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日本語版サンフォード感染症治療ガイド-アップデート版
Streptococcus
による咽頭炎
(
2024/07/16 更新
)
臨床状況
小児または成人で,急性咽頭炎の所見/症状がある.
Streptococcus
pyogenes
(A群)による咽頭炎とウイルス性咽頭炎を臨床的に区別することはできない.
鼻漏,口腔潰瘍,咳および/または嗄声の合併があればウイルス性咽頭炎である可能性が大きく,
Streptococcus
咽頭炎の検査や治療は適応とならない.
治療の必要性の決定には特異的診断が必要となる.
治療によってわずかながら臨床症状を短縮させ,化膿性の続発症のリスクおよび他者への感染リスクを低下させ,
Streptococcus
感染後急性リウマチ熱(発展途上国ではいまだに問題)を予防できる.
治療によって,
Streptococcu
s感染後の糸球体腎炎リスクが低下することはない.コメント参照.
重要な注:患者の臨床症状と
S. pyogenes
検出との一貫性に留意すること.患者が咽頭炎,鼻炎,喉頭炎を呈している場合,病因はウイルスであり,検出された
S. pyogenes
は定着によるものである.
Streptococcus
にょる咽頭炎に類似する疾患については,
J Emerg Med 54: 619, 2018
を参照.
急性咽頭炎の原因微生物の鑑別,および治療推奨の根拠となったデータについてはIDSAガイドラインを参照:
Clin Infect Dis 55: e86, 2012
;
Clin Infect Dis 55: 1279, 2012
.
病原体/診断
病原体
S. pyogenes
(A群溶血性
Streptococcus
)
Streptococcus
属,C群またはG群
診断
迅速抗原検出検査(RADT)を開始する.
RADTは,かなりの数の患者で感染の検出に失敗する.したがって,RADTが陰性で咽頭痛のみの場合には,確認のための検査が適応となる.
咽頭培養が現在の標準であるが,POC(point of care) PCR検査がFDAにより承認された(Cobas社,Alere社).
Clin Infect Dis 59: 643, 2014
参照
第一選択
Penicillin VK
(第一選択).有効性が高く,抗菌活性スペクトラムが狭く,薬剤性発疹のリスクは低い.可能なら食事の30分前に服用.
成人:500mg経口1日2回・10日
小児(体重別)
体重≦27kg:250mg経口1日2回または3回・10日
体重>27kg:500mg経口1日2回・10日
治療期間の追加に関する議論については,抗微生物薬適正使用を参照
AMPC
:
成人:500mg経口1日2回・10日
小児:50mg/kg(最大1000mg)経口24時間ごと・10日,または25mg/kg(最大500mg)経口1日2回・10日
AMPC懸濁液のほうがPenicillin VK懸濁液より服用しやすいことがある.
経口治療中,患者のコンプライアンスの懸念のため1回投与が望ましい場合は,
PCG
(ベンジルペニシリンベンザチン)を用いてもよい
体重≧27kg:120万単位筋注†1回
体重<27kg:60万単位筋注†1回
(†:日本にない剤形)
第二選択
ペニシリンアレルギーによる皮疹が発現した(ただしIgE関連の反応の既往やエビデンスがない)場合
CEX
(ペニシリンに対するアナフィラキシーの既往がある場合は避ける)
成人:500mg経口1日2回・10日
小児:25mg/kg/回(最大500mg)経口1日2回・10日
使用可能な他の経口セファロスポリン系薬:たとえば,
Cefadroxil
,
CCL
,
Cefuroxime
,
Loracarbef
(米国では販売中止),
CFDN
,
CPDX-PR
FDAは
CFDN
と
CPDX-PR
の5日治療を承認しているが,その他の薬剤は10日治療.
成人:
CFDN
300mg経口1日2回・5日,または
CPDX-PR
100mg経口1日2回・5日
小児:
CFDN
7mg/kg12時間ごと・5日,または
CPDX-PR
10mg/kg経口1日4回に分割・5日
CLDM
成人:300mg経口1日3回・10日
体重≦70kgの小児:1回7mg/kg(最大300mg)経口1日3回・10日
注:A群
S. pyogenes
のin vitro耐性が増加している
2015年からの報告では13%:
Pediatr Infect Dis J 36:53,2017
.
