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日本語版サンフォード感染症治療ガイド-アップデート版
傍咽頭腔感染
(
2023/11/28 更新
)
傍咽頭腔感染;扁桃周囲膿瘍,咽頭後方,下顎下
臨床状況
口部および隣接する腔の感染.歯,扁桃腺,耳下腺,中耳,鼻洞の感染病巣によって起こる.
さまざまな傍咽頭腔で感染が起こりうる:
舌下,下顎下(両側性なら
ルートヴィヒアンギナ
),咽頭外側,後咽頭,前気管部
もっとも重症なのは壊死性縦隔炎(
Infection 44: 77, 2016
;
Otolaryngol Head Neck Surg 155: 155, 2016
).
歯の衛生状態不良,抜歯,異物(例,爪楊枝,魚の骨)によって引き起こされる.
気道の注意深い観察を行う.1/3は気管内挿管が必要.
診断/病原体
診断
膿瘍を同定するためにMRIやCTを行う.発見されれば外科的ドレナージの適応.
FDG PET/CTで病巣を検出し感染範囲をより明確に見定めることができた:
Medicine 94: e21353, 2020
.
病原体
複数菌,感染巣となる隣接粘膜面の正常細菌叢
培養すると平均で5~6種の菌が検出され,10対1の比で嫌気性菌が好気性菌を上回る.
複数菌感染:
S. aureus
,特に小児
Streptococcus属
,特に
viridans streptococci
(
S. anginosis
グループを含む)
嫌気性菌(主要な病原体):
Peptostreptococcus
(現在は
Peptoniphilus
属),
Fusobacterium属
,
Prevotella属
,
Actinomyces属
その他の菌が検出されることは少ない:MRSA,
P. aeruginosa
を含む好気性グラム陰性桿菌.後者は高リスク群でみられる:違法薬物の使用,糖尿病,好中球減少,外傷後.
第一選択
経験的治療
緊急の外科的ドレナージを施行し,好気性および嫌気性培養を行う.経験的治療は
S. aureus
や
Pseudomonas aeruginosa
感染の可能性がある場合に対するものではない:標的治療を参照.
CTRX
2g静注24時間ごと+
MNZ
500mg静注8時間ごと
LVFX
750mg静注24時間ごと+
CLDM
600mg静注8時間ごと
ABPC/SBT
3g静注6時間ごと(注:耐性
E. coli
の検出率が増加している)
標的治療
培養陽性の場合や免疫不全患者,合併症リスクの高い患者では外科的ドレナージを行う
培養陽性または
S. aureus
リスクの高い場合:
VCM
15~20mg/kg静注8~12時間ごと(目標AUC
24
400~600
μ
g・h/mL達成が望ましいが[
AUC-用量設定の原理と計算
を参照],そうでなければトラフ値15~20
μ
g/mLをめざす)
を追加
培養陽性または
P. aeruginosa
リスクの高い場合:
PIPC/TAZ
初回4.5g静注,その4時間後から4.5g4時間以上かけて静注を開始,8時間ごとに繰り返す
CFPM
2g静注+
MNZ
500mg静注8時間ごと
第二選択
なし
抗微生物薬適正使用
感染巣のコントロール状況や患者の臨床反応に応じて2~3週治療する.
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2023/11/27