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日本語版サンフォード感染症治療ガイド-アップデート版
術後感染症の予防-心臓血管外科手術
(
2022/2/22 更新
)
臨床状況
心臓血管外科手術において,抗菌薬予防投与の有効性は以下の処置で認められている:
腹部大動脈の再建
鼠径部の切開を含む下肢の手術
人工物あるいは異物を挿入する血管手術
虚血による下肢の切断
心臓の手術
永久ペースメーカー (
Circulation 121: 458, 2010
)
心臓移植
術後感染症の予防-概説
も参照.
2013年の診療ガイドライン参照:
Am J Health Syst Pharm 70: 195, 2013
.
病原体
S. aureus
および他の皮膚菌叢
第一選択
CEZ
2g静注1回(体重≧120kgなら3g静注),4時間後再投与
Cefuroxime
1.5g静注1回,4時間後再投与
VCM
15mg/kg1回(最大2g静注)
S. aureus
コロニー形成のある患者では,手術前夜,手術当日,手術後5日まで1日2回,
ムピロシン
鼻腔内投与.
(訳者注:
ムピロシン
に関する研究は有効・無効を含めさまざまな意見がある.上記ガイドラインを参照.
ムピロシン
を用いた多くの研究で行われた投与法が記載されている.)
第二選択
βラクタム薬アレルギーで
VCM
に不耐の場合:
CLDM
900mg静注1回,6時間後再投与
コメント
心カテーテルの場合,予防は必要でない.
切開開始前60分以内に予防投与を開始する(VCMまたはフルオロキノロン系の場合には120分)
長時間の手術では,上記のように最初の手術前投与開始から4時間の時点でCEZまたはCXM-AXの再投与が必要となることがある(
Am J Health Syst Pharm 70: 195, 2013
).
American Society of Health-System Pharmacists(ASHP)ガイドラインでは,体重に基づくVCM用量設定を採用している(15mg/kg静注1回投与).この処方では1回投与量は2gを超えないこと.
心臓外科手術では24時間まで抗菌薬予防投与を継続することがある.行う場合は,腎機能その他の因子をもとに適正な用量設定を試みる.
院内でMRSAの検出率が高い場合,または高リスク患者ではVCMは好ましい選択であり,MRSAコロニー形成のある患者では使用は必須である.しかし,グラム陰性桿菌をカバーしていないため,グラム陰性菌感染リスクがある場合には,CEZ(アレルギーでなければ)あるいは他の選択肢(たとえばフルオロキノロン系薬,AZT,アミノグリコシド系薬1剤の1回投与)を加える.
ムピロシンの鼻腔内投与について,1850例を過去の対照例と比較した研究では,胸骨創からの
S. aureus
感染が減少することが示された(
Ann Thorac Surg 71: 1572, 2001
).他の臨床試験では,鼻腔保菌者でのみ
S. aureus
院内感染が抑制された(
N Engl J Med 346: 1871, 2002
).0.12%グルコン酸クロルヘキシジンゲルの鼻腔内投与+クロルヘキシジンによる口腔リンスで,深部手術創および下気道における感染が減少したという研究がある(
JAMA 296: 2460, 2006
).
ムピロシン耐性が報告されている(
Clin Infect Dis 49: 935, 2009
).
S. aureus
コロニー形成のある患者では,手術5日前までにムピロシン鼻腔内投与1日2回を用いることもある(
Am J Health Syst Pharm 70: 195, 2013
;
Clin Infect Dis 73: 1685, 2021
).
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2022/02/17