2023年のCDC ABCの発表では34%
2017年の中国からの報告では94%:
Frontier Microbiol 8: 2017, 2017
.
咽頭炎治療での臨床的失敗の報告はない.
βラクタム薬に対するIgE関連の重症アレルギー反応の可能性がある場合の第二選択
CAM
(耐性あり:耐性率は地域および期間によって異なる)
成人:250mg経口1日2回・10日
小児:7.5mg/kg経口1日2回・10日
AZM
(耐性あり:耐性率は地域および期間によって異なる)
成人:初日500mg経口,その後250mg経口1日1回・4日
小児:12mg/kg経口24時間ごと・5日(最高の除菌率に関連:
Clin Infect Dis 40: 1748, 2005
),または12mg/kg経口1日および6mg/kg/日・4日(IDSA推奨:
Clin Infect Dis 55: e86, 2012
)
抗微生物薬適正使用
耐性あるいは臨床的失敗の可能性があるため,フルオロキノロン系薬,スルホンアミド,テトラサイクリンは用いないこと.CFDNおよびCPDXは他の第二選択と比べて活性スペクトラムが過度に広い.
治療期間(小児):6歳以上の小児を対象とした,A群
Streptococcus
による咽頭扁桃炎に関するプロスペクティブランダム化試験において,Penicillin VK 800mg経口1日4回・5日と1000mg経口1日3回・10日が比較され,臨床的および微生物学的奏効は同等であった.したがって,5日処方の方が10日処方より好ましいと考えられる(
BMJ 367: 15337, 2019
).
コメント
抗菌薬の他の選択肢
他のセファロスポリン経薬(ペニシリン系薬に対するアナフィラキシーの既往がある場合は避ける)は,5日以上の投与で安全かつ有効(
Diagnostic Midrobiol Infect Dis 59: 127, 2007
)
CLDM:
S.
pyogenes
(A群)のin vitro耐性増加については上記参照
診断のポイントは
S. pyogenes
(A群)の存在を同定することにある.
咽頭スワブを用いる迅速抗原検出検査(RADT)は特異度95%,感度70~90%.
RADTが陰性なら,咽頭培養またはponit of care PCRによるバックアップを行う.
3歳未満の小児では
Streptococcus
による咽頭炎および急性リウマチ熱はまれであるため,RADTの必要はない.
治療終了時のRADTや培養は不要.無症状の家庭内接触者もRADT,培養は不要.
培養により
Streptococcus
C群またはG群,
S. pyogenes
が同定されることがある.
急性咽頭炎の原因菌としてはC群が多く,食物から感染することもあり,また明確な流行の記録もある.
急性咽頭炎の病原菌としてのG群の役割は不明.
C,Gどちらの群も抗菌薬治療の明らかな有用性はなく,感染後の免疫的な後遺症(たとえば,急性リウマチ熱,糸球体腎炎)の危険はない.
以下の抗菌薬は推奨されない
テトラサイクリン系:
S. pyogenes
高度耐性株のため
フルオロキノロン系:不必要にスペクトラムが広く,小児で軟骨障害リスクがあるため
ST:耐性が考えられる.細菌はin vivoで外因性チミジンおよび葉酸を利用しうるので,STによる酵素阻害を回避できる.臨床的失敗が報告されている(
J Clin Microbiol 50: 4067, 2012
;
J Clin Microbiol 51: 1350, 2013
).
Fusobacterium necrophorum
14~20歳の咽頭炎患者の13.5%で咽頭培養によって確認された(
J Clin Microbiol 55: 1147, 2017
).
化膿性(敗血症性)静脈炎(Lemierre症候群)を引き起こすことがある.咽頭粘膜の炎症によりリスクが増大する.
急性咽頭炎の主要な病原体の1つと考えられるが,さらなるデータが必要.
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2024/07/16