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日本語版サンフォード感染症治療ガイド-アップデート版
術後感染症の予防-整形外科的手術
(
2021/3/23 更新
)
臨床状況
2013年の診療ガイドライン:
Am J Health Syst Pharm 70: 195, 2013
.
整形外科手術時の抗菌薬による感染予防:股関節およびその他の関節置換術,骨折.
人工関節を守るための抗菌薬予防投与は,コメントを参照.
術後感染症の予防-概説
も参照.
病原体
皮膚常在菌:
S. epidermidis
,
S. aureus
まれな病原体:好気性グラム陰性桿菌
第一選択
股関節部骨折の修復,脊髄手術,関節置換術:
CEZ
2g静注1回(体重≧120kgなら3g静注)
MRSAコロニー形成のある患者では
VCM
1g静注1回を追加(体重>90kgなら1.5g静注)(MRSA感染の頻度が高い施設での関節置換術においても推奨される).
追加投与が望ましい場合には,適切な治療用量を24時間以内に投与すること.
内固定を含む閉鎖骨折の開放的整復
CTRX
2g静注1回
第二選択
CEZにアレルギーの場合:
VCM
1g静注1回(体重>90kgなら1.5g静注)
CLDM
900mg静注1回
追加投与が望ましい場合には,適切な治療用量を24時間以内に投与すること.
注:CEZおよび他のセファロスポリン系薬に対する不耐のために上記の薬剤を用いる場合,整形外科的手術後のグラム陰性菌感染の懸念のある施設では以下の薬剤を追加すること:
AZT
2g静注1回,または
(
GM
または
TOB
)5mg/kg(補正体重)静注1回,または
CPFX
400mg静注1回
コメント
S. aureus
のコロニー形成が確認された患者では,除菌のために術前に
ムピロシン
投与を行う.
閉鎖骨折の整復:オランダの外傷研究では,感染症発生率はCTRX 3.6% vs プラセボ8.3%であった(
Lancet 347: 1133, 1996
).他の抗菌薬にも感染リスクを低下させるものがある(
Cochrane Databese Syst Rev (1): CD000244, 2001
およびその改訂
Cochrane Database Syst Rev (3): CD000244, 2010
.
人工関節,別の処置からの菌血症リスク:別部位での処置に関連する血行性感染から人工関節を守るために予防を行う(プレート,ピン,スクリューの患者にはリスクはないと考えられる).
プロスペクティブな症例対照研究では,歯科治療での抗菌薬予防は,人工股関節/膝関節感染のリスクを減少させないと結論づけられた(
Clin Infect Dis 50: 8, 2010
).
米国歯科医師協会の専門家パネルは,人工関節感染を予防するために,歯科的処置に先だって予防的抗菌薬投与を行うことは,一般的には推奨されないと結論づけている(
J Am Dent Assoc 146: 11, 2015
).
個々の環境を考慮すること:活動性の感染が疑われる組織の処置を行う場合には,抗菌薬治療が適切であることが多い.
Staphylococcus
属は広く人工関節感染の原因となるため,処置部位に
Staphylococcus
の感染またはコロニー形成があれば,抗
Staphylococcus
作用のあるβラクタムまたはVCM(菌の感受性に応じて)で予防を行うことは適切であろう.それ以外の状況では,治療選択は個々の判断に基づくべきである.
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2021/03/18