日本語版サンフォード感染症治療ガイド-アップデート版

術後感染症の予防-泌尿器科的手技  (2024/07/16 更新)
膀胱鏡検査,前立腺生検


臨床状況

  • 泌尿器科的処置を行う際の抗菌薬による感染症予防:膀胱鏡検査,前立腺生検.
  • 経直腸的前立腺生検に対して,適切な時期に抗菌薬予防を行うことで,菌血症,細菌尿,発熱,尿路感染の発症率が低下する(Cochrane Database Syst Rev 2011).

病原体

  • E. coli および他の好気性グラム陰性桿菌
  • Enterococcus

第一選択

  • 膀胱鏡検査
  • 尿が無菌なら一般に予防は必要ない[ただし,アメリカ泌尿器科学会(AUA)はいくつかのリスク因子(たとえば高齢,免疫不全,解剖学的異常など)がある患者ではフルオロキノロンSTを推奨している].
  • 尿路感染症患者では,処置前に分離原因菌に活性のある抗菌薬で治療を行う.
  • 処置を伴う膀胱鏡検査(尿管内視鏡,生検,高周波療法,経尿道的前立腺切除術)
  • CPFX 500mg経口,または
  • ST 2錠経口(耐性率が低い患者集団ではSTも選択肢となる)
  • 可能なら,尿路感染症患者では処置前に分離原因菌に活性のある抗菌薬で治療を行う.
  • 経直腸的前立腺生検
  • CPFX 500mg経口または
  • ST 2錠経口(STは,耐性率の低い患者集団での第二選択)を生検の1時間前

第二選択

  • コメント参照

コメント

  • 前立腺での高濃度が達成される薬剤,たとえばフルオロキノロン系薬,STが好ましい.しかし,フルオロキノロン耐性の多剤耐性菌による感染の報告が増加しているため,地域での耐性パターンに従うことが推奨される.フルオロキノロン耐性E. coli>20%ならば,別の選択肢を考慮する(J Urol 198: 329, 2017).
  • フルオロキノロン耐性菌による重大な血流感染が,フルオロキノロン系薬の予防投与を受けた患者で報告されている.臨床家は,感染を示唆する症状があればすぐに報告するよう患者を指導すること.手術前予防は,検出率の高い菌の感受性プロファイルを考慮し,病院ごとに決定する.
  • 耐性菌リスクが高い患者(たとえば,尿路感染症の既往/再発,免疫抑制,最近の抗菌薬使用)では,抗菌薬選択の指標として直腸スワブの培養を考慮する(Clin Infect Dis 60: 979, 2015Urology 85: 8, 2015).
  • 筋注1回投与の第二選択薬としては,第3世代セファロスポリン(CTRX)またはアミノグリコシド,たとえばGMまたはTOB 5~7mg/kg静注.
  • 第2・第3世代のセファロスポリン系薬(BMC Urol 16: 15, 2016)またはGM1回投与が第二選択として推奨されてきたが,ESBL産生またはGM耐性(あるいはそのどちらでもある)腸内細菌による感染が報告されている(Urology 74: 332, 2009).
  • メタアナリシスでは,経直腸前立腺生検後の感染予防には,フルオロキノロン系薬よりもFosfomycin trometamolの方が有効とされた(World J urol 36: 323, 2018).他のグループによる薬理学的解析では,MIC≦4μg/mLの分離株に対して,Fosfomycin trometamolを処置の1~4時間前に投与すれば有効であることが示唆されている(J Antimicrob Chemother 70: 2068, 2015).
ライフサイエンス出版株式会社 © 2011-2025 Life Science Publishing↑ page top
2024/07/16