24~71ヵ月で基礎疾患があり,PCV接種未完了の場合は,PCV15またはPCV20を接種しなければならない.
  • 年齢2~18歳の小児でなんらかの高リスクとなる疾患があり,6歳以前に推奨されるすべての接種を受けている場合,少なくともPCV20を1回接種していれば,追加接種は必要ない.
  • PCV13またはPCV15は接種しているが,PCV20は接種していない場合には,PCV20を1回接種しなければならない.
  • 年齢6~18歳の小児でなんらかの高リスクとなる疾患があり,PCV13,PCV15,PCV20のどれも接種していない場合には,PCV15またはPCV20の1回接種を受けなければならない.
  • PCV15接種を受けている場合,それに続いてPPSV23を(以前に接種していない場合)少なくとも8週後に接種しなければならない.
  • PPSV23単独の適応縮小は現在では推奨されない:どの適応も現在では結合型(PCV)ワクチンを必要とする.
  • ACIPの規則では,薬局と診療所ではPCV20またはPCV21のみが備蓄でき,すべての臨床的処方をカバーすることができるとしている.
   
標準コース(ルーチン)
  • 年齢≧50歳の全員
  • 年齢19~49歳で,以下の条件がある人
  • アルコール依存
  • 慢性的な心疾患(うっ血性心不全,心筋症など),肝疾患,肺疾患(COPD,肺気腫,ぜんそく[すべての病因,重症度]など)
  • 現在も喫煙を続けている人
  • 電子たばこ(蒸気吸い込み),またはマリファナだけ使用に関するデータはない;ワクチンは推奨されない.
  • 人口内耳
  • 脳脊髄液漏出
  • 糖尿病
  • HIV
  • 免疫不全状態(慢性腎不全,先天的または後天的無脾(地中海貧血は除外),先天的または後天的免疫不全,補体欠損,食細胞機能異常症,全身性悪性疾患,ホジキン病,医原性免疫抑制,白血病,リンパ腫,多発性骨髄腫,ネフローゼ症候群,固形臓器移植)
海外渡航
  • 適応は上記と同様だが,渡航と呼吸器疾患との関連があるため,より急を要する.
用量とスケジュール
望ましい処方
  • 肺炎球菌ワクチン未接種の成人
商品名(製造元)
Capvaxive(Merck)
Prevnar 20(ファイザー),英国ではApexxnarという商品名
ワクチン(タイプ,CDC略語)
肺炎球菌21価結合型ワクチン,ジフテリア CRM197タンパク(PCV21)
肺炎球菌20価結合型ワクチン,ジフテリア CRM197タンパク(PCV20)
年齢
≧19歳
≧19歳
用量,経路
0.5mL 筋注
0.5mL 筋注
初回接種スケジュール-19~49歳,基礎疾患のあるひとだけ
1回接種
1回接種
初回接種スケジュール-≧50歳,
健康または基礎疾患あり
1回接種
1回接種
第1回追加接種
現在適応なし
現在適応なし

他の選択肢
  • 肺炎球菌ワクチン未接種の成人
  • 2種類の異なるワクチンを経時的に接種することが必要
商品名(製造元)
Vaxneuvance(メルク)
Pneumovax23(メルク)
ワクチン(タイプ,CDC略語)
肺炎球菌15価結合型ワクチン,ジフテリアCRM197タンパク(PCV15)
肺炎球菌23価多糖ワクチン(PPSV23)
年齢
≧19歳
≧19歳
用量,経路
0.5mL筋注
0.5mL筋注または皮下注
初回接種スケジュール-19~50歳,基礎疾患あり
1回接種
PCV15接種から1年後以降に1回接種1
初回接種スケジュール-≧50歳,健康または基礎疾患あり
1回接種
PCV15接種から1年後以降に1回接種1
第1回追加接種
なし
なし
  1. HIV,人工内耳,脳脊髄液漏出,特定の免疫不全のある人,あるいは緊急の渡航予定のある人ではVaxneuvance接種から8週後以降の接種を考慮する.

