日本語版サンフォード感染症治療ガイド-アップデート版

歯原性(歯科)感染,ルートヴィヒアンギナ  (2021/10/5 更新)
根尖周囲膿瘍,下顎歯


臨床状況

  • 歯科関連感染症であり,半数は虫歯(窩洞),残り半数は歯周病(歯肉炎および歯根膜炎)から起こる.歯に由来するため,これらの感染症はまとめて歯原性感染とよばれる.
  • 歯根先端周囲の感染は拡大し,さまざまな感染性合併症を引き起こすことがある.
  • ルートヴィヒアンギナは,歯および/または歯周感染の合併症である:
  • 急速に進行する両側性の下顎下腔の感染であり,舌が後方へ押し上げられ首を絞められているような息苦しさを引き起こす.
  • 通常は下顎歯の虫歯のある成人に起こる.
  • 下顎骨骨折,舌小帯や舌へのピアス後に起こることがある.
  • 他の合併症:歯科原性副鼻腔炎,頸部壊死性筋膜炎,海綿静脈洞血栓症,脳膿瘍.
  • 水癌(Cancrum orisとしても知られている)は,栄養不良状態で重症壊死性歯肉炎の症状を呈する形態である.
  • ほとんどの感染は複数菌性だが,一般には偏性または通性嫌気性細菌が優性である.
  • ルートヴィヒアンギナ:外科的ドレナージと壊死組織の除去が重要!
  • 外科的ドレナージをしない場合,気道閉塞リスクが10倍上昇する.

病原体

  • 複数の病原菌:
  • 口腔内嫌気性菌:
  • 免疫不全患者ではS. aureus および好気性グラム陰性菌が懸念される.

第一選択

  • 重症感染の場合:
  • 気道確保
  • 免疫正常者:PCG 300万単位静注6時間ごと+MNZ 500mg静注6時間ごと.
  • グラム染色でクラスター状のグラム陽性球菌がみられた場合は,VCM15~20mg/kg静注8~12時間ごと(目標AUC24 400~600μg・h/mL達成が望ましいが[AUC-用量設定の原理と計算を参照],そうでなければトラフ値15~20μg/mLを目標とする)を追加
  • 免疫不全患者での経験的治療:VCM 1g静注12時間ごと+PIPC/TAZ 4.5g静注6時間ごと
  • CTスキャンあるいはMRIで膿瘍がみられた場合は外科的デブリドマンを行う

第二選択

  • それほど重症ではない感染:
  • AMPC/CVA 875/125mg経口1日2回または2000/125mg1日2回・12時間ごと
  • 免疫正常者または免疫不全患者の重症感染:
  • PIPC/TAZ 3.375g静注6時間ごと,または
  • MEPM 1g静注8時間ごと
  • ペニシリンアレルギーの場合:CLDM 600mg静注6~8時間ごと

コメント

  • 合併症:気道の閉塞,咽頭傍間隙を介した縦隔への伝播
  • 参考文献:
  • ルートヴィヒアンギナ
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2021/09/30