日本語版サンフォード感染症治療ガイド-アップデート版

感染性心内膜炎-自己弁,培養陰性  (2025/12/02 更新)


臨床状況

  • 心内膜炎の所見/症状があるが(発熱,弁膜症,塞栓,心エコーでの疣贅の確認),血液培養は陰性.
  • 血液培養陰性となる可能性のある理由
  • 経験的抗菌薬治療を開始した後に血液培養を採取した
  • 増殖の遅い細菌(HACEK菌など)の検出に十分な時間をかけて培養していない
  • 病原体の検出に培養以外の方法が必要
  • 微生物抗原および/または抗体の検出
  • 血清および/または感染した心臓弁または他の適切な生検組織の分子プローブ(RT-PCR),メタゲノミクス次世代シークエンシング
  • 特殊染色による病理学的検査
  • 心内膜炎の臨床像に類似した非感染性疾患の例
  • Libman-Sacks心内膜炎を含む全身性エリテマトーデス
  • 衰弱性心内膜炎を伴う進行性腺癌
  • 抗リン脂質抗体症候群
  • 心臓粘液腫

診断/病原体

診断
  • 病歴を明確にし,広く聴取する
  • 抗菌薬と培養のタイミング
  • 詳細な疫学:リスク因子と曝露
  • 7日間培養した3セットの血液培養液
  • 疫学関連のその他の診断検査
  • CoxiellaBartonellaTropherymaBrucellaの血清学的検査
  • LegionellaCoxiellaのPCR検査のための気道分泌物
  • その他の有用になりそうな診断方法
  • 切除した弁組織(またはその他の適切な組織生検)を提出
  • 病理組織学
  • 組織のRT-PCR
  • 血清,血漿および/または組織に対して,ブロードレンジPCR(16S rDNA[細菌],18S rDNA[真菌]),メタゲノミクス次世代シークエンシングが可能
病原体
  • 血液培養を行う以前に抗菌薬治療を受けた患者:心内膜炎の典型的な原因菌による感染の可能性が高いが,抗菌薬によって抑制されている.
  • コアグラーゼ陰性Staphylococcus(人工弁感染)
  • まれで培養困難な病原体(通常の血液培養の培地ではあまり増殖しない)に感染した患者:疫学的なリスク因子に関連することが多い
  • 真菌類
  • Aspergillus
  • Histoplasma
  • Mallessezia restricta(コメント参照)

第一選択

  • 目標は,特定された病原体に応じた特異的な治療を行うこと.個々の患者の血液培養やその他の診断検査の結果が出るまでは,経験的治療が適切である.
  • 自己弁心内膜炎の疑いVCM 15~20mg/kg静注8~12時間ごと(目標AUC24 400~600μg・h/mL達成が望ましいが[AUC-用量設定の原理と計算を参照],そうでなければトラフ値15~20μg/mLを目標とする)+CTRX 2g静注12時間ごと
  • 初期(弁置換12ヵ月以内)人工弁心内膜炎の疑いVCM上記と同様+CFPM 2g静注8時間ごと+RFP 900mg静注/経口2~3回に均等に分割投与+GM 3mg/kg静注24時間ごと2~3回に均等に分割投与(コメント参照)
  • 後期人工弁心内膜炎の疑い:自然弁感染と同様にVCMCTRX
  • 「病原体」にあげた治療の難しい病原体の治療の詳細については,各病原体のページを参照.

第二選択

  • 亜急性症状があり,病気が数週間続く患者の場合は,経験的治療は必要ないことがある
  • 個々の患者の状況に応じて,VCMとABPC/SBTの経験的併用も選択肢となる
  • 上記の各病原体のページを参照

コメント

  • 早期人工弁心内膜炎の場合,GMを処方に含める必要性は不明.腎毒性または聴器毒性の懸念または問題がある場合は使用を避ける.
  • 細菌の検出にPCRを用いたドイツからの報告では,T. whippleiは細菌性心内膜炎の4番目に多い原因菌であり,培養陰性心内膜炎では最も多く,その約1/3の原因菌である(J Clin Microbiol 50: 216, 2012).
  • Malassezia restrictaによる培養陰性心内膜炎の3例の報告:エキノキャンディン治療に耐性.Clin Infect Dis 73: 1223, 2021を参照.
ライフサイエンス出版株式会社 © 2011-2026 Life Science Publishing↑ page top
2025/12/01