日本語版サンフォード感染症治療ガイド-アップデート版

梅毒-妊婦  (2023/08/29 更新)
妊婦の梅毒治療に関する特記事項


臨床状況

  • 妊娠中の梅毒は,高率な胎児感染および死産と関連する.
  • すべての妊娠女性は妊娠早期に梅毒のスクリーニングを受けるべきである(JAMA 320: 911, 2018).
  • 女性の感染リスクが高い(コメント参照),または感染者が多い地域の場合,スクリーニングは妊娠早期,28週,および出産時に行う.
  • 胎児への感染リスクがもっとも高くなるのは,梅毒の一次および二次感染期である.
  • ペニシリンアレルギーの皮内反応テストを行う.
  • ベンジルペニシリンベンザチン注射は有効性が報告されている唯一の治療法であるため,ペニシリンアレルギー患者では必要ならば脱感作を行う.

病原体/診断

病原体
  • T. pallidum
診断
  • 従来の梅毒スクリーニングアルゴリズムを用いた検査,あるいは逆順アルゴリズムを用いたトレポネーマ抗体検査により検査可能である.
  • 治療後に抗体価が低下したという記録がない限りは,血清検査が陽性であれば活動性感染とみなす.
  • 妊娠20週以降に胎児が死亡した女性は,梅毒の検査を行うこと.

第一選択

  • 妊婦の梅毒は,病期に応じて,妊娠していない患者と同じペニシリン処方で治療を行う.
  • 妊娠していない患者でDBECPCG 筋注†が用いられる状況では,特に妊娠第3期の妊婦あるいは第2期梅毒の場合は,初回投与の1週後にDBECPCG(240万単位)の2回目投与が推奨されることもある.
  • 関連項目および概説を参照.

(†:日本にない剤形)

第二選択

  • なし(コメント参照).
  • ペニシリンアレルギー歴のある妊婦では脱感作を行い,ペニシリンによる治療を行う.

コメント

  • 出産までに治療後RPR力価が1/2に下がらないことがある.RPR力価の低下率は梅毒の病期,妊娠の段階,患者の年齢により異なる.1/2低下しないことは必ずしも治療の無効を意味しない(Clin Infect Dis 60: 686, 2015Clin Infect Dis 60: 691, 2015).
  • DOXYおよびTCは妊婦には禁忌.
  • EMは胎児の治療失敗に結びつく危険が大きい.
  • 現在のCDCの推奨では,有病率の高い地域やリスクの高い地域では,スクリーニングは出産前の最初の診療で行い,全妊婦で2回(妊娠第3期および出生時)行うこととされている.
  • 390万人の女性を対象とした理論的コホートでは,妊娠第3期での梅毒の再スクリーニングは費用効果が高い.モデルでは,先天性梅毒が41例,早産が73例,乳児死亡が27例減少し,5200万ドルの経費節約となることが示された(Obstet Gynecol 132: 699, 2018).
  • 妊婦における梅毒の危険因子:複数のパートナーとの性交渉,薬物使用を伴う性交渉および金品受領による性交渉,出産前のケアが遅い(第2期以降)/ケアなし,覚醒剤/ヘロインの使用,女性またはそのパートナーの受刑,住居不定/ホームレス.
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2023/08/28