日本語版サンフォード感染症治療ガイド-アップデート版

手術部位感染症の予防-概説  (2023/06/06 更新)


概説

  • 効果を最大とし,切開時の組織中濃度を高めるために,抗菌薬の投与は外科的切開の前60分以内に開始すること(N Engl J Med 326: 281, 1992).VCMとフルオロキノロン系は注入に1~2時間を要する場合があるため,切開前2時間以内に開始する.
  • 多くの適応では術前1回投与または24時間未満の持続投与が用いられる.
  • 予防薬剤の半減期の2倍以上の時間がかかる処置(一般的には4時間以上かかる手術)には,術中追加投与が必要となることもある.
  • S. aureusの積極的スクリーニング,除菌,特異的な抗菌薬による予防は,股関節,膝,心臓手術後の感染を減少させることが示された:JAMA 313: 2131, 2015JAMA 313: 2162, 2015

VCMの使用

  • 多くの予防適応で,VCMはβラクタム薬にアレルギーまたは不耐の患者でβラクタム薬の代替薬と考えられている.
  • MRSAによる術後感染症が多い施設,またはMRSA感染リスクの高い患者ではVCM使用が妥当と考えられる.
  • 一般に用いられるβラクタム薬と異なり,VCMはグラム陰性菌に活性をもたない.特定の処置後にグラム陰性菌のおそれがある場合は,適切なin vitro活性をもった他の薬剤の追加が必要または望ましいだろう.非アレルギー患者ではCEZ+VCMが使用でき,またβラクタム薬に不耐な患者ではVCM+グラム陰性菌に活性のある薬剤(たとえば,アミノグリコシド系,フルオロキノロン系,アレルギーがなければAZTも可能.施設での耐性パターンと患者側の因子が選択に影響する)が使用できる.
  • VCMヒスタミン遊離候群:
  • (特に急速の)VCM静注は,低血圧や肥満細胞からのヒスタミン遊離の他の症候を引き起こす可能性がある.真のアレルギーではない.Hospital Pediatrics 10: 623, 2020参照.

関連項目

ライフサイエンス出版株式会社 © 2011-2025 Life Science Publishing↑ page top
2023/06/05