日本語版サンフォード感染症治療ガイド-アップデート版

Listeria monocytogenes  (2026/07/28 更新)


臨床状況

  • 軽症で自然治癒する疾患から生命を脅かす髄膜炎まで,さまざまな臨床症候群を引き起こす.
  • 新生児敗血症,菌血症,髄膜炎,脳炎(脳幹脳炎-rhombencecephalitisともよばれる),心内膜炎,発熱性胃腸炎
  • リスク因子:年齢>65歳または<30歳,妊婦,アルコール症,肝硬変,免疫不全者
  • 妊婦,新生児,免疫不全患者ではより重症となる.
  • 症例多発は,未殺菌のソフトチーズや加工肉に関連している.
  • 脳脊髄液培養検査では,約4分の3の症例でL. monocytogenesが陽性(抗菌薬投与歴なし)である.抗菌薬投与歴がある場合は陽性率が低下する.
  • プロトンポンプ阻害薬の使用はリステリア症のリスク増大と関連する.機序として,胃酸によるListeria殺菌の大幅な減少が考えられる(Clin Infect Dis 64: 845, 2017).
  • ABPC,ペニシリン,GM,STに感受性.

分類

  • 微少なグラム陽性桿菌で,多形性のこともある.

第一選択

  • 中枢神経感染:ABPC 2g静注4時間ごと(またはAMPC,米国以外).GM使用についてはコメント参照
  • 免疫不全および免疫正常患者の菌血症,心内膜炎:髄膜炎と同様に治療
  • 妊婦の菌血症:ABPC 2g静注4時間ごと
  • 新生児の髄膜炎または菌血症:ABPC 300mg/kg/日静注6時間ごとに分割(生後<7日なら8時間ごとに分割)
  • 発熱を伴う胃腸炎
  • 免疫正常者なら2日以内に自然治癒:治療の必要なし.
  • 免疫不全患者,高齢者,妊婦では,AMPC 500mg経口8時間ごと・3~5日,またはST2錠経口12時間ごと

第二選択

  • 重症ペニシリンアレルギー
  • MEPM 2g静注8時間ごと(症例報告のみ:Antimicrob Agents Chemother 63: e00883, 2019;おそらくSTおよびLZDのほうが第二選択としてよいだろう)

治療期間/抗微生物薬適正使用

治療期間
  • 髄膜炎:3週
  • 脳炎または脳膿瘍:4~6週
  • 妊婦の菌血症:2週
  • 発熱を伴う胃腸炎:3~5日
抗微生物薬適正使用
  • 抗菌薬選択で考慮すべきこと
  • VCMはin vitroでは活性があるが,臨床的失敗の報告がある.VCM耐性株も出現している.
  • LZDによる治療の症例報告がいくつかある(J Infect 52: e73, 2006).長期使用で血液毒性.
  • EMとTCは,静菌的で耐性の報告もあることから推奨されない(Lancet 335: 1422, 1990).フルオロキノロン系薬の一部(たとえばLVFX,MFLXなど)はin vitroで活性があるが,有効性についての臨床データは乏しい.
  • CPは無効.
  • セファロスポリン系は Listeria属には活性がない.

コメント

  • 単剤治療 vs 併用治療
  • リステリア菌血症および神経リステリア症の治療において、β-ラクタム系抗菌薬単剤療法(ABPCまたはAMPC)とβ-ラクタム系抗菌薬GM併用療法を比較したランダム化対照比較試験はない.AMPC-GM併用療法の推奨は,in vitro,動物モデル試験,観察データのみに基づいた従来の推奨である.観察研究の結果は矛盾している(矛盾する結果の例については,Lancet Infect Dis 17: 510, 2017およびEur J Clin Microbiol Infect Dis 38: 2243, 2019を参照).
  • 最大規模の観察研究であるMONALISA試験(Lancet Infect Dis 17: 510, 2017)では,リステリア菌血症および神経リステリア症患者において,AMPC-GM併用療法は単剤療法と比較して90日死亡率が低いことが示された.しかし,神経リステリア症群では,併用療法は死亡率の低下とは関連していなかった.
  • 菌血症・神経リステリア症群では併用療法により死亡率が低下したものの、生存患者と死亡患者ではリスク因子に重要な違いがみられた.
  • 死亡患者の38%が多臓器不全を呈していたのに対し,生存患者では6%であった.既存の臓器機能不全の悪化は,死亡患者では58%にみられたのに対し,生存患者では20%であった.死亡患者の平均GCS(Glasgow Coma Score)は生存患者よりも低かった.菌血症は死亡患者の72%にみられたのに対し,生存患者では52%であった.悪性腫瘍は死亡患者の34%にみられたのに対し,生存患者では21%であった.死亡患者の平均年齢は74歳で,生存患者の平均年齢68歳よりも有意に高かった.
  • これらの多くの理由から,本研究は死亡率を高めることがよく知られている多数の因子によって交絡されており,これらの因子はGM投与の可否にも影響を与えた可能性が高い.さらに,多重比較に対する調整が行われていないため,偽発見率が高くなっている.また,不死時間バイアス(GMを1日以上投与されるには生存していなければならない)に対する調整も行われていない.したがって,GM併用療法が死亡率や神経学的後遺症を真に改善するという確信は低い(持続的な神経学的欠損のない患者102人中83人[81%]がアミノグリコシド系抗菌薬を投与されたのに対し,持続的な神経学的欠損のある患者では,79人中68人[86%]が投与された).
  • GMの毒性は,特に高齢者や併存疾患のある患者において顕著であることが知られているため,リステリア症(中枢神経系疾患その他)の治療において,GM併用療法をルーチンで使用することは推奨されない.
  • 臨床微生物学検査では脳脊髄液から検出された病原体を「ジフテロイド」と誤って同定することがある.
  • Listeria感染の乳児のほとんどは早産児であり,母親の感染が示唆され,早産となる.
  • 補助的デキサメタゾンの役割は不明確:2006年1月1日から2022年7月1日までの162人の患者を対象としたオランダの単一の前向き研究では,補助的デキサメタゾンがListeria髄膜炎の転帰の改善と関連していることが判明した(EClinicalMedidine 58: 101922, 2023).
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2026/07/27