日本語版サンフォード感染症治療ガイド-アップデート版

Listeria monocytogenes  (2024/08/27 更新)


臨床状況

  • 軽症で自然治癒する疾患から生命を脅かす髄膜炎まで,さまざまな臨床症候群を引き起こす.
  • 新生児敗血症,菌血症,髄膜炎,脳炎(脳幹脳炎-rhombencecephalitisともよばれる),心内膜炎,発熱性胃腸炎
  • 妊婦や免疫不全患者では重症となる(免疫抑制薬を使用中の患者では,可能ならば投与量を減量すること).
  • 予後については,下記コメント参照.
  • プロトンポンプ阻害薬の使用はリステリア症のリスク増大と関連する.機序として,胃酸によるListeria殺菌の大幅な減少が考えられる(Clin Infect Dis 64: 845, 2017).
  • ABPC,ペニシリン,GM,STに感受性.

分類

  • グラム陽性桿菌

第一選択

  • 髄膜炎,髄膜脳炎(正常宿主):ABPC 2g静注4時間ごと
  • GMとの併用治療は現在では推奨されない
  • 免疫不全および免疫正常患者の菌血症,心内膜炎:髄膜炎と同様に治療
  • 妊婦の菌血症:ABPC 2g静注4時間ごと・2週
  • 新生児の髄膜炎または菌血症:ABPC 300mg/kg/日静注6時間ごとに分割(生後<7日なら8時間ごとに分割)
  • 発熱を伴う胃腸炎
  • 免疫正常者なら2日以内に自然治癒:治療の必要なし.
  • 免疫不全患者,高齢者,妊婦では,AMPC 500mg経口1日3回・3~5日,またはST2錠経口1日2回・3~5日

第二選択

  • 髄膜炎,髄膜脳炎:ST 20mg/kg/日6~12時間ごとに分割・21日
  • 妊婦の菌血症:妊娠第1期か第2期でなければ,ST 10~20mg/kg静注6~12時間ごとに分割・2週.
  • ペニシリンアレルギーでIgEを介するものでない場合,MEPM 1~2g静注8時間ごと・2週(コメント参照).

抗微生物薬適正使用

  • 抗菌薬選択で考慮すべきこと
  • VCMはin vitroでは活性があるが,臨床的失敗の報告がある.VCM耐性株も出現している.
  • LZDによる治療の症例報告がいくつかある(J Infect 52: e73, 2006).長期使用で血液毒性.
  • EMとTCは,静菌的で耐性の報告もあることから推奨されない(Lancet 335: 1422, 1990).フルオロキノロン系薬の一部(たとえばLVFX,MFLXなど)はin vitroで活性があるが,有効性についての臨床データは乏しい.
  • CPは無効.
  • セファロスポリン系は Listeria属には活性がない.

コメント

  • 臨床微生物学検査では脳脊髄液から検出された病原体を「類ジフテリア」と誤って同定することがある.
  • Listeria感染の乳児のほとんどは早産児であり,母親の感染が示唆され,早産となる.
  • 臨床的失敗と予後因子についてのMONALISAプロスペクティブコホート研究:
  • 神経リステリア症は,菌血症患者(OR 3.67, p 0.002)および補助的デキサメタゾン治療を受けている患者(OR 4.58, p 0.008)に多い.
ライフサイエンス出版株式会社 © 2011-2024 Life Science Publishing↑ page top
2024/08/26