日本語版サンフォード感染症治療ガイド-アップデート版

梅毒-先天性  (2024/04/23 更新)
先天梅毒の治療


臨床状況

  • 先天性梅毒および子宮内で梅毒に曝露した乳児
  • 効果的な予防と発見は,母親に対するルーチンの血清スクリーニングを行うか否かにかかっている
  • 2012年以降,米国での先天性梅毒の報告が劇的に増加した.2015~2019年,先天性梅毒の発生率が291.1%に増加し(12.4人→48.5人/100,000出生),その倍増率を反映してか,15~44歳女性の初発梅毒発生率および二次梅毒発生率が増加している(171.9%に増加:3.2人→8.7人/100,000女性).(MMWR Recomm Rep 70 (RR-4): 1, 2021
  • 先天性梅毒の診断は困難であり,診断は以下の事項に依存する
  • 母親での梅毒の診断
  • 血清学的反応の推移を含む,母親の治療歴に関する情報
  • 乳児の臨床的,臨床検査上,放射線画像上の所見に関する情報
  • 出生時における,母子のトレポネーマ検査力価(VDRLまたはRPR)の比較.同一の検査施設で行うことが望ましい
  • 臨床所見から,または母親の治療不十分(記録がない,出産以前の治療期間が4週間以下)の場合は,VDRLのための脳脊髄液検査,細胞数,蛋白,血小板を含む全血算を行い,また臨床的に適応があれば,長骨のX線検査,眼科検査,聴覚検査を行う.

病原体

  • T. pallidum

第一選択

  • 水性結晶PCG 10万~15万単位/kg/日投与:5万単位/kg/回静注12時間ごと・生後7日間,その後,8時間ごと・10日間投与.
  • プロカインPCG 5万単位/kg/回筋注1日1回・10日

第二選択

  • 脳脊髄液検査(蛋白正常,VDRL正常),長骨X線検査,および血算がすべて正常であれば,先天性梅毒の可能性ありとして,ベンザチンPCG 5万単位/kg筋注1回による治療が可能.しかし,なにかしらの疑いがあれば,念のため標準治療をすべきである.
  • DBECPCG 5万単位/kg体重/回筋注1階は,先天性梅毒の可能性が低い小児には適切なことがある:たとえば,検査・評価が正常で,出生>4週前の母親に対する治療が適切であり,RPRが母親の力価の4分の1以下.これに代えて,十分なフォローアップが可能な場合には,RPR陰性化まで綿密なフォローアップをしてもよい.
  • 小児の第二選択
  • 生後≦30日:CTRX 75mg/kg静注または筋注††24時間ごと・10~14日(黄疸のある乳児では注意して使用)
  • 生後>30日:CTRX 100mg/kg静注または筋注††24時間ごと・10~14日

(††:米国では処方される)

コメント

  • 重要な注意:1日以上治療が中断された場合,初めから全部の治療をやり直す.
  • 感染あるいは曝露を受けた乳児には,血清学的非トレポネーマ検査を無反応になるまで2~3カ月に1回行う.感染した乳児でも十分な治療が行われた場合,または感染していないが胎盤を通じて母胎の抗体を獲得したために最初の血清検査が陽性になった場合には,非トレポネーマ抗体力価は生後3カ月までに低下し,6カ月までには無反応となるはずである.
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2024/04/22