日本語版サンフォード感染症治療ガイド-アップデート版

乳児の発熱,新生児敗血症  (2023/11/14 更新)


臨床状況

  • 生後1~29日,30~89日の乳児での>38℃の発熱.
  • 重症細菌感染(尿路感染,菌血症,髄膜炎)が約7~11%に起こる.
  • 重症細菌感染として,尿路感染症(7~9%),菌血症(1~2%),髄膜炎(0.5%)が多い.週ごとにリスクが減少.
  • 低リスクの基準(生後>29日,白血球数<15,000,尿中白血球<10/HPF(尿沈査),脳脊髄液中白血球<10)を満たしていれば,重症細菌感染の可能性は~3%.
  • 診断と評価
  • リスクを層別化するためのいくつかのアプローチ
  • 臨床的特徴,白血球数,好中球絶対数,プロカルシトニン,尿検査に基づくリスク計算を用いる(JAMA Pediatr 173: 342, 2019
  • 外見,年齢,白血球数,好中球絶対数,エンテロウイルスPCR,呼吸器ウイルス検査による層別化(Pediatrics 130: e16, 2012
  • 血液培養,尿培養を行い,高リスク例ではエンテロウイルスPCRおよび呼吸器ウイルス検査を行う
  • CRPおよびプロカルシトニンなどの炎症マーカーはリスクをさらに層別化する.プロカルシトニン(使用できるなら)によるリスク層別化がもっとも正確.
  • 細菌感染では尿路感染が最も多い.
  • 高リスク例でも,ウイルス(エンテロウイルス,ライノウイルス以外の呼吸器ウイルスなど)が原因であることが確認されれば,重症細菌感染のリスクは低い:高リスクでウイルスが陽性の場合は~5%,高リスクでウイルスが陰性なら~17%.ただし,ライノウイルスが検出された場合はリスクは低下しない(Pediatrics 113: 1662, 2004Pediatrics 141: e20172384, 2018).
  • プロカルシトニンが使用できる場合のウイルス検査の役割は不明.
  • リスク因子とHSVの手がかりを考慮:出産48時間前~48時間後の母親の性器病変,乳児の水疱,粘膜潰瘍,けいれん,高トランスアミナーゼ血症,低体温.
  • 推奨されるHSV検査:脳脊髄液PCR;HSV血液PCR;HSV培養(可能な場合)あるいはPCR検査のための口腔・鼻咽頭,結膜および肛門の表面スワブ;アラニンアミノトランスフェラーゼ

病原体

  • 病原体は,母親のスクリーニング,ワクチン接種,食物安全性により時間ととも変化する.
  • ウイルス性がもっとも多い:
  • 単純ヘルペスウイルスはまれだが,非常に重症になる.特に小胞性の皮膚病変,高トランスアミナーゼ血症,けいれん,脳脊髄液の細胞増多症があるか,治療に反応しない場合は考慮する.
  • 細菌性のもの:

第一選択

  • 細菌が原因の場合:
  • 生後<29日:(高ビリルビン血症のない満期産児ではCTRX 75~100mg/kg/日1日1回,またはCTX 200mg/kg/日6時間ごとに分割,またはABPC 200mg/kg/日6時間ごとに分割)±GM 5mg/kg/日1日1回
  • 生後>29日:低リスクの場合,CTRX 75~100mg/kg/日1日1回・細菌培養が24~36時間後も陰性となるまで.
  • 生後>29日で低リスク,尿検査,炎症マーカー正常(±腰椎穿刺正常)なら,経過観察のみとすることを検討してもよい
  • HSVリスク因子がある場合には,アシクロビル60mg/kg/日8時間ごとに分割による治療を開始し,HSV検査を依頼する.結果が陰性なら治療中止.

第二選択

  • ABPCおよびGM:かつてはゴールドスタンダードと考えられていたが,E. coliKlebsiellaその他の腸内細菌科に耐性が生じつつある.感受性データが必要である.

抗微生物薬の適正使用

  • 低リスクの患者ではウイルスが原因であることが多いため,抗菌薬治療を行わず経過観察を考慮してもよい.
  • エビデンスに基づくアルゴリズムを用いる.重症細菌感染リスクが低い乳児は,24時間後の血液培養が陰性なら,帰宅させても安全である:Pediatrics 130: e16, 2012

コメント

  • 複雑で進化しつつある領域.すべての状況ですべての診断技法が使用できるわけではない.
  • 新生児で,完全非経口栄養のようなカルシウム含有静注溶液(持続静注を含む)による治療が必要な(または必要と予測される)場合には,CTRXは禁忌である.
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2023/11/13