ワクチン接種前に考慮すべきこと
  • 既にPCV13および/またはPPSV23の接種を受けている成人で考慮すべきこと
  • 下表は以下のような状態の人についてのもの:アルコール依存,慢性心疾患(うっ血性心不全,心筋症),慢性肝疾患,慢性肺疾患(COPD,肺気腫,ぜんそく),喫煙者,糖尿病
  • 2022年以前の処方にはPCV13/PPSV23が,この順序で含まれているか,PPSV23のみ(数種の適応)である.
  • 多くの成人が連続接種を完了していないか,間違った順序での接種を受けており,訂正の必要がある.
  • PPSV23接種歴の口頭での確認は信頼してもよいが,いずれかのPCVワクチンの接種歴は接種回数に入れるためには記録を確認しなければならない.
  • PneumoRecs VaxAdvisor APP(CDCからのフリーソフト)複雑なワクチン接種歴を解明するためのiOSおよびAndroidで使用可能なソフト
ワクチン接種歴
今後のワクチン接種
PCV15のみ,PPSV23は未接種
PCV20またはPCV21
PCV13およびPPSV23を65歳前または以降で完了(健康または基礎疾患あり)
≧65歳:もっとも近日の肺炎球菌ワクチン接種から≧5年でPCV21またはPCV20を接種してもよい(共同意思決定)
基礎疾患があり,PCV13,およびPPSV23を1回または複数回(50歳以前)受けた
もっとも近日の肺炎球菌ワクチン接種から≧5年でPCV21またはPCV20接種
≧19歳で,以前にPCV13・その後PPSV23(どの年齢でも基礎疾患がある場合,または健康で≧65歳)が推奨されていたが,PCV13しか接種していない,
PPSV13接種後少なくとも1年後にPCV21またはPCV20を接種.
PPSV23のみ(≧18歳で健康または基礎疾患あり)
PPSV23接種の≧1年後にPCV21またはPCV20.PPSV23のさらなる接種は不要.
  1. PCV20またはPCV21を単独で使用すれば,肺炎球菌ワクチンのみの1回の備蓄となり,上記のいかなる状況でもPCV15またはPCSV23の備蓄は不要となる.
  2. ACIPガイドラインでは,PCV15/PPSV23連続接種は上表のいくつかの状況での第二選択とされているが,より望ましい処方ではない.

有効性,予防効果持続期間/
選択,互換性

有効性,予防期間
  • ワクチンは,それぞれの血清型の細菌による疾患だけを予防する.
  • PCV20のワクチン効果は,PCV13と比較すると,共通に含まれている13の血清型については同等,またPPSV23と比較しても,共通の7種の血清型中6種については同等.
  • PCV13はワクチン血清型の肺炎球菌による肺炎に対しては46%,ワクチン血清型の菌血症でない肺炎球菌による肺炎に対しては45%,≧65歳の成人でのワクチン血清型の成人侵襲性肺炎球菌感染症(IPD)に対しては75%の有効性を示した.
  • PCV20は,PCV15には含まれていないがPPPSV23には含まれている5種の血清型に対して,より良い予防効果を示す可能性がある.
  • 免疫不全のある成人でのPCV20の使用に関しては特異的なデータはない.
  • 脾摘後または脳脊髄液漏のある患者での劇症敗血症に対しては,ワクチンは100%の予防効果はもたない.
選択,互換性
  • ACIPガイドラインではPCV20またはPCV15/PPSV23の選択肢は同等と考えられているが,PCV21単独処方が望ましい処方であるようだ.
  • PCV21はPCV20に含まれない11の血清型を含み,PCV20に含まれる10の血清型を含まない.
  • PCV21は,年齢65歳以上で侵襲性肺炎球菌感染症(IPD)の85%の原因となる血清型をカバーするのに対し,PCVは54%である.
  • この処方のカバーする血清型は4種少ない(米国内のデータに基づけば,いずれも主要なものでない),処方の劣性を示す臨床データはない.
  • ACIPの規則では,薬局と診療所ではPCV21またはPCV20のみが備蓄でき,すべての臨床的処方をカバーすることができるとしている.これにより,多くのワクチンを備蓄することに比べて,エラーが少なくなる.
  • 従来のpCV13処方からの以降は,特に過去にワクチン接種を完了していない人では,数年は混乱を引きおこすだろう.

