• 1987年にFDAが承認したムピロシンは，イソロイシルtRNA合成酵素に結合して細菌の蛋白合成を阻害する．
  
• 承認された適応：
  

• クリーム：感受性のあるS. aureusおよびS. pyogenes株による二次感染を起こした外傷皮膚病変の治療（長さ10cmまたは面積100cm2まで）
  
• 軟膏：感受性のあるS. aureusおよびS. pyogenes株による膿痂疹の局所治療
  

• 鼻腔のS. aureus除菌にも用いられる．
  

• ムピロシンカルシウム2％鼻腔軟膏は現在では入手できない．
  
• しかし，皮膚軟膏が鼻腔内投与に適応外処方されている．
  

• Enterococcusやグラム陰性菌には活性なし．耐性についての総説：Clin Infect Dis 49: 935, 2009．
  
• 耐性が問題なら，Bacitracin/Polymyxin B/Fradiomycin，またはRetapamulinを参照．
  
• 消毒薬および局所抗菌薬についての総説：Clin Microbiol Rev 30: 827, 2017；Clin Infect Dis 49: 1541, 2009
  

†：日本にない剤形

• 体重およびクレアチニンクリアランス（CrCl）推定値の計算法
  
• CrCl（mL/分），CAPD: 持続的携行型腹膜透析， CRRT: 持続的腎代替療法，SLED: 長時間低効率血液透析
  

• 軽症肝障害（Child-Pugh分類A）：データなし
  
• 中等症肝障害（Child-Pugh分類B）：データなし
  
• 重症肝障害（Child-Pugh分類C）：データなし
  

副作用

• 皮膚用クリーム：かゆみ，灼熱感，刺痛1～1.5％，頭痛9％，鼻炎6％，気道粘膜うっ血5％．
  

妊娠時のリスク

• FDAリスク区分（新）：ヒトでの十分なデータなし（注：局所塗布後の全身性吸収は非常に少ない）．動物での毒性のエビデンスなし1
  
• 授乳中の使用：局所塗布後の吸収率は＜1％であるため，ムピロシンの授乳中の乳児に対するリスクは低いと考えられている2
  

1. 出典：製薬会社の処方情報
   
2. 出典：Drugs and Lactation Database (LactMed)
   

• S. aureus
  
• S. epidermidis（もっとも多い分離菌）
  
• S. pyogenes
  

1. 注記のない場合は成人用製剤
   
2. SD：単回投与後，SS：複数回投与後の定常状態
   
3. V/F：（Vd）÷（経口生物学的利用能），Vss：定常状態におけるVd，Vss/F：（定常状態におけるVd）÷（経口生物学的利用能）
   
4. CrCl＞80 mL/分と想定
   
5. （胆汁中の最高濃度）÷（血清中の最高血清濃度）×100
   
6. 炎症時における脳脊髄液濃度
   
7. 薬剤投与量と微生物の感受性に基づく判定．脳脊髄液濃度は理想ではMICの10倍以上必要
   
8. AUC：血中濃度-時間曲線下面積 area under the drug concentration-time curve，0～inf＝AUC0-inf，0～ｘ時間＝AUC0-x
   

データなし

• ムピロシンに対するS. aureusの耐性率に関する報告は非常にばらつきが大きい．通常引用されるのは2.1～13.2％．2011年に実施された2093のMRSA分離株（VISA含む）の調査結果では，高度耐性菌は3.2％であった（Antimicrob Agents Chemother 58: 740, 2014）．2015年の文献レビューでは，耐性率は1～81％までさまざまだった（J Antimicrob Chemother 70: 2681, 2015）．
  
• ムピロシン鼻腔内塗布によりMRSA定着の除菌を試みた研究のデータから，除菌に失敗し，それ以前には耐性株を保有していなかった19例のうち4例で，ムピロシン高度耐性株の割合が増加したことが報告された（Antimicrob Agents Chemother 62: e00819, 2018）．