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日本語版サンフォード感染症治療ガイド-アップデート版
Mycobacterium chimaera
(
2023/12/05 更新
)
非結核性抗酸菌,
M. chimaera
,熱交換機
臨床状況
Mycobacterium avium
complex(MAC)の一種である
Mycobacterium chimaera
感染は,心肺のバイパス手術で用いられる熱交換機(Heater-cooler unit:HCU)に関連する(総説については,
Curr Opin Infect Dis 30: 388, 2017
;
Infect Cotrol Hosp Epidemiol 43: 1333, 2022
参照).
HCU(特にLivaNova 3T HCU)で生成された汚染エアロゾルにより菌が伝播される.
感染のほとんどは術後2年以内に明らかになるが,潜伏期間が5年に及ぶこともある.
感染のタイプには,脈絡網膜炎,心内膜炎,胸骨感染,グラフト感染,播種性感染がある.播種性脳炎を伴う3症例:評価と治療の推奨されるステップを含む(
Clin Infect Dis 70: 692, 2020
).
病原体
Mycobacterium chimaera
第一選択
HCU関連感染を含む重症例(
Clin Infect Dis 68: 1244, 2019
参照):
以下から選択される4~5剤の処方・MAC治療と同様(コメント参照)
AZM
500mg静注/経口1日1回,または
CAM
500mg経口1日2回
RFP
600mg静注†/経口1日1回,または
RBT
300mg経口1日1回
EB
15mg/kg経口1日1回
AMK
15mg/kg静注1日1回または週3回(最初の処方を含む,それ以降は忍容性に応じて)
MFLX
400mg静注†/経口1日1回
クロファジミン
100mg経口1日1回
LZD
600mg経口/静注1日1回または2回
ベダキリン
400mg経口1日1回・2週を初期投与として,その後200mg経口週3回(24週を超える使用についての研究はない)
(†:日本にない剤形)
第二選択
HCU関連や播種性でない軽症例:
治療推奨については,
Mycobacterium avium-intracellulare
参照
コメント
87の臨床的分離株のin vitro感受性検査の結果(
Antimicrob Agents Chemother 63: e00755, 2019
)
すべての分離株はCAMに感性(AZMは検査せず)
98%はAMKおよびSTに感性
91%はEBに感性
82%はRFPに感性
52%はMFLXに耐性
39%はLZDに耐性
薬剤関連の有害事象が多い.以下のようにモニターする:
月に1回血算,代謝関連,炎症性マーカーの検査を行う
AMKの投与中:血清クレアチニン検査を週1回,オージオグラムを月1回,前庭徴候および症状の確認を月1回
EB:色覚検査を開始時,その後3~6カ月ごとに行う
ベダキリン:QT間隔を心電図により開始時,2,12,24月後,MFLX併用の場合には週1回モニターする.心電図検査で繰り返しQTc>500msなら治療中止.
LZD:血液学的毒性および神経障害(特に視神経障害)をモニターする.
治療期間は確立されていない:12~24カ月またはより長期.人工素材植込みを維持する場合は生涯の抑制治療を考慮する(
Diagn Microbiol Infet Dis 86: 382, 2016
;
Clin Infect Dis 68: 1244, 2019
).
死亡率は高く50%に達し,とくにHUC関連感染例では治癒しないこともある.
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2023/12/04