日本語版サンフォード感染症治療ガイド-アップデート版

市中肺炎(CAP),成人,入院患者  (2026/05/19 更新)


臨床状況

  • 市中肺炎(CAP)と確診,または疑いのある成人で,入院を要するほどの重症度または合併症がある患者に対する経験的治療
  • 入院の必要性と疾患の重症度を評価するために有用な2つの指標

病原体/診断

病原体
  • CAPの多くの例では病原体が検出されず,また細菌よりウイルスが原因であることのほうが多い(N Engl J Med 373: 415, 2015).
  • 合併症なし
  • S. pneumoniae
  • 合併症あり
  • アルコール依存症:S. pneumoniae,口腔内嫌気性菌,Coliforms
  • COPD:H. influenzaeM. catarrhalisS. pneumoniaeLegionella
  • 静注薬使用者:S. aureus
  • 誤嚥性肺炎:口腔常在菌,S. pneumoniae
  • 気管支閉塞後:S. pneumoniae,口腔内嫌気性菌
診断
  • 重症CAP患者およびCAP患者で挿管されている場合は血液および喀痰培養が推奨される.
  • ICUでなく,重症でない肺炎
  • 抗菌薬を開始する前に,培養および感受性検査のための喀痰を採取する
  • IDSA CAP クリニカルパスは,以下のいずれかがある場合でのルーチンの培養を推奨している:(1)直近90日以内の入院と抗菌薬注射治療,(2) MRSAまたはP.aeruginosaに対し経験的カバーをするとき,(3)進行した構造的肺疾患
  • 旅行やその他の疫学的リスク因子がある場合には,Legionella pneumophilaの喀痰PCRまたは尿中抗原
  • 呼吸器ウイルス(COVID-19,インフルエンザ,あるいはその他のウイルス,抗菌薬de-escalatinを促進するため)検出のための鼻咽頭スワブのPCR
  • 利用可能な場合は,各病院のガイドラインに基づいて血清プロカルシトニン(PCT)を考慮.
  • ウイルス診断が陽性で,細菌の重複感染の疑いが低ければ(たとえば,プロカルシトニン<0.25ng/mL),抗菌薬治療の延期を考慮する(IDSA CAPクリニカルパス
  • ICU
  • 上記と同様
  • 挿管された患者:気道吸引物または気管支肺胞洗浄液[BAL]を培養のために採取
  • 挿管されていない患者:培養のために喀痰採取を試みる
  • 挿管されている患者,挿管されていない患者の双方について
  • 鼻腔スワブでのMRSA培養またはPCRは陰性適中率が95~98%と優れており,MRSA感染を除外できるが,陽性適中率は40~57%と低い(Clin Infect Dis 18: 1, 2018
  • 可能性のある病原体(細菌,ウイルス)を検出するための分子生物学的手法は,より対象を絞った抗菌薬治療を可能とし,治療の安全性と有効性の向上につながるはずである.

第一選択

  • CTRX 2g静注24時間ごと,またはCTX 2g静注8時間ごと)+AZM 500mg静注24時間ごと
  • LVFX 750mg静注または経口24時間ごと(重症CAPに対する単剤治療では推奨されない)
  • MRSAまたはPseudomonasの経験的カバーが必要となる場合については,下記抗微生物薬適正使用参照.
  • 重症CAP
  • 補助的コルチコステロイド使用は重症CAPに限られる(重症CAPの定義および用量については下記コメント参照).
  • 観察研究のデータは,S. pneumoniaeによる菌血症に対するβラクタム薬+AZM併用処方には生存率上昇の効果があることを示唆している(Clin Infect Dis 75: 2219, 2022).

第二選択

  • CTRX 2g静注24時間ごと,またはCTX 2g静注8時間ごと)+DOXY 100mg静注†/経口12時間ごと
  • LVFXに替えて,MFLX 400mg静注†/経口24時間ごと,またはGFLX 400mg静注†/経口†(米国外)24時間ごとが使用できる
  • ABPC/SBT 3g静注6時間ごと+(AZM 500mg静注24時間ごと,またはDOXY 経口/静注†12時間ごと)
  • 重症でないCAP患者で,βラクタム,マクロライド,フルオロキノロンが使用できない場合には,以下のどちらかを考慮する.
  • Lefamulin 150mg静注12時間ごと,または600mg経口12時間ごと・5~7日
  • Omadacycline 200mg静注第1日,その後100mg静注1日1回,または300mg経口12時間ごと第1日,その後300mg経口1日1回・7~14日

(†:日本にない剤形)

