日本語版サンフォード感染症治療ガイド-アップデート版

淋疾,尿道炎,子宮頸管炎,直腸炎  (2022/2/1 更新)
淋菌性尿道炎,子宮頸管炎,直腸炎の治療


臨床状況

  • 高度耐性があることから,次の系統の抗菌薬は現在推奨されていない.
  • フルオロキノロンはN. gonorrhoeae感染の治療には推奨されていない.2020年のCDCの淋疾に関するガイドライン参照:MMWR 69: 1911, 2020
  • CTRX 500mg筋注††1回(または体重≧150kgなら1g筋注で治療)
  • C. trachomatis重複感染が除外できなければ,DOXY 100mg1日2回・7日で治療

(††:米国では処方される)

病原体/診断

病原体
診断
  • 核酸増幅検査(NAAT).FDAは,子宮頸管内,膣,男性尿道,男性/女性の尿の試料でのNAATを承認している.咽頭および直腸スワブでも有用である.

第一選択

  • N. gonorrhoeaeに対してCTRX 500mg筋注††1回(または体重≧150kgなら1g筋注で治療)
  • Chelamydiaに対してはDOXY 100mg1日2回・7日

(††:米国では処方される)

第二選択

  • 第二選択
  • AZM 1gはChlamydiaには有効だが,N. gonorrhoeaeにはAZM 2g経口を要する.しかし2g経口は消化管副作用,高価,急速な耐性発現の可能性のため,米国ではN. gonorrhoeae単剤治療としてはルーチンには推奨されない.
  • 他の1回投与セファロスポリン:CTRXに代えて,CZX 500mg筋注†,またはCTX 500mg筋注,または(Cefoxitin 2g筋注+プロベネシド 1g経口)を用いてもよい.
  • 経口セファロスポリンは現在推奨されていないが,CTRXが使えない状況では CFIX 800mg経口・1回を検討:約14日後にNAATによる治癒確認を行うこと
  • 他の選択肢(ただし,併発する口腔咽頭N. gonorrhoeae感染では治癒率が低い):
  • SPCM 2g筋注1回.耐性が急速に発現することがある.
  • CFIX 800mg経口・1回
  • 治療失敗の場合の選択肢:
  • CTRX 500mg筋注††1回+セックスパートナーの治療.治療1~2週間後NAAT検査により治癒を確認.
  • セファロスポリンへのアレルギー,または不耐の患者で用いられるサルベージ治療:
  • GM 240mg筋注(体重<45kgであれば5mg/kg)1回+AZM 2g経口1回,または
  • 結果:GM+AZMを投与した症例の微生物学的治癒率は100%,Gemifloxacin+AZMを投与した症例では98%.奏効がみられたのは咽頭N. gonorrhoeae感染の25例と直腸N. gonorrhoeae感染の6例など:Clin Infect Dis 59: 1083, 2014

(†:日本にない剤形, ††:米国では処方される)

抗微生物薬適正使用

  • 多くの細菌でルーチンのマクロライド使用に対する耐性が急速に発現しているため,CDCは現在,淋疾に対するルーチンでの2剤併用治療は推奨していない:MMWR 69: 1911, 2020

コメント

  • すべてのN. gonorrhoeae感染患者で梅毒およびHIVのスクリーニングを行うこと.
  • セックスパートナーはCFIX 800mg経口±DOXY 100mg1日2回・7日で治療できる(地域の法律上問題がなければ)
  • 再感染が多いことから,専門家は治療から3カ月後にC. trachomatisの再検査を勧めている.
  • 妊婦でChlamydia治療を行う場合には,DOXYに代えてAZM 1g経口を用いる
  • アメリカとヨーロッパどちらのガイドラインも2020年に大幅に改訂された.
  • ヨーロッパのガイドライン(Int J STD & AIDS 2020)では,CTRX 1g筋注††+AZM 2g,またはCTRX 1g筋注+治癒確認が推奨されている(米国のガイドラインでは,淋菌性咽頭炎を除き治癒確認は推奨されていない).

(††:米国では処方される)

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2022/01/27