日本語版サンフォード感染症治療ガイド-アップデート版

Mycobacterium avium-intracellulare-免疫正常患者  (2024/06/25 更新)
非結核性抗酸菌


臨床状況

  • 免疫正常患者における非結核性抗酸菌肺感染.
  • M. avium-intracellulare complex (MACまたはMAI) 感染は免疫正常患者(本項目)と免疫不全患者の両方で起きる.
  • “古典的"肺MAC:50~75歳男性,喫煙者,COPD.
  • “新" 肺MAC:30~70歳女性, 脊柱側弯症,僧帽弁逸脱,(気管支拡張症),漏斗胸(“Lady Windermere症候群").インターフェロンγ欠損と関連していることもある.
  • ホットタブ使用が関連していることもある(過敏性肺炎).
  • TNFα阻害薬による治療は,MAC感染のリスクおよび他の非結核性Mycobacterium感染のリスクを増大させる(Emerg Infect Dis 15: 1556, 2009).
  • 治療は臨床像に基づく:
  • 結節性/気管支拡張型
  • 空洞病変

病原体

  • M. avium-intracellulare complex (MAC,MAI)

第一選択

  • 結節性/気管支拡張型:
  • AZM 500mg週3回+EB 25mg/kg週3回+RFP 600mg週3回
  • 進行性または重症の病変,マクロライド耐性がある場合,以前に治療を受けている場合には,空洞病変と同様の1日1回治療を考慮する.下記参照.
  • 治療期間は,培養陰性化後少なくとも12カ月
  • 空洞病変:
  • AZM 250~500mg/日+EB 15mg/kg/日+RFP 10mg/kg/日600mgまで+AMK 15~25mg/kg静注または筋注週3回(30分注入後30分で採取した検体で血清ピーク濃度65~80μg/mL,トラフ濃度<5μg/mLが得られるよう用量調整)・最初の2~3カ月
  • 治療期間:培養陰性化後少なくとも12カ月
  • 上記の処方に反応しない難治性肺感染(6カ月以降でも培養陰性にならない場合と定義される):
  • AMKリポソーム吸入懸濁液†590mg/8.4mL(1バイアル)1日1回(Lamira Nebulizer Systemのみで吸入)を,標準的な経口処方に追加(コメント参照)
  • 6カ月までに喀痰培養陰性とならなかった患者において,治療延長による培養陰性化は6カ月延長で9.6%,12カ月延長で13.7%であった(Ann Am Thorac Soc 18: 1147, 2021).

(†:日本にない剤形)

第二選択

  • CAM 500mg1日2回毎日または週3回はAZMに代わる選択肢
  • RBT 300mg1日1回(CAMなら150mgを用いる)または300mg週3回はRFPに代わる選択肢
  • AMK 10~15mg/kg1日1回を毎日投与してもよい(30分注入後30分で採取した検体で血清ピーク濃度35~45μg/mL,トラフ濃度<5μg/mLとなるよう用量調整)
  • SM 10~15mg/kg静注/筋注1日1回または15~25mg/kg週3回はAMKに代わる選択肢
  • AMKリポソーム製剤が使用できない場合,AMK吸入†が1つの選択肢となる:硫酸AMK 250mg/mLを3mLの生食で希釈してジェットネブライザーで1日1回または2回吸入
  • 気管支拡張型または空洞病変に対し,CLF 100mg+(CAM 500~1000mg/日またはAZM 250mg/日)+EB 15mg/kg/日が,RFP+(CAMまたはAZM)+EBと同等であったとの1つの報告がある(Chest 149: 1285, 2016).

(†:日本にない剤形)

抗微生物薬適正使用

  • 以前に治療を受けた場合,6カ月治療後も喀痰培養が陰性化しない場合,病変が広範な場合は専門医へのコンサルテーションが推奨される.
  • 治療はAMKおよびマクロライドに対するin vitro感受性の確認に基づいて行う.AMK耐性のブレイクポイントは注射製剤でMIC≧64μg/mL,リポソーム吸入懸濁液†で≧128μg/mLであり,分離株が耐性の場合はこれらの製剤を処方に含めないこと.

(†:日本にない剤形)

コメント

  • AMKまたはSMを除き,間欠的投与(すなわち,週3回)による治療は下記の患者には推奨されない :
  • 空洞病変のある患者
  • 既治療の患者または重症の患者
  • AMKリポソーム吸入懸濁液の多剤最適治療(OBT)への追加により,29%の患者で6カ月までに喀痰培養陰性化(連続して3カ月で喀痰培養が陰性)が達成された一方,OBTのみの患者での達成率は8.9%であった(Am J Respir Crit Care Med 198: 1559, 2018).
  • 嚢胞性線維症患者は臨床試験から除外されたため,嚢胞性線維症患者に対する有効性は不明.
  • 過敏性気道疾患の既往のある患者では,治療前の気管支拡張薬吸入を考慮する.
  • 過敏性肺臓炎,喀血,気管支けいれん,場合によっては入院が必要になるような基礎肺疾患の悪化など,呼吸器副作用が増大するリスクがある.

(†:日本にない剤形)

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2024/06/25