日本語版サンフォード感染症治療ガイド-アップデート版

傍咽頭腔感染  (2023/11/28 更新)
傍咽頭腔感染;扁桃周囲膿瘍,咽頭後方,下顎下


臨床状況

  • 口部および隣接する腔の感染.歯,扁桃腺,耳下腺,中耳,鼻洞の感染病巣によって起こる.
  • さまざまな傍咽頭腔で感染が起こりうる:
  • 歯の衛生状態不良,抜歯,異物(例,爪楊枝,魚の骨)によって引き起こされる.
  • 気道の注意深い観察を行う.1/3は気管内挿管が必要.

診断/病原体

診断
  • 膿瘍を同定するためにMRIやCTを行う.発見されれば外科的ドレナージの適応.
  
病原体
  • 複数菌,感染巣となる隣接粘膜面の正常細菌叢
  • 培養すると平均で5~6種の菌が検出され,10対1の比で嫌気性菌が好気性菌を上回る.
  • 複数菌感染:
  • 嫌気性菌(主要な病原体):
  • その他の菌が検出されることは少ない:MRSA,P. aeruginosaを含む好気性グラム陰性桿菌.後者は高リスク群でみられる:違法薬物の使用,糖尿病,好中球減少,外傷後.

第一選択

経験的治療
  • 緊急の外科的ドレナージを施行し,好気性および嫌気性培養を行う.経験的治療はS. aureusPseudomonas aeruginosa感染の可能性がある場合に対するものではない:標的治療を参照.
  • CTRX 2g静注24時間ごと+MNZ 500mg静注8時間ごと
  • LVFX 750mg静注24時間ごと+CLDM 600mg静注8時間ごと
  • ABPC/SBT 3g静注6時間ごと(注:耐性E. coliの検出率が増加している)
標的治療
  • 培養陽性の場合や免疫不全患者,合併症リスクの高い患者では外科的ドレナージを行う
  • 培養陽性またはS. aureusリスクの高い場合:VCM 15~20mg/kg静注8~12時間ごと(目標AUC24 400~600μg・h/mL達成が望ましいが[AUC-用量設定の原理と計算を参照],そうでなければトラフ値15~20μg/mLをめざす)を追加
  • 培養陽性またはP. aeruginosaリスクの高い場合:
  • PIPC/TAZ 初回4.5g静注,その4時間後から4.5g4時間以上かけて静注を開始,8時間ごとに繰り返す
  • CFPM 2g静注+MNZ 500mg静注8時間ごと

第二選択

  • なし

抗微生物薬適正使用

  • 感染巣のコントロール状況や患者の臨床反応に応じて2~3週治療する.
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2023/11/27