毒性

禁忌
  • 以前のワクチン接種での,あるいはワクチン成分に対するアナフィラキシー反応.
  • PCV15,PCV20,PCV21については,ジフテリアトキソイド含有ワクチンに対するアナフィラキシー反応.
警告
  • 定義:一般にワクチン接種は延期すべきだが,副反応のリスクよりもワクチンによる予防の有用性が上回る場合には適応となることがある.
  • 中等症または重症急性患者(発熱の有無にかかわらず)
  • 重症の免疫不全のある心血管および/または呼吸器機能疾患患者には,より強力な注意を払う.
副作用
  • もっとも多くみられるのは,注射部位の反応,疲労,筋肉痛,関節痛,頭痛
  • 後続の接種で副反応が増大することはない.
  • 現在まで,PCV20接種後のギラン・バレー症候群18例の報告がある(100万回接種に対して0.7症例の割合)
薬物相互作用
  • Prevnar20とVaxneuvanceは,COVID-19ワクチンを含む他のワクチンと同時(または前後のどの時点でも)併用可能.
  • MenACWYの使用可能なブランド品(MenACWY-CRM(Menveo,GSK),MenACWY-TT(MenQuadfi,サノフィ),また5価MenABCWY(Penbraya,ファイザー)は,どの肺炎球菌ワクチンと同時,または接種前後のどの時点でも接種可能である
  • 肺炎球菌結合型ワクチン接種前1年以内にPneumovax23を接種すると,Pneumovax23接種をしない人と比べて免疫反応を減弱させる結果になる.
  • 肺炎球菌ワクチンは,どの抗体含有製剤とも同時(または前後のどの時点でも)併用可能.
  • 小児期でのPCV7接種歴は,現在まで決められた接種の目的のためには無視してもよい.

特に注意の必要な対象

妊婦,授乳
  • PCV15,20,21の妊娠中の使用についてのヒトでのデータは不十分;しかし,動物での胎児発達に関する問題はなかった.
  • PCV13またはPPSV23では妊娠関連リスクはない.
  • どの肺炎球菌も接種が授乳の禁忌となることはない.
免疫不全/HIV
  • 上記参照
  • 表はHSCT患者には適応されない(下記参照)
どの年齢でか
接種したワクチン
望ましい処方
代替処方
なし/不明
PCV20またはPCV21
を1回接種
PCV15を1回接種,その後PCV15接種から≧8週間隔でPPSV23を1回接種
PPSV23のみ
PPSV23最終接種から≧1年間隔でPCV20またはPCV21を1回接種
PPSV23最終接種から≧1年間隔でPCV15を1回接種
PCV13のみ
PCV13最終接種から≧1年間隔でPCV20またはPCV21を1回接種
PCV13最終接種から≧8週間隔でPPV23を1回接種.最終PPV23接種から≧5年間隔で第2回PPSV23を接種.患者が年齢65歳になったら,肺炎球菌ワクチン推奨を再確認
PCV13,およびPPSV23を1回(接種の順序は問わない)
PCV13またはPPSV23最終接種から≧5年間隔でPCV20またはPCV21を1回接種
PCV13最終接種から≧8週間隔,PPSV23最終接種から≧5年間隔でPPSV23を1回接種.患者が年齢65歳になったら,肺炎球菌ワクチン推奨を再確認
PCV13,およびPPSV23を2回(接種の順序は問わない)
PCV13またはPPSV23最終接種から≧5年間隔でPCV20またはPCV21を1回接種
患者が年齢65歳になったら,肺炎球菌ワクチン推奨を再確認

  • 成人HSCTレシピエントでは,PCV20またはPCV21をHSCT後3~6ヵ月後に開始し,4回接種を行うことが推奨される.
  • HSCT後3~6ヵ月後にPCV20またはPCV21を開始し,4週ごとの接種で,3回
  • PCV20の第3回接種の≧6ヵ月後,またはHSCT後≧12ヵ月のどちらか遅い時点で第4回PCV20またはPCV21接種を行う.
  • 臨床試験では,非反応のHIV患者に対する再接種は無効であり,上乗せ接種の適応はない.
  • 化学療法や放射線療法中のワクチン接種は避ける.
  • 免疫抑制治療,人工内耳埋め込み,脾摘術の>2週前にPPSV23の接種を行う.

血清検査

  • いかなる状況でも適応となることはない.

コメント

  • 50~64歳で接種を受けた成人の中には,予防効果を維持するために初回接種後15年以上後にPCV追加接種が必要となる例がある.データはまだない
  • CDC ACIPの推奨は,実際にワクチン接種を行う医療従事者がアクセスすることの多いFDA添付文書と比べて,より広い(適応外使用)こともより狭いこともある.
  • 情報源
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2025/01/21