治療期間/抗微生物薬適正使用

治療期間
  • 通常は5~7日治療.
  • 最近のデータでは最低3~5日治療の有効性が示唆されている.
  • 臨床的に安定とは,体温37.8℃以下,心拍数100未満,呼吸数<24回/分,室温での動脈血酸素飽和度>90%,収縮期血圧>90mmHg,精神状態が正常と定義される
  • より短期のコースに関する文献
抗微生物薬適正使用
  • 患者の状態が安定し,経口薬を服用できるようになったら,治療コースを完了するために,非経口薬から経口薬への段階的減量が適切である.
  • 培養および感受性試験(肺炎-概説を参照)の結果に基づいて処方を選択(可能な場合).または,肺炎-市中感染,成人,外来患者に推奨されている経口処方を選択
  • MRSAまたはP. aeruginosaのカバーは,以下のようなリスク因子がない場合にはルーチンには適応とならない
  • MRSAのリスク因子
  • 重症でないCAP:MRSAの定着または呼吸器感染の既往
  • 重症CAP:直近90日以内に入院および注射抗菌薬の使用,またはMRSAの定着/過去にMRSA分離,特に1年以内に気道からの分離.
  • 注射薬物使用者またはインフルエンザ関連CAPではMRSAのカバーを考慮する.
  • P. aeruginosaのリスク因子
  • 重症でないCAP:進行した構造的肺疾患またはP. aeruginosaの定着または感染の1年以内の既往
  • 重症CAP:直近90日以内に入院および注射抗菌薬の使用,またはP. aeruginosaの気道への定着または感染の記録.
  • MRSAまたはP. aeruginosaに経験的なカバーを行う場合には,培養および鼻腔検体のPCRを行い,陰性の場合はde-escalation,陽性の場合は治療継続の必要性を検討する.
  • MRSAに対して,喀痰グラム染色および培養の結果が得られるまで
  • VCM 15~20mg/kg静注8~12時間ごとを追加(目標AUC24 400~600μg・h/mL達成が望ましいが[AUC-用量設定の原理と計算を参照],そうでなければトラフ値15~20μg/mLをめざす),またはLZD 600mg経口/静注を追加
  • P. aeruginosaに対して,喀痰グラム染色および培養の結果が得られるまで
  • CTRX,CTX,ABPC/SBTを,PIPC/TAZ 4.5g静注(4時間以上かけて)8時間ごと,またはMEPM 1g静注8時間ごと,またはCFPM 2g静注8時間ごと,またはCAZ 2g静注8時間ごとに替える.
  • 肺炎および重症敗血症患者に対する6時間以内の抗菌薬投与により,生存率が改善した(Eur Respir J 39: 156, 2012).
  • 末端臓器臓器または敗血症性ショックの兆候を伴う敗血症状態の患者では,1時間以内に抗菌薬投与を開始するのが理想的.
    末期期間の發
  • 呼吸器ウイルス検査が陽性のCAP患者のほとんどは,細菌による重複感染を起こしてはいない.
  • 抗菌薬投与を行うかどうかの決定に際しては,疾患の重症度と臨床所見および検査所見を考慮した個別的なアプローチが安全であると思われる.

コメント

  • 各研究は,対象患者の登録基準,重症肺炎の定義,使用されるコルチコステロイドおよび投与量に関して異なっている.
  • 重症肺炎の定義-編者らは以下の基準を推奨する
  • 人工呼吸器(侵襲的または非侵襲的)が開始され,呼気終末陽圧(PEEP)レベルがすくなくとも5cmH2O.
  • 高流量鼻カニュラによる酸素供給が開始され,動脈血酸素分圧/吸入気酸素濃度(P/F比)が300未満で,FiO2が50%以上.
  • 推定P/F比が,非再呼吸マスクを付けている患者で300未満.
  • Pneumonia Severity Index>130で,最も死亡率が高いV群に該当する.
  • 推奨されるコルチコステロイド処方:
  • ヒドロコルチゾン200mg/日(または等価用量のデキサメタゾン,Prednisone,プレドニゾロン,メチルプレドニゾロン)持続静注,または50mg静注6時間ごと・7日まで
  • ICU退室できれば,処方は中断する.
  • 挿管抜去,酸素供給の低下,血行動態安定など臨床的に安定した患者では,より短期の処方を考慮する.
  • 挿管されているCAP患者および重症CAP患者では,血液と喀痰の培養が推奨される.
  • 中等または重症の市中肺炎の入院患者において,βラクタム/マクロライド併用はβラクタム系単独投与(フルオロキノロン単独投与の患者は含まれていない)に比べアウトカムを改善したが,軽症患者では改善はみられなかった(Thorax 68: 493, 2013N Engl J Med 389: 632, 2023).
  • ガイドライン
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2026/05/18