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日本語版サンフォード感染症治療ガイド-アップデート版
梅毒-概説
(
2024/04/23 更新
)
概説
Treponema pallidum
はスピロヘータ科細菌であり,臨床検査室では培養できない.
4つの亜種があるが,血清学的にも(つまり血清学的に交差反応性),形態的にも区別できない.
Treponema pallidum pallidum
は梅毒の原因菌である.世界中でみられる性感染症であり,先天性感染もある:
Lancet 389: 1550, 2017
.
T. pallidum endemicum
は非性病性(ベジェル)梅毒(風土性梅毒)の原因となる(地中海沿岸およびアフリカ).
T. pallidum carateum
は熱帯白斑性皮膚病(ピンタ)の原因となる(中央アメリカおよび南米).
T. pallidum pertenue
はフランベジア(イチゴ腫)の原因となる(南アメリカ,アフリカ,アジア,オセアニアの湿潤熱帯地域).
総説:CDC性感染症ガイドライン(2021):
MMWR Recomm Rep 70(RR-4): 1, 2021
;
ヨーロッパ梅毒ガイドライン(2020)
;
N Engl J Med 382: 845, 2020
.
原発性梅毒は,病巣から採取した検体の暗視野顕微鏡により診断する.後期梅毒には,血清検査を用いる.下記診断の項参照.
ほとんどの臨床現場では,診断スクリーニングは,非トレポネーマとトレポネーマの2つの血清検査が中心となる.偽陽性と偽陰性を最小限に抑えるためには,両検査が必要となる.
男性同性愛者および/または高リスク性行動を行う個人に対しては,6~12カ月ごとにスクリーニングを行うことが推奨される(
JAMA 328: 1243, 2022
および論説
JAMA 328, 1209, 2022
).
曝露後予防:男性同性愛者を対象としたオープンラベルランダム化試験(
Lancet Infect Dis 18: 308, 2018
).
DOXY
200mg経口1回・曝露後72時間以内.梅毒発症を73%低下させた.
最新エビデンスとシステマティック・レビュー:男性同性愛者またはHIV陽性患者では,12カ月ごとよりも3カ月ごとのスクリーニングの方が梅毒検出率が高かった(
JAMA 315: 2321, 2016
).
ペニシリン脱感作については
βラクタムアレルギー
,
薬物脱感作-概説
,
ペニシリンの脱感作-経口
,
注射
を参照.
最近のデータでは,第3世代セファロスポリンであるCTRX(
Lancet Inf Dis 21: 1441, 2021
)やCFIX(
Clin Inf Dis 73: 907, 2021
)がCNSや初期梅毒に対する第二選択薬となる可能性が示されている.
梅毒の血清学的診断について新しい "reverse sequence" パラダイム:最初にVDRL(RPR)検査ではなくトレポネーマ抗体検査を行う:
Clin Infect Dis 58: 1116, 2014
.
【日本の情報】梅毒は第五類感染症(全数把握対象疾患)に定められており,診断した医師は7日以内に最寄りの保健所に届け出ることになっている.
診断
病変部の滲出液や組織から
T. pallidum
を検出する暗視野検査や分子検査(NAAT)は,早期梅毒や先天性梅毒の確定診断となるが,ほとんどの臨床現場では利用できない.
梅毒の推定診断には,検査室での2つの血清学的検査を用いる:非トレポネーマ検査(VDRL法またはRPR法),トレポネーマ検査.
トレポネーマ検査(TPPA法,各種EIAs,化学蛍光免疫測定法[CIA],イムノブロット法,または迅速トレポネーマ測定法)は,通常,生涯にわたって陽性である(ただし,15~20%は陰性になる).治療のフォローアップには使用できない.ときに偽陽性となることがある.
非トレポネーマ検査の抗体価は,通常,治療により低下し(少なくとも1/4に低下)さらに時間の経過とともに低下するが,他の条件では陽性となることがある(高齢,他の感染症,自己免疫疾患による偽陽性).
従来の方法:RPRまたはVDRLから開始し,陽性の場合は,トレプトネーマ試験で確認する.
逆順(reverse sequence):トレポネーマEIAから開始し,陽性であればRPRを行う(
N Engl J Med 382: 845, 2020
).
血清検査の結果が不一致の場合:特異的(確認用)トレポネーマ検査で検証する(最初の検査とは別の検査を用いる).TP-PA, MHA-TP(注:感度と特異度が低いため,FTA-ABSは推奨されない:
Clin Infect Dis 68: 913, 2019
).フローチャートを参照:
N Engl J Med 382: 845, 2020
.
臨床検査に関する総説:2024年米国CDCの梅毒臨床検査に関する推奨:
MMWR Recomm Rep 73: 1, 2024
.
CDCガイドラインのエビデンスについての総説:
Clin Infect Dis 74: S127, 2022
.
TMA(Transcription Mediated Amplification)法をルーチンの診断検査に追加することによって,梅毒症例の発見率が7%増加する:
Clin Infect Dis 77: 1717, 2023
.
関連項目
第1期梅毒
第2期梅毒
早期潜伏梅毒
(<1年)
晩期潜伏梅毒
(>1年)
先天梅毒
神経梅毒
眼の梅毒
(虹彩炎,ぶどう膜炎,網膜炎,視神経炎)
耳の梅毒
(聴力障害,耳鳴り)
HIV/AIDSでの梅毒
妊婦の梅毒
曝露後予防
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2024/04/22