日本語版サンフォード感染症治療ガイド-アップデート版

感染性心内膜炎-Streptococcus   (2021/07/27 更新)
心内膜炎,Streptococcus属および関連する菌の培養陽性


臨床状況

  • Streptococcusによる心内膜炎の特異的治療
  • 心内膜炎の所見および症状:血液培養または弁組織培養でS. gallolyticus(旧名S. bovis),viridans streptococciなどの関連微生物が陽性(または,培養陰性例では弁組織の核酸増幅検査陽性).
  • 感受性試験の結果が出ている場合の特異的治療(治療選択はMICの結果に基づく)

病原体

  • PCGのMIC≦0.12μg/mL
  • viridans streptococci(D群)
  • S. gallolyticus
  • PCGのMIC>0.12μg/mL~<0.5μg/mL
  • viridans streptococci(D群)
  • S. gallolyticus
  • PCGのMIC≧0.5μg/mL
  • viridans streptococci(D群)
  • S. gallolyticus
  • NVS(Nutritionally variant streptococci),たとえば:
  • Granulicatella elengans
  • Granulicatella adjacens
  • Abiotrophia defectiva

第一選択

PCGのMIC≦0.12μg/mL(viridans streptococci(D群),S. gallolyticus),自己弁:
  • CTRX 2g静注24時間ごと・4週
  • PCG 1200~1800万単位/日静注4時間ごとに分割・4週
  • 人工弁の場合
  • PCG 2400万単位/日静注4時間ごとに分割,またはCTRX 2g静注24時間ごと)・6週,または
  • VCM 15mg/kg静注12時間ごと・6週.目標AUC24 400~600μg・h/mL達成が望ましいが(AUC-用量設定の原理と計算を参照),そうでなければトラフ値15~20μg/mLをめざす.
PCGのMIC>0.12~<0.5μg/mL(viridans streptococciまたはS. gallolyticus),自己弁:
  • PCG 2400万単位/日静注4時間ごとに分割,またはCTRX 2g静注24時間ごと)・4週+GM 3mg/kg静注24時間ごと・最初の2週
  • CTRXのMIC≦0.5μg/mL(EUCASTブレイクポイント.コメント参照)なら,CTRX 2g静注24時間ごと・4週
  • 人工弁の場合:
  • PCG 2400万単位/日静注4時間ごとに分割,またはCTRX 2g静注24時間ごと)・6週+GM 3mg/kg静注24時間ごと・6週,または
  • VCM 15mg/kg静注12時間ごと・6週.目標AUC24 400~600μg・h/mL達成が望ましいが(AUC-用量設定の原理と計算を参照),そうでなければトラフ値15~20μg/mLをめざす.
PCGのMIC≧0.5μg/mL(viridans streptococciまたはS. gallolyticusまたはAbiotrophia属,Gemella属またはGranulicatella属),自己弁:
  • PCG 2400万単位/24時間・4時間ごとに分割・4週+GM 1mg/kg静注8時間ごと・4週
  • ABPC 12g/日静注4時間ごとに分割・4週+GM 1mg/kg静注8時間ごと・4週
  • viridans streptococciまたはS. gllolyticusでCTRXのMIC≦0.5μg/mL(EUCASTブレイクポイント.コメント参照)なら,CTRX 2g静注24時間ごと・4週+GM 1mg/kg静注8時間ごと・4週
  • 人工弁の場合:
  • PCG 2400万単位/日静注4時間ごとに分割,またはABPC 2g静注4時間ごと)・6週+GM 1mg/kg静注8時間ごと・6週,または
  • VCM 15mg/kg静注12時間ごと・6週.目標AUC24 400~600μg・h/mL達成が望ましいが(AUC-用量設定の原理と計算を参照),そうでなければトラフ値15~20μg/mLをめざす.

第二選択

PCGのMIC≦0.12μg/mL,自己弁:
  • VCM 15mg/kg静注12時間ごと・4週.目標AUC24 400~600μg・h/mL達成が望ましいが(AUC-用量設定の原理と計算を参照),そうでなければトラフ値15~20μg/mLをめざす.
  • [(PCG 1200~1800万単位/日静注4時間ごとに分割,またはCTRX 2g静注24時間ごと)+GM 3mg/kg静注24時間ごと]・2週(コメント参照)
PCGのMIC>0.12~<0.5μg/mL,自己弁:
  • VCM 15mg/kg静注12時間ごと・4週.目標AUC24 400~600μg・h/mL達成が望ましいが(AUC-用量設定の原理と計算を参照),そうでなければトラフ値15~20μg/mLをめざす.
PCGのMIC≧0.5μg/mL,自己弁:
  • VCM 15mg/kg静注12時間ごと・4週.目標AUC24 400~600μg・h/mL達成が望ましいが(AUC-用量設定の原理と計算を参照),そうでなければトラフ値15~20μg/mLをめざす.
  • 人工弁:viridans streptococciまたはS. gallolyticusでCTRXのMIC≦0.5μg/mL(EUCASTブレイクポイント.コメント参照)なら,CTRX 2g静注24時間ごと・6週+GM 1mg/kg静注8時間ごと・6週.

抗微生物薬適正使用

  • 感染症専門医へのコンサルテーションが推奨される.
  • ペニシリン系薬やCTRXにアレルギーがあるか不耐な患者では,VCM 15mg/kg12時間ごと・4週.目標AUC24 400~600μg・h/mL達成が望ましいが(AUC-用量設定の原理と計算を参照),そうでなければトラフ値15~20μg/mLをめざす.
  • 感染した弁膜の除去が必要であり,弁膜からの培養が陰性であれば,手術後の抗菌薬治療は2週間で十分(Clin Infect Dis 41: 187, 2005).

コメント

  • CLSIブレイクポイントではCTRXは≦1.0μg/mLで感受性だが,EUCASTのブレイクポイントは≦0.5μg/mL.EUCASTのほうが保守的であり,編者らは,ペニシリンMIC>0.12μg/mLのviridans streptococciまたはS. gallolyticusに対する,CTRXの有効性とMICとの関連データがほとんどない現状では,こちらのほうが望ましいと考える.
  • viridans streptococciまたはS. gallolyicus感染でペニシリンMIC≦0.12μg/mLならば,多くの場合4週治療が好ましい.次のような患者では2週治療は避ける:年齢>65歳,心内または心外膿瘍がある,CrCl<50mL/分,第8脳神経機能障害,Abiotrophia属,Granulicatella属,Gemella属感染.
  • GM用量が1mg/kg静注8時間ごとなら,GMの目標血清濃度はピーク値3~4μg/mL,トラフ値<1μg/mL.毒性を注意深くモニターすること.肥満患者では用量調整についてのコンサルテーションが推奨される.
  • VCMヒスタミン遊離症候群を避けるため,VCMの静注は1時間以上かける.
  • S. gallolyticusは潜在的な消化管病変を示唆する:
  • 他の細菌,たとえばBacteroides属,Clostridium属,Fusobacterium属による菌血症を伴い,直腸癌が潜在するリスクが高い(Gastroenterology 155: 383, 2018).
ライフサイエンス出版株式会社 © 2011-2024 Life Science Publishing↑ page top
2022/09/27