日本語版サンフォード感染症治療ガイド-アップデート版

術後感染症の予防-産科・婦人科的手術  (2023/10/24 更新)
子宮摘出術,帝王切開,中絶


臨床状況

  • 産科・婦人科的手術時の抗菌薬による感染予防.
  • 経膣または経腹子宮摘出術
  • 帝王切開
  • 外科的中絶

病原体

  • 膣内常在菌叢:グラム陽性,グラム陰性の好気性および嫌気性細菌を含む
  • 当然のことながら,術後感染は複数菌による場合が多い:E. coliまたは他の好気性グラム陰性桿菌+Enterococcus属+Bacteroides属+嫌気性Streptococcus

第一選択

  • 経膣または経腹子宮摘出術
  • 帝王切開
  • CEZ 2g静注1回(緊急帝王切開の場合は+AZM 500mg静注1回,コメント参照)
  • IgE媒介のβラクタムアレルギーの場合については,下記第二選択参照
  • 外科的中絶(妊娠第1期)
  • DOXY 200mg経口,処置1時間前に100mg

第二選択

  • 帝王切開
  IgE媒介βラクタムアレルギー:
  • CLDM 900mg静注+(GM または TOB 5mg/kg静注)1回
  • βラクタム関連の発疹があるか,アレルギー病歴が不確かな場合,CEZによる予防がより効果的
  • 子宮摘出術

コメント

  • 経膣または経腹子宮摘出術と細菌性膣症:手術の前に細菌性膣症を治療する.
  • 子宮摘出術でグラム陰性菌をカバーするために,施設のアンチバイオグラムで標的菌種の感受性が示唆されれば,フルオロキノロン系CLDMまたはVCMとの併用で使用する方法もありうる.
  • 早期破水または自然分娩からの帝王切開:
  • 緊急帝王切開を対象とした前向きランダム化プラセボ対照試験では,CEZによる予防にAZM静注1回を追加することにより,子宮内膜炎および創感染の発症率が有意に低下した(N Engl J Med 375: 1231, 2016N Engl J Med 375: 1284, 2016).
  • 最近,動物を用いた研究結果から,新生児常在菌叢に対する抗菌薬の長期的影響について問題提起されている(Nature 488: 621, 2012).
  • 外科的中絶
  • メタアナリシスでは,抗菌薬予防投与はリスクの大きさにかかわらず有用であるとされた(Obstet Gynecol 87: 884, 1996).
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2023